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三戸なつめが明かす、デビュー後の葛藤と挑戦「純粋な気持ち、原点に戻ることができた」

2016年04月11日 16:01  リアルサウンド

リアルサウンド

三戸なつめ

 三戸なつめが4月6日にニュー・シングル『I'll do my best』をリリースする。中田ヤスタカ(CAPSULE)プロデュースによる、新境地を感じさせる“セツナカワイイ”表現がグッとくる耳に残るポップ・チューンだ。デビューシングル『前髪を切りすぎた』でのコミカルな世界観とは打って変わり、エレクトロ・ポップなサウンドに乗せて、スパイスとしてちりばめられた洋楽テイストを感じさせる、決め所いっぱいのドラマティックなサウンドワークが中毒性高い。春に新生活を迎える全ての人に贈る“旅立ちの歌”をテーマに、期待と不安で胸がいっぱいの僕らの背中を押してくれるナンバーだ。挑戦といえる新たな音楽表現について、じっくりと語ってもらった。(ふくりゅう:音楽コンシェルジュ)


・「ちゃんと自分の足で立っていかないと」


ーー新曲「I'll do my best」での、ドラマティックにせつないポップ感にやられました。


三戸なつめ(以下、三戸):ありがとうございます。嬉しいです。


ーー三戸なつめといえば、デビュー曲「前髪を切りすぎた」のインパクトがすごかったですよね。確実に、知名度を獲得して爪痕を残したというか。そんななか「I'll do my best」では、誤解を恐れずたとえるならコールドプレイばりのセツナサと爽快さを感じられるサウンドへ踏み込んできましたね。歌われてみていかがでしたか?


三戸:今まで出してきた、あ、出してきたってまだCDは2枚なんですけど(笑)。でも「前髪を切りすぎた」と「8ビットボーイ」という曲は「みんなにコミカルに楽しんでもらおう!」って思いが一番にあったんですね。でも、(中田)ヤスタカさんに「I'll do my best」の曲をもらった時に、うちも「こう来たか!」とおどろきました。楽しむだけではなく、お客さんの人生の物語のなかに入っていくような曲だと思ったんです。


ーーそれ、すごいよくわかります。ちょっと俯瞰した視点を持っている魔法めいた楽曲ですよね。


三戸:何かこうジュワーみたいな、染み渡っていく感じ? 歌には言葉にできないような表現が必要なんだなと思いました。あと、うちは奈良出身で上京してきた経験があったので、歌詞を読んだときにけっこう自分とあてハマることが多かったんです。ヤスタカさんに話したことなかった自分の気持ちが歌詞になっていたんですよ。最初、目を通したときにビックリしましたね。


ーー実体験をヤスタカさんに話して、歌詞にしてもらったんじゃないんですね。普段話してた会話や、印象から書かれているんでしょうね。


三戸:ああ、そうなのかな。そうかもしれない。


ーー歌詞のどの辺に一番グッときました?


三戸:〈楽しい思い出に 頼らなくてもいい日は 来ると信じてる〉っていうフレーズは、まさに思っていたことなんです。地元の奈良は友達がいっぱいいたし、安心できる場所だったんです。でも、1人で上京してきたんで寂しいこともあって。でも「楽しかった過去にすがりつかずに、ちゃんと自分の足で立っていかないとな」って思っていました。もともと、2010年からモデル活動を関西からはじめてたんです。でも、東京で仕事の幅を拡げたいって思いが強かったんです。なので夢を持って「なんかやってやんぜ!」みたいな強気な感じでしたね。そして、2013年に上京しました。


ーー三戸さんのなかで、音楽活動というのはどんな存在だったんですか?


三戸:やってみたいなってずっと思ってました。でも、まさか中田ヤスタカさんにプロデュースしてもらうことになるなんて驚きましたね。もともと、目標も決めていたんですよ。えっと、5年後は紅白歌合戦に出て、10年後は女優になって、20年後は文房具屋をやるっていう。


ーーそれ、三戸さんっぽくていいですね。


三戸:ははは(笑)。いまも変わらず思ってますよ。文房具屋ってのは、アートディレクターの方と御飯を食べたときに「なんか最終的に文房具屋さんやりたいんですよね」って話したことがあって。それが、後にポスターでデザインされてあがってきたんですよ。


ーー自分が持っている世界観が、様々なクリエイターとコラボレーションすることによって具現化されていくという、面白い経験をされているのですね。


三戸:そうなんです。しかもまわりのクリエイターがすごい方ばかりで。なんだろう、夢を叶えてくれているというか。形にしてくれるスピードが早くって。やっぱりなんか、うん。もっと自分を強く持っていないといけないなって日々思っています。


・「みんな音楽が大好きなんだって空気が伝わってくる」


ーー三戸さんってもともとはどんな夢を持っていたんですか?


