2020年の東京オリンピックに向けて、毎年高まっている「警備需要」。セキュリティー関連の国内市場は、現状から2割増えると予測されている。
大手警備会社のALSOK(綜合警備保障)は、17年度の採用人数を810人と今年より200人以上増やす方針だ。そんな同社の「鬼の合宿」と言われる新入社員研修の様子を、4月5日放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)が伝えた。
「エイ!ヤァッ!」と警棒を振る練習も
泊まり込みの研修は、全5日。完成したばかりの研修施設で、4月に入社した新入社員たちが警備のイロハや精神をたたき込まれる。明るく大きなフロアに黒っぽい警備服に身を包んだ131名が揃い、「エイ!ヤァッ!」と大声で警棒を振る練習などをしていた。
警棒を振り下ろすときは、まさに必死の形相。真剣さがうかがえる。揃った動作で足踏みをし、声を合わせて「誠実!誠実!」と唱える姿は、かけ声さえ違えば軍隊のようだ。少しでも隊列が乱れれば「ずれてるぞ!」と先輩社員の怒声が飛ぶ。
こんな体を使った研修もあれば、学校のように机にノートを広げて全員が一斉に学ぶ場面もある。研修の最終日には1時間にも及ぶ試験があり、いかにも厳しそうな同社東京研修所の溝田拓巳課長代理が、
「5日間の努力を合格という形で、みごと勝ち取れ!」
とゲキを飛ばし、「速やかに移動せよ!」の掛け声で一斉に移動。見る限り、試験では個人技ではなく、一糸乱れぬ集団行動を先輩社員たちの前で披露するようだ。
最終的に溝田氏が、喉から絞り出すような大声で「ここにいる131名を全員合格とする!よくやった!おめでとう!」とお墨付きを与えた。
接客の能力や語学力までも求められる時代に
溝田氏の声を聞きながら、真剣なまなざしで涙を浮かべる女性社員の姿も。「これがスタートラインなので気を抜かず、ここで覚えたことは忘れずにいきたいです」と語った。この女性は営業配属の予定だが、配属にかかわらず最初は警備を学ばせるようだ。
この訓練施設には一軒家やATMが設置されており、様々な場面での警備の訓練が可能だという。ここまで力を入れる理由を、同社の香西雅文人事企画課長はこう明かす。
「これから徐々に2020年の東京オリンピックに向けて、臨時警備やイベント警備も増え、建物や施設が立ち並んできますので、人材の育成が最重要事項になっています」
番組ではそのほか、東京スカイツリータウンで警備員として働くMさんを紹介。警備の仕事だけではなく、客の目線に立った案内など接客にも定評がある。
今後は外国人旅行客への対応のため、「英語など、できる範囲で勉強していければいいかなと」と笑顔で話していた。いまは警備だけではなく、接客の能力や語学力までも求められる時代になっているのかと驚かされた。(ライター:okei)
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