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『フラーハウス』キャスト陣が明かす、ファミリー復活の背景 D.J「番組は世界中で愛されていた」

2016年04月10日 17:01  リアルサウンド

リアルサウンド

(C) Netflix. All Rights Reserved.

 『フルハウス』放送開始から約30年の時を経て、遂にNetflixにて配信が開始された『フラーハウス』。子役から見事に大人の女優に成長して帰ってきた、メイン・キャストの三人であるキャンディス・キャメロン・ブレ、ジョディ・スウィーティン、アンドレア・バーバーと、シリーズの生みの親である製作総指揮のロバート・L・ボエット、そして製作総指揮および脚本を手がけたジェフ・フランクリンは、どのような心境で最新作『フラーハウス』の製作に挑んだのであろうか。


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 放送終了後から、長い年月を経て続編の製作が決定し、オリジナルキャストが再結集した事に全世界の『フルハウス』ファンは狂喜した。主人公のD.Jというキャラクターを、再び演じるキャンディス・キャメロン・ブレも、再結集の喜びはファンと同じだ。


「新しい番組が始まることが現実だとわかった時、とても興奮したわ。あの番組は私たちが子供の頃から一緒に成長してきた番組で、世界中のみんなに愛されていたから。純粋にワクワク、楽しんでいたの。あのキャラクターをまさに生きていたし、愛していた。だから大人になってカムバックして、またあのキャラクターを生きることが出来るということは、私たちみんなにとっての贈り物のような感じがする。たくさんのファンの人たちがいなければ実現出来なかったこと。長い間、世界中で愛されてきたからこそ出来たことだわ」


 次女のステファニーを演じたジョディ・スウィーティンは、『フルハウス』の撮影に5歳で参加し、13歳で最終回を迎えた。そんな彼女は「大人になってからは自分自身が人生経験を積んでいるからそれをキャラクターに生かすことが出来る」と語る。子供のころと変わらない愉快なキャラクターのまま大人になったステファニーに、今回の『フラーハウス』では、ある試練を与える。クラブのDJとして大活躍し、世界中を旅しているステファニーだが、実は重大な秘密を抱えていた……その事実を打ち明けられた姉のD.Jと、ステファニーとの対話は、今回の見どころの一つだ。スウィーティンの波乱万丈と言える人生経験が、役柄にさらに深みを与えたのだ。


 実生活では二児の母親になったスウィーティンは「ずっと近くにはいたけれども、長い間留守にしていた家に帰ったような感じとでもいいましょうか。またみんなで仕事ができることになって、戸惑うこともなく、みんなで昔と同じ冗談を言ったり、同じようなことをしたりしました。長いこと会っていなかった友人やごくたまにしか会っていない友人同士が久しぶりに集まって、旧交を温めあったような感じです。“ああ、この感じだわ。これが私の居場所だわ。”って感じかしら。本当に素敵な感覚でした。撮影第1週は子供も連れて行ったんですが、娘2人とセットのソファに座って記念写真を撮りました。まさかいつか実現できる日がくるなんて思ってもみなかった瞬間でした。写真を撮ったら涙がこぼれてきました。“ここを離れた時は13才だったな。あの時は「ああ終わったんだ。さよなら」と思ったなあ”と思いました。そして今、また始まったんです。何てすばらしいことでしょう」と撮影初日の事を感慨深くふり返る。あえて詳細は書かないが、ネット上で『フルハウス』終了後の彼女の私生活はファンの間でも話題になっていた。それだけに『フラーハウス』の収録で、子供の頃を過ごしたセットに戻ってこられたことに対して、格別な思いが込みあげてきたのだろう。


 『フルハウス』終了後、ネット上では幾度となく続編の製作に関する話題が上がってきた。今回キミー役で再登場するアンドレア・バーバーは、その間の出演者たちとの関係について「番組が終了してから20年経ってこうしてここにいることで、やっぱり稀なことだったのだと感じているの。オリジナルのキャストが同じケミストリーを持っているというだけでなく、みんなが29年間ずっと連絡を取り合っていたのだから。他の人たちは再集結のエピソードを作る案を出していたけれど、私たちはこの間の人生でもずっと会っていたから、私たちにとっては、今回の新作はファンの人たちのためにキャラクターにまた命を吹き込むことなの。それが出来ることをとても感謝しているわ」と明かしている。


