2016年4月1日、全国で入社式が行われ、約72万人の新社会人が誕生した。4月5日放送の「クローズアップ現代」(NHK総合)では、全国各地の入社式に密着していた。
大手飲料メーカーのサッポログループでは、新入社員の後方席に父母たちがずらっと並ぶ。親の同伴には抵抗がない様子で、男性新入社員のひとりは「あなたの幸せは何ですか?」という質問にこう答えた。
「ちゃんとした会社に就職決まったよ、と親に言えて、親が『よかったね』と言ってくれるような日常が今は幸せですね」
マクドナルドの新人「報道は関係ない」
その表情からは、安定した大手企業に就職したという安堵を感じる。先行き不透明な時代に、終身雇用を望む新入社員の数は年々増加。仕事だけでなくプライベートや家族を重視する価値観の広がりもあり、大手人気は根強い。
昨年は大逆風にさらされた日本マクドナルドの入社式には、28人が姿を見せた。女性新入社員は「この会社に対して『いいな』と思ったところが報道で消えるわけではないので、関係ないかな」と前向き。アルバイトから入社した男性社員は「みんな高いモチベーションでやっていたので大丈夫」と入社を決めた。幸せとは、の質問にこう答える。
「まず自分が笑顔でいられること。自分が笑顔でいられることによって、周りのみんなを勇気づけられる」
もちろんマクドナルドも大手企業で、業績が復活すれば人気企業に復活するに違いない。しかし男性の溌剌とした言葉からは、接客サービスが心から好きな様子が伝わってくる。今年入社の彼らは、やりがい重視の人たちなのだろう。
2年前から20年ぶりに新人採用を再開した市も
安定イメージのある公務員だが、早々に重大な役目を担う人もいる。かつて炭鉱で栄えた“日本一小さな市”北海道の歌志内市役所の産業課に配属され、地域振興を担当することになったKさんは「小さい夢」を語る。
「小さい市をもっとより良く、もっと色んな人に知ってもらって、一歩ずつ大きくなっていこう。まずそこからやっていこうかなと思っています」
求められているのは企業誘致や観光の振興だが、道のりは険しい。かつてのメインストリートを視察すると、空いている店は数えるほどだ。
高齢化のなかで客のニーズがつかめず、「若い人の考えが絶対必要」と2年前から20年ぶりに新人採用を再開した。小さい市だけに自分の意見がダイレクトに反映されるのがやりがいだと先輩は語るが、市の未来がKさんたちに重くのしかかっている。
「ひとりじゃない、誰かに見られていること」が幸せ
先月高校を卒業したばかりで18歳のYさんは、社員60人の建設会社に入社した。両親の離婚をきっかけに荒れた学校生活を送っていたが、母親がくも膜下出血で倒れてからは、働いて安心させようと決めた。
社長自身も非行歴があったという同社は、前科や非行歴のある人も積極的に採用する方針だ。Yさんからは働く意志が強く感じられたため、正社員として採用。本人は「そこまで信用されているのか」と喜んだ。
入社式はなく初日から現場で働き出したが、仕事終わりには歓迎会が開かれた。彼の幸せは、今の職場にいられること、誰かに見られていることだと言い、しみじみとこう続けた。
「自分ひとりじゃないっていうことが、やっぱり幸せなんじゃないですかね」
このほか、外国人やロボットのペッパーくんが同期という会社も登場。逆風と思われる環境への挑戦者や、働く場があることを感謝する青年もいて、新しい時代を生きる若者たちのひたむきさを感じた。(ライター:okei)
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