三戸:子供の頃は、SPEEDやモーニング娘。に憧れていて、なりたいってずっと思ってました。


ーーへぇ~、アイドル・グループだ。


三戸:アイドルはずっと好きなんです。でも、最近は阿部真央ちゃんが好きで。なんかこう、日本語をはっきり歌うシンガーが好きなんです。


ーーあ、でも三戸さんの歌唱方法もそうですよね。


三戸:そうかもしれません。ちゃんと聞き取れるっていうか。歌が上手い下手とかじゃなくて魂で歌っている感じというか。あ、THE BLUE HEARTSとか、銀杏BOYZが好きなんですよ。


ーーロックもお好きなんですね。


三戸:影響を受けまくっています。


ーー楽曲だったらどんな曲がお好きなんですか?


三戸:えっと、銀杏BOYZは「BABY BABY」が好きで、よく高校の帰り道にみんなで合唱しながら帰ってました(苦笑)。青春でしたね。あと、THE BLUE HEARTSの「夕暮れ」という曲が大好きで。ライブでカバーして歌ったこともあるんですよ。その時にちょうど上の階でザ・クロマニヨンズがライブされていて驚きました。


ーーすごい。


三戸:やばい、どうしようみたいな(笑)。もちろん、挨拶なんてできなかったんですけどね。ほんと大好きです。


ーー見かけによらずロック好きなんですね。


三戸:そうですね。今よく聴いているのはキュウソネコカミです。あと爆弾ジョニーやフラカンとか。インドアなんで、ライブハウスにはあまり行かないんですけどね。


ーーへぇ~、インドアなんですね。


三戸:はい。オフの日はあんまり外に出ないんですよ。漫画を読んでます。最近は『恋は雨上がりのように』が好きです。あと『アイアムヒーロー』も単行本を買ってますね。


ーーじゃあ、フェスに出たり、ライブの空間っていうのは非日常な、新鮮な世界なんですね。


三戸:楽しいです。みんな音楽が大好きなんだって空気がめっちゃ伝わってくるんですよ。そのぶん、ちょっとプレッシャーも感じるんですけどね。でも、昨年のフェス出演の経験で、自分が頑張ったぶんというか楽しんだぶん、お客さんも楽しんでくれるんだってことがよくわかりました。


ーーそういえば、三戸さんは音楽以前もモデルとして、大きな舞台を経験されてきたわけですもんね。


三戸:そうですね。ライブでの緊張は、歌い始めたら大丈夫なんですよ。でも、出る前とか、MCするときは緊張しますね。


・「今年は結果を出したい」


ーー新境地な新曲「I'll do my best」に関して、中田さんとはどんなお話をされましたか?


三戸:こういう感じで歌ってくださいとか、そういうのは全くないんですよ。もう自分の感じたままに歌おうみたいな。


ーーアーティストとしての見せ方というか、三戸さんらしさって掴めてきましたか?


三戸:もうすぐデビューして1年になるんですね。最初はただただ楽しい!みたいな気持ちでやってました。でも、だんだん自分のアーティストとしての見せ方だったり、ライブの在り方を考えるようになってきました。ちょっとこう、迷い期じゃないですけど「どうすればもっとファンの人が増えて、いっぱい曲を聴いてくれるんやろう?」とか、けっこうリアルに考えるようになったときにこの曲ができたので。自分も原点に戻れたというか。純粋な気持ちに帰れたなって思っています。


ーー「I'll do my best」という、ご自身も入り込める曲と、ジャストなタイミングで出会えたのですね。まるで、中田ヤスタカさんからのプレゼントみたいですね。