 今回の『フラーハウス』で、ファンが一番驚かされたのは、D.Jの親友で、タナー家の皆にとっては、お邪魔虫的な存在だったキミーが、結婚して一児の母になっていた事だろう。大人になってもやはり一般常識に欠けるキミー(そこが彼女の魅力だが)というキャラクターについて、「番組を通して他の人の子育ての方法を知ることができるのよ。キミーは娘に愛されたいし、娘には幸せでいてほしいから、彼女は親として少し甘いの。だから彼女はD.Jから躾の仕方や規則や限度を教育するための方法を学ぶことが出来るの」と語るアンドレア・バーバーの言葉は、『フラーハウス』が単にお子様向けのシットコムではなく、これから子育てを始める大人たちにも充分楽しめる作品になったことを示している。


 タナー家の長女D.Jとして、『フルハウス』から番組を先導してきたキャメロン・ブレは当時を振り返り「子供の時は楽しみでやっていたし、もし止めたいと思ったらそれもできた。それが大人になるとただの仕事ではなく職業になる。情熱も持っているし大好きなんだけれど、自分にプレッシャーもかけるし、番組が面白くなるための責任も負っているし、もっと上手くなるように勉強もしている。だから私としては子役の時とは全く違う経験を積んでいるわ」と、単なる子役から、番組の存続に対する責任感を背負った、一人の女優としての心構えを明確に捉えている。


 『フラーハウス』がネットワークによる放送ではなく、Netflixによるネット配信になった経緯について「これまで、いくつかの局に持ち込んでみた、大抵興味を持ってくれたんだけれど、なんらかの理由で契約には至らなかった。企画案を売り始めてから実際にネットフリックスと契約に至るまでは1年半ほどかかったよ。でも、最終的にはそれが素晴らしい結果に繋がった。新しい番組を送り出すということだけでなく、『フルハウス』とは少し違うものを作ることが出来たし、もし普通のTV局で従来通り毎週放送していたら、もう少しオリジナルに近いものになっていただろうね」と語るように、製作総指揮及び脚本も担当している『フルハウス』シリーズの生みの親であるジェフ・フランクリンは、続編の製作に関して、CMやその他の束縛に捕らわれないネット配信での新作公開を歓迎している。


 また、ロバート・L・ボエットは「局がこの番組を買わなかった理由として、シチュエーション・コメディがあまり制作されなくなった、ということがある」と、意外な理由を明かした。毎年数多くのシットコムのパイロット版が製作されるが、その中でも無事に放送されるのはほんの一握りの作品だけ。しかも視聴率が下がれば、放送の途中でも平気で打ち切られてしまうのが、近年のアメリカのテレビ事情だ。確かに日本の地上波でも、シチュエーション・コメディが放送される機会は、昔に比べれば減ってきているように感じられる。


 本国だけでなく日本やその他の国での『フルハウス』の人気について、ボエットはこう分析している。


「文化の垣根を越えたんだと思う。登場人物の人間関係は他の国の人々にも共感できるものだったのだろう。それに、視聴者は登場人物のことを好きだった。登場人物も彼らの関係も好きだった。それが多くの言語できちんと伝わったんじゃないかな」


 不器用な男たちによる子育て奮闘記から生まれる“血の繋がりを超えた家族の絆”は世界中の文化の垣根も超えたのだ。


 『フルハウス』ファンが気がかりなのは、今回オリジナルキャストの中で、唯一再結集の輪に加わらなかった、ミシェル役のオルセン姉妹の事だろう。『フラーハウス』の中でも、ミシェルはファッション業界で忙しいという理由でサンフランシスコのあの家に里帰りしなかった。


 ジェフ・フランクリンは「出演交渉はしました。みんなで出演してくれと説得しましたよ。ただ、2人は今回は出ないと決めたんです。でも私たちはいつの日か2人の気持ちが変わってまたミシェルの役をやってくれるんじゃないかという希望的観測はもっています。どちらか1人いればいいわけですから。でもこの姉妹以外の出演者は全員帰ってきました。家族で集まろうとした時に、一家全員が揃わなかった経験は誰にでもあると思います。それでも私たちはあの姉妹のことが大好きですし、扉を閉ざすつもりもありません。出演してくれたら、それに越したことはありませんね」と、今後もミシェルというキャラクターが登場する可能性を示唆する。


 シーズン1の全13話を配信し終えた『フラーハウス』だが、このたび無事にシーズン2の製作も決定した。子育てに翻弄されながらも、自らの恋愛事情も貫き通そうとする3人が繰り広げるドタバタコメディに、さらなる拍車がかかることを期待したい。(鶴巻忠弘)