今年2月にスーパーGTの引退を発表した脇阪寿一の引退セレモニーが開幕戦岡山のレース前に行われ、寿一のキャラクターを象徴するように、多くの関係者、ドライバー、観客がセレモニーを見守り、岡山サーキットは感動の渦に包まれた。
セレモニーで寿一は、2002年に初めてGTでタイトルを獲得したエッソウルトラフロースープラのステアリングを握りデモラン。当時のレーシングスーツを着込んだ寿一がコクピットに収まると、寿一の目頭は熱くなった。
「やばかった。とにかくやばかった」。
寿一はひさしぶりのスープラのエンジン音を耳に刻みつつ、コースを一周。このセレモニーのためにTRDが事前に整備していたエッソスープラは、3S-GTEターボの野太いサウンドを岡山サーキットに響き渡らせた。
エッソスープラがホームストレートに戻ってくると、現役ドライバーたちが一列に並んで寿一を待ち構え、寿一はスープラのウインドウから手を出してハイタッチ&握手。スープラを降りてホームストレート場に用意された会場で登壇し、ふたりの息子から花束を受け取ると、涙が込み上げた。
「2016年のシーズンが始まるという、このようなタイミングで、こんなに素晴らしいセレモニーを用意してくれて、本当にありがとうございました。これまで一緒に戦ったドライバーたち、関係者、仲間たち、そして今回の機会を作ってくれたトヨタ自動車と、そしてGTAの坂東正明代表に心からお礼を伝えたいと思います」
「僕はスーパーGTが大好きです。スーパーGTがこれからのモータースポーツとクルマ社会を変えられると思っています。これからは鈴鹿1000kmで第3ドライバーとしての登録があることを信じて……ちょっと乗ろうかなと(笑)。これからもモータースポーツの発展に貢献していきたいですし、監督、脇阪寿一としては大嶋和也、アンドレア・カルダレッリという若い才能あるドライバーがいますので、彼らの才能を引き出せるように、精一杯頑張りたいと思います」
セレモニーではサプライズで現役ドライバーたちによる胴上げも行われ、寿一にちなんで11回、宙を舞った。最後は大相撲の力士のパレード用にTRDが開発したクラウンのオープンカーに乗って、ふたりの息子と岡山サーキットを1周した寿一。オープンカーを降りた後も、グランドスタンドに乱入するなど、最後までファンの歓声と声援に応えていた。