自民・公明両党は4月4日、返済不要の給付型奨学金の創設などを盛り込んだ提言を安倍晋三首相に提出した。
自民党の提言では、「貧困の連鎖を断ち切るため、教育における格差を克服し一人一人の環境の底上げを図ることは、喫緊かつ重要な課題」であると指摘。教育における格差の問題を放置することは、「わが国に深刻な危機をもたらす」ことになるとし、「一刻の猶予も許されない状況」とした。
その上で、貧困家庭から大学などへの進学を対象に、返済不要の「給付金型奨学金」の創設を提言した。
学生の半数が奨学金を利用中、返還中の4割は「苦しい」と回答
日本学生支援機構(JASSO)が先月発表した「2014年度学生生活調査結果」によれば、4年生大学の昼間部に在籍している学生の51.3%が奨学金を利用している。
そのうち、91.2%の学生がJASSOの奨学金を利用しているということなので、大学生の46.7%が返済義務のある奨学金を利用しているということになる。
また、2月に労働者福祉中央協議会が公表した「奨学金に関するアンケート調査結果」によれば、奨学金の借入総額は平均312.9万円で、月の返還額の平均は約1万7000円。返還期間の平均は14.1年と長期に及んでいる。返還の負担については、「苦しい」と答えた人が39%にのぼった。
実際に、奨学金を返還できないという人もいる。JASSOの調査では、2014年度末で奨学金の返還を要する約362万人のうち、約17万人が3か月以上延滞していることが明らかになっている。
馳文科大臣は「ちゃんと単位を取ったかを踏まえて判断」と発言
給付型奨学金の創設が提言されたという報道にネットでは、「財源等クリアにしなければいけない点はあるが、制度化されればとてもGoodなニュースだと思う」という好意的な声があがる。しかし、今このタイミングで提出されたことに対し、「選挙対策が見え見え」「選挙の人気取り」といった意見も出た。
また、5日の閣議後に馳文部科学大臣が記者会見で、給付型奨学金に関し、「ちゃんと進学したか、単位を取ったかなども踏まえて判断する必要がある」と発言したと報じられている。これにもネットでは、「結局、小さいころからお金かけて勉強してきた富裕層の子弟に給付型奨学金がいくのでは?」と疑問が出ていた。
そこで、キャリコネニュースは、自民党の文部科学部会に、提言提出の時期が今になった理由や、給付に条件を想定しているのかを聞いてみた。
自民党は「一定の条件は必要」とするも「成績基準」は否定
担当者は、「給付型奨学金は2年前から政策に掲げていたものの、大学の無利子奨学金の拡充や高校生への奨学金の対応が先になったため、今の時期になりました」と説明する。
給付型奨学金を提言した背景にあるのは、やはり「経済的負担の軽減」だという。担当者は「給付に一定の条件を設けることは必要」との見解を示したが、馳大臣が言及した成績と連動させるという考えには否定的だった。
「成績を基準にしてしまうと、やはり家庭が裕福な人の方が給付を受けられることになってしまいます。経済的に困窮している人を対象と考えているので、それでは厳しいです。議員たちの間からもそういった意見は出てきませんでした」
とはいえ、給付型奨学金の創設は現在スタートラインに立ったばかり。具体的な予算の財源や給付の基準といった制度設計はこれから行われるという。本当に経済的困窮を理由に進学や勉強の継続を断念している人の制度になるのか、注視する必要がありそうだ。
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