会社説明会やインターンシップに参加してくれる就活生に、投げかける質問が2つあります。1つは「採用担当者はどんな人を採用したがっていると思いますか?」というもの。するとたいがい、こんな答えが返ってきます。
「何か突出して能力が高い人」
「論理的思考能力が高い人」
「自分で考えて動ける人」
「自己主張できる人」
人柄や考え方が悪ければ、会社にとって害悪な存在になる
その次に「みなさんは、どんな人と一緒に働きたいですか?」という質問をすると、答えはこんな風に変化します。
「明るくて、一緒にいて楽しい人」
「頑張ってることを褒めてくれる人」
「失敗してもフォローしてくれる人」
「イケメン!(笑)」
学生らしく、非常に人間らしい素直な気持ちだと思います。彼らの意見には私も素直に共感できます。まさに、このような方々と一緒に働きたいものです(イケメンは別ですが…)。
それでは実際に採用担当者が重視するのは、どちらの視点でしょうか? 当然ながらどちらも大事で、「何か突出して能力が高い人」がいれば、それに越したことはありません。しかし社会人経験のない新卒者に、最初からそれを求めるのも酷な話でしょう。
また、いくら能力が高くても、会社という組織で仕事をする以上、人柄のよさや考え方の確かさがなければ、会社にとって害悪な存在になるおそれもあります。つまり採用は、後者の「一緒に働きたい人」というのが必要条件になってくるのです。
それなのに採用担当者は、毎年多くの就活生が「自分はスゴイんだ!」と必死になってするアピールにさらされて、ほとほと疲れています。笑顔で接してはいるのですが、内心は「そんなに無理しなくていいのになぁ」と思っているのです。
「自分を大きく見せようとする手法」は反発心を引き起こす
この原因は、従来の就活指導の誤りにあります。学校が行う指導や就活ノウハウ本には「いかに会社に、自分がスゴイ人間かと理解(錯覚?)させるか」というテクニックであふれています。就活生が勘違いするのも無理はありません。
このような無理なアピールをする学生を、直ちに落とすことはしません。ただし、何のプラスの評価にもつながらないばかりか、相手を疲れさせたり、呆れさせたりすることにしかならないことに注意してください。
採用すると、その人と長期に渡って、机を並べることになるかもしれません。一つの仕事を成し遂げるために、協力しながら取り組むこともあるでしょう。
その時、一緒にやっていけるかどうかを大きく左右するのは、その仕事に必要かどうかも確実でない「スゴイ人かどうか」ではなく、相手を思いやれるかとか、自分のことしか考えない人ではないかとか、もっと感情的な面が大きいものです。これこそが、面接で確認しようとすることなのです。
「自分を大きく見せようとする手法」は相手に警戒感を与え、「そんなに威張ることなの?」という反発心を引き起こすこともあります。同じエピソードを話すときでも「スゴイ人アピール」をせず、淡々と「どう考えて、どう動いたのか」という事実を素直に言葉にする方がより伝わってくるものですよ。(文:河合浩司)
あわせてよみたい:面接は「売り込み」の場ではない