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企業が新卒を採用する4つのメリット 優秀な人材が低コストで採りやすく、組織が活性化する

2016年04月06日 11:41  キャリコネニュース

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4月は新卒社員が入ってくる季節です。少し前、「新卒一括採用の是非」という議論がなされたことがありましたが、これだけ有力企業が新卒重視の採用をしているのですから、新卒採用には多大なメリットを感じているに違いありません。

そこで「企業はなぜ新卒を採用しようとするのか」ということについて考えてみると、大きく4つのメリットがあげられると感じました。逆にいうと新卒採用をしない企業は、中途採用などで何らかの対策をすべきなのかもしれません。(文:曽和利光)

有名企業でなくても資質の高い人材を採用できる

新卒を採用する一番の理由は簡単です。この日本において、新卒採用マーケットは優秀な人材が最も採りやすいからです。

転職が普通のことになってきたとはいえ、三菱商事やトヨタ自動車に新卒で入った優秀な人が、そうそう転職市場に出てきてくれることはありません。最優秀人材であればあるほど、会社側からも「次世代リーダー候補」とマーキングされて育成の階段を登っていくため、新卒時に入った会社を最後まで全うする可能性が高くなります。

しかし新卒時であれば有名企業でなくても、高い資質を持った若者を比較的低コストで採用できる可能性が残されています。逆にそういう人材は、社会への入り口である新卒採用時に採っておかないと、採れる可能性が低くなってしまうのです。

もちろん優秀といっても、新人は新人。最初から素晴らしいわけではありません。優秀な新人がトッププレイヤーに育つのを待てる余裕が出てきた企業だけが、新卒採用に力を入れられるようになるのです。

中途採用中心だと「社内の人口ピラミッド」が崩れやすい

2つ目の理由は「社内の人口ピラミッドがきれいになる」こと。中途採用を中心に採用をしているベンチャーなどが陥りがちな失敗は、例えば30前後の「第一次」脂が乗る時期の人ばかりをまとめて採ってしまったがために、高齢化が急速に進行していくことです。

サミュエル・ウルマンは「青春とは人生の一時期のことではなく心のあり方のことだ」といいましたが、私も40歳になって思うのですが、やはり体力や記憶力等々、いろいろな能力に衰えが出るものです。

また、日本はまだまだ「長幼の序」を大事にする国で、年上の部下や年下の上司をうまくマネジメントできる人はかなりの能力者です。そんなに多くはいません。

そう考えると、やはり組織は理想としては年齢的に上が少なく、下が多い「ピラミッド」になっている方がよいでしょう。それを作り出すために、新卒を毎年定期的に採用することは一つの方法です。

新人への指導が「知識・スキルの形式知化」を促す

3つ目として、新人が入ってくることで、既存の「旧人」が育つというメリットもあります。新人は何も分からないので、旧人たちが彼らにどんどんいろいろ教えなくてはなりません。

「反転学習」という言葉がありますが、人は教えることによって学びます。今まであまり考えず惰性やマンネリでやってきた仕事を新人に伝えるときに、彼らに「どうしてですか?」とキラキラした目で聞かれることで、

「そう言えば、どうしてこうなんだろう?」

と改めて考える機会が旧人に生まれます。プロになることは無意識でもできるようにすることなので、できる旧人であっても、自分がなぜできるのか説明できなかったりします。しかし新人から尋ねられ、なんとか答えようとすることで、改めて自分の知識・スキルを形式知化することが可能になります。

無意識化されらスキルや、組織の不文律などは変えにくいものです。新人に聞かれ、形式知化されることで、そのおかしさが明確になり改善の機会にもなります。このように、新人の育成を通じて、旧人や組織がどんどん改善されていくのです。

「新人いじり」で社内ネットワークが活性化される

4つ目のメリットは「社内ネットワークが活性化されること」です。中途採用ばかりの会社で多いのは、「敬して遠ざける」社風です。年次に限らず全員「さん」付けといえば聞こえはいいですが、お互いに尊重しあって、ネガティブフィードバックがしづらくなります。

一方、新卒採用者は(いい面も悪い面もあると思うのですが)いじりやすい。みんなが新人の一挙手一投足に注目し、あれこれ言います。大学のクラブやサークルのようなストレートにものを言い合う先輩・後輩関係ができる職場もあるかもしれません。

新人からすれば鬱陶しい先輩方のいじりかもしれませんが、その犠牲によってバラバラだった組織が、新人がコミュニケーションの中心(ネットワークのハブ)となり、一つにつながっていくわけです。それは新人にとってもいい勉強になるでしょう。

問題は「育つまで待てるか」ということだけ

以上がすべてではありませんが、このように新卒採用をすることには、企業にとって大変プラスの意味があると思います。ですから、育成のコストがかかったとしても、最終的には新人を採ることは差し引きプラスになると信じています。

問題は「育つまで待てるか」ということだけです。ですから、私は新卒採用ができるようになった会社は、これからもどんどん積極的に新卒採用をして欲しいと思います。

そして、様々なメリットを享受しながら、これからの日本を背負い若い世代を育てることは、企業にとっても働く人にとっても、社会にとっても新人本人にとってもよいことだと思います。ぜひ新卒を採って、会社と社会をよくしていって欲しいと思います。

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