三戸:ありがたいですね。


ーー「I'll do my best」は、ASOBISYSTEM(※所属事務所)の、クラブカルチャーなテイストとは別な方向性を感じました。


三戸:そうですね。ASOBISYSTEMの深夜のクラブイベントには実は行ったことないんです(苦笑)。


ーーそうなんだ。ああ、でも見かけたことないかも(笑)。


三戸:インドアなんで(笑)。


ーー「I'll do my best」の曲のアレンジを聴いてると、やっぱり中田さんも全部わかったうえで三戸さんのサウンドを作っているんだなと感じましたね。


三戸:きゃりー(ぱみゅぱみゅ)ちゃんや、Perfumeさんとはまた違う音楽の作り方ですよね。悩ませているんだろうなと思いながら(苦笑)。


ーーそういえば、中田さんってCAPSULEが小文字のcapsuleだった初期のころ、音楽は雑貨とか、音楽は家具とか、そんなコンセプトを打ち出していて面白かったんですよ。『S.F. sound furniture』というタイトルのアルバムもありましたね。で、なんとなく三戸さんは文具を打ち出しているという。


三戸:あ、意外なところでつながった(笑)。


ーー今の時代って、日常をいかに楽しむかが一番のエンターテイメントだったりするじゃないですか? エンタテインメントが非日常では無い感じというか。日常をどう楽しむかっていうセンスを三戸なつめさんからは感じるんですよね。「I'll do my best」からも、なんとなくそんなメッセージ性を受け取りました。


三戸:それは嬉しいですね。ありがとうございます!


ーー2曲目は「もしもクッキング」ということで。こちらもまた、ポップかつ洒落たサウンドで、三戸さんらしいなと。タイアップ・ソングだったんですよね?


三戸:そうです、マルコメ“MISO KAWAII”です。サビはポップで明るい感じなんですけど、AメロとBメロは割と懐かしいような感じがしたんですね。なんていうか、お味噌汁ってすごい実家のイメージがあったんですよ。なので、そことイメージが重ねあって。でも、サビでは盛りあがるイメージで歌いました。ちっちゃい子が、この曲を聞きながら、お母さんの料理のお手伝いをしてくれたら嬉しいですね。


ーーそして、3曲目は「8ビットボーイ Extended-Mix」が収録されるという。タイトル通り冒険ゲームチックな勢いですよね。


三戸:もともとは、映画『ピクセル』の日本語吹き替え版主題歌ですね。80年代のゲームがテーマな楽曲のExtended-Mixです。なので、全体的になんか懐かしい雰囲気を醸し出しているなぁと。パックマンやインベーダーは、古いのが近所のゲームセンターにあったんですよ。でも、ゲームがっつりな世代ではないんです。ジャストなのは、ゲームボーイでポケモンですね。それこそ、中田さんはめっちゃゲーム好きですよね。スタジオにゲームが置いてあるので、レコーディングの待ち時間に勝手に中田さんのゲームで遊んでました(苦笑)。


ーーあらためて、プロデューサー中田ヤスタカさんはどんな方ですか?


三戸:仕事にめちゃめちゃストイックですね。レコーディング中や曲を作ったり編集されているときはすごく集中されていて。終わったらみんなでご飯食べに行くんですけど、そのときはなんか人が変わって近所の兄ちゃんみたいな感じになります。


ーーははは(笑)。


三戸:オンオフをしっかり分けている方ですよね。口数は少ないですけど、全部音楽で伝えようとしてくれている感じがあるんですよ。


ーーちなみに、歌詞を自分で書いてみたいなどの希望はあるんですか?


三戸:はい、実はあるんですけど……、まだ、1度もヤスタカさんには見せてはないです。


ーーときが来たらそれは?


三戸:出せたらいいなと思います。……そうですね、今年は結果を出したいなと思っています。それに、5月に大阪、名古屋、東京で初めてのワンマンライブ『三戸なつめはオメデタイ』をやるので、是非みなさん来てほしいです。


ーー初ワンマンなんですね。


三戸:きちんとツアーとしてやるのは初めてですね。自分の強みだとと思ってるんですけど、なんだかすごく「おめでたいね!」って言われることが多くて。「おめでたい顔してるね!」とか「お正月っぽいね!」とか「ハッピー感あるね!」って(笑)。自分では意識してなかったんですけど、でもすごい良い褒め言葉だなと受け止めていて。ライブが終わったときに、「あ~楽しかった!」みたいなホッとした感じとか、めでたい気分を感じてもらえたら嬉しいですね。(取材・文=ふくりゅう:音楽コンシェルジュ)