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シャーロット・ケイト・フォックス、ドラマで引っ張りだこの理由は“大和撫子”感にあり?

2016年04月10日 11:01  リアルサウンド

リアルサウンド

リアルサウンド映画部

 今から約一年半前、透きとおるような白い肌とブロンドの髪をもつ一人の女性が朝のテレビ画面に現れて視聴者たちを魅了した。NHK連続テレビ小説『マッサン』のヒロイン・エリーを演じたシャーロット・ケイト・フォックスである。朝ドラ史上初の外国人ヒロインに抜擢された彼女は、見事に役を演じて人気者となり、現在も活躍中だ。外国人でありながら、日本で非常に愛されているシャーロット。それは、彼女の姿に日本の古来よりの魅力的な女性像、大和撫子(やまとなでしこ)らしさがあるからではないだろうか。


参考:高畑充希、待望の初主演『とと姉ちゃん』で実力発揮なるか? “変幻自在の演技”への期待


 『マッサン』でシャーロット・ケイト・フォックスが演じたのは、大正時代、ウイスキー製造を夢見た“マッサン”こと亀山政春(玉山鉄二)の妻でスコットランド人の女性・エリー。まだ、外国人が物珍しかった時代の日本でマッサンの母親(泉ピン子)から結婚を反対されるのに始まり、ごはんがうまく炊けなかったり、日本のしきたりを知らなかったりと生活は困難の連続。ときには偏見の目で見られ、戦争時にはスパイ容疑をかけられてしまう。しかし、幾多の苦難にもめげずに愛する夫とともに、日本人として生き抜こうとしたエリーは、非常にけなげなキャラクターとして見る者の心をつかんだ。


 日本人になると決心して、自身のお国柄は奥にしまいこみ、懸命に日本語や日本料理を覚え、でしゃばらずに夫のマッサンを立てつつ支え続けたエリー。彼女はある意味、日本人よりも日本人らしい奥ゆかしさがあるといってよかった。そして、このエリーという役柄は、異国の地でドラマの主役という大任を果たそうと頑張るシャーロット・ケイト・フォックス自身とリンクしていた。当初、日本語がしゃべれなかったエリー=シャーロットが、どんどん言葉が上達していく姿からは、まさに日本に懸命になじもうとしているエリー、そして、シャーロット自身のひたむきさがよく伝わってきて、海の向こうからやってきた女性がこんなに日本にとけこもうとしてくれているのだ…と、多くの人に感動を与えたように思う。


 大和撫子(やまとなでしこ)とは、美しく奥ゆかしい日本人女性を表す言葉、そして、撫子(カワラナデシコ)は、白や淡いピンクの清楚な花を咲かせる。外国人の女優というと、たとえば、ハリウッド女優の多くは華やかできらびやかなイメージがあり、日本で活躍する外国人及びハーフのタレントも、語学力、美貌、スタイルなど、“日本人離れ”した魅力で注目を集めるケースが多いが、シャーロット・ケイト・フォックスは、清楚で奥ゆかしい、むしろ、日本女性たちがもつ昔ながらの撫子の淡い花のような清楚な美しさがあり、加えて自身が日本人に寄りそっていく努力をした結果として、日本人から愛されるようになったといえるだろう。


 そして、奥ゆかしさとともに忘れてはならない、シャーロット・ケイト・フォックスのもう一つの魅力が、ときおり見せる茶目っ気である。もともと、『マッサン』に起用された理由として、プロデューサーが「ズバ抜けた演技力とコメディーセンスを発揮した」(引用:連続テレビ小説「マッサン」マッサン&エリー主役夫婦発表します!)と語っていたが、『マッサン』でも、“鴨居の大将”こと鴨居欣次郎(堤真一)を真似て腕を組んでみせる場面など、エリーのコミカルなしぐさにくすっとさせられる場面があった。


 また、2015年秋、2016年春と放映された主演のスペシャルドラマ『名探偵キャサリン』(テレビ朝日系)では、アメリカ副大統領の娘であり、美しく頭脳明晰なキャサリン・ターナーという役どころだったが、おかしな日本語を連発する、屋台ではしゃぐ、パートナーの一郎(谷原章介)と他の女性の姿に焼きもちを焼く、といったコメディエンヌぶりを発揮。いわゆる外国人のセレブリティであり、一歩間違えれば、優秀さ、華麗さが鼻につきかねない役どころを、親しみあるキャラクターへと仕上げてみせた。清楚な女性というのは、ときとして「いい子ぶっている」「男ウケを狙っている」など、同性から反感をもたれることもあるが、「おかしさ」「滑稽さ」を演じることをきちんと理解しているクレバーさもあるシャーロット・ケイト・フォックス。彼女は清楚でありつつも、いわゆる“ぶりっ子”にならず、だからこそ、幅広いファン層を獲得できているのだろう。


 4月17日からスタートするドラマ『OUR HOUSE』で、芦田愛菜とともに民放の連続ドラマ初主演をつとめるシャーロット・ケイト・フォックス。ここで、彼女は再び日本人男性・奏太(山本耕史)の妻となって来日する女性・アリスを演じる。『マッサン』と異なるのは、相手の男性に死んだ前妻との間にできた子どもたちがいること。新しい母親を認めたくない長女・桜子(芦田愛菜)とのバトルを繰り広げる役どころで、今まで以上にコメディエンヌぶりを発揮してしてくれることを期待したい。(田下愛(たおり あい))