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「大企業の方が子育てしながら働きやすい」は間違い!? 「企業子宝率」による分析結果は…

2016年04月10日 06:41  キャリコネニュース

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いま、「企業子宝率」という言葉が注目を集めている。男女問わず従業員1人当たりの、在勤中に持てる子どもの数を算出した指標だ。これを分析したところ、意外な結果が出ている。それは、企業規模と企業子宝率の関係だ。

一般的には大企業の方が、制度が整っているために子育てのしやすさが勝っていると思われがちだが、必ずしもそうとはいえないという。4月4日放送の「ワールドビジネスサテライト」では、この背景に迫っていた。

「すごい環境」なのに全国平均以下の大企業も

女性正社員の約3割がワーキングマザーというオリックスグループ(東京・港区)は、「女性の活躍推進」を掲げる企業の1つだ。自らもワーキングザーである人事部の脇真由美課長は、自信を持ってこう語る。

「これ以上の制度はないというくらい、整っていると思います。会社でワーキングマザーがたくさん仕事をしているのは『すごい環境だ』と言われますね」

ところが企業子宝率でみると、全国平均1.30に対し、オリックスは1.19と平均を下回る。この結果に、脇課長は「正直分からないです。なんでだろう」と頭をひねる。

同社財務部のYさん(36歳)は、理解ある上司や同僚のもと、時短制度を利用し保育園のお迎えをしている。しかし、人事異動などで環境が急に変わる不安はぬぐえない。大企業ならではの問題だ。

一方、自動車部品の製造を行う従業員259人のNTN袋井製作所(静岡県袋井市)は、全国有数の高い企業子宝率2.15を誇る。「2歳の子どもと、お腹に1人」という工場で働く女性は、「働きやすいです。みんな(事情を)分かってくれているので」と話す。

社長自ら社内を毎日2回、社員に声をかけて回るのが日課で、中島淑岳社長は「社員に不安があればすぐ解消することが大事」と語る。当初から育児しやすい環境が整っていたわけではないが、同じフロアに座る社長に報告しやすく、社員と経営陣が相談しながら制度を整えてきたという。

「制度よりも風土の方が、はるかに社員の行動を左右する」

オリックスのYさんは「会社の、特に男性の方々の意識が一番大事だと思う」と漏らす。要するに制度は整っていても「仕事第一、家庭は二の次」「出世が遅れてもいいのか?」といった上司の価値観や企業風土のもとでは、不安をぬぐえない。

一方のNTN袋井製作所は、社長が社員一人ひとりの顔色を見て、不安を解消している。監視ではなく気を配っていることが、この会社の強さとなっているようだ。

「企業子宝率」の提唱者である東レ経営研究所・渥美由喜主任研究員も、大企業は制度が整っていて子育てがしやすいと言われる一方、長時間労働で子育てしながら働きにくい環境を数多く見てきたという。

「制度よりも『風土』が、はるかに社員の行動を左右する。風土というのは見えにくいので、風土を定量化する指標として子宝率を開発しました」

企業子宝率の全国平均は1.30だが、従業員数別の平均値は500人以上では1.22だ。企業規模が小さくなるほど上昇する傾向があり、10~29人の企業では1.38にまで上がる。渥美研究員は子宝率の違いについて、背景をこう分析する。

「中小企業は、人に会社・制度を合わせる。大企業は、制度に人を合わせようとする」

子育てのしやすさは、住むところによっても変わるが

子宝率2.17を誇るいちまるホーミング(静岡県焼津市)は、住宅リフォームを手掛ける従業員20人の会社。女性社員の多くは、子育てと仕事の両立がしやすいことを理由に転職してきた。売上高が5年で倍増した原動力は、こうした女性陣の活躍が大きい。

ふたりの子どもを持つシングルマザーのKさん(営業部・41歳)は、7年前に清掃業から転職し、念願のマイホームも建てた。こうした姿を見て入社を決めた人もいるという。

子どもの数や子育てのしやすさは、住む場所や働く人の価値観によっても変わる。企業の責任ばかりではないだろう。ただ「働きやすい=大企業」という構図が必ずしも当てはまらないことは、就職先を考える若者たちにも知っておいてもらいたいことだ。(ライター:okei)

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