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要潤が明かす、『あやしい彼女』水田監督の“完全主義” 「画角に入るすべてを演出しようとする」

2016年04月05日 18:01  リアルサウンド

リアルサウンド

要潤

 現在公開中の多部未華子主演作『あやしい彼女』は、毒舌・皮肉屋・頑固と三拍子の揃った73歳おばあちゃんが、ある日突然20歳の姿に若返ってしまったことから巻き起こる笑いと感動の物語を描くコメディ映画。要潤は、多部扮する節子の歌や人柄に魅了され、彼女をプロデュースしようと奮闘する音楽プロデューサー・小林拓人を演じている。監督を務める水田伸生のファンであり、かねてから仕事をしてみたかったと語る要に、本作の見どころや、撮影現場で監督から学んだことについて聞いた。


参考:多部未華子はコメディエンヌの才能を開花させた 『あやしい彼女』での熱演を分析


■理想は持てても先を予測できないのが役者の面白さ


ーー本作は、73歳のおばあちゃんが20歳に若返り、改めて青春を謳歌するというストーリーです。要さんも、20歳に戻って実現したいことはありますか?


要(以下:要):今でも気持ち的には20歳だと思っているので(笑)、改めてチャレンジしたいことはパッとは思いつきません。僕が芸能デビューをした年齢が20歳で、当時はめちゃくちゃ忙しくて、全然楽しむ余裕がなかった気がします。もしも時間が戻せるのであれば、成人式に出たり、友達と勢いに任せてお酒を飲んだり、20代特有の楽しみを味わってみたいですね。


ーー要さんが演じている音楽プロデューサー・小林拓人について教えてください。


要:興味のないものには冷淡ですが、好きなものに対しては一直線に進んでいく、とてもクリエイターらしいキャラクターだと思います。本当に邪念がないというか、子供のようにピュアなハートを持っているなと。役を演じる時は、どこかしら自分と役をリンクさせるのですが、僕もこれと決めたらそこに向かって一直線に突き進んでいくタイプなので、自然と小林の気持ちを理解することができました。それと小林が暮らす部屋に憧れました。独身を謳歌しているわけじゃないですが、仕事ができる男の家という感じで、僕も若い頃にこんな部屋に住めていたらなって(笑)。


ーー要さんは連続ドラマに並行して出演するなど、多方面で活躍しています。役者として心掛けていることを教えてください。


要:歳によって与えられる役柄も変わってきますし、理想は持っていても先を予測できないのが役者という仕事だと思っています。もっとも、具体的なプランが立てられないところに面白さを感じるのですが。ただ、主演であろうと、二番手、三番手の役であろうと、いつも変わらない気持ちで役に臨んでいて、うまく自分のエッセンスを役に入れようとは心掛けています。もちろん、入れすぎも良くないので、自分を役に反映しながらも、観る側には演者を意識させないバランスを追求しています。そこのさじ加減が一番難しいです。


ーー監督を務めた水田伸生氏とは、かねてより一緒に仕事をしたかったとか。


要潤:水田監督が手掛けるテレビドラマや映画を拝見していて、ずっとファンでした。作品だけでなく、人柄も素晴らしいと噂されていたので、今回現場でお会いできた時は本当に嬉しかったです。実際に会ってみると噂以上の人格者で、作品作りにおける配慮が行き届いている上、僕たち役者陣に対しても丁寧に接してくれました。


ーー実際、どんなところに配慮を感じたのでしょう。


要:監督はひとつひとつの芝居を大事にしていて、役者側の気持ちを良く汲み取ってくれるんです。最近は細かくカットを切り、カット割りで魅せる監督が多くいて、もちろんそれも立派な手法だと思いますが、水田監督はワンカットを長回しで撮影したり、役者の芝居が良ければアングルを固定したまま撮り続けることもありました。そういうところから、役者を信用してくれていることが伝わってきましたね。


■どこを観てもらっても製作側の想いが伝わる作品になっている


ーー役者にとって演じやすい環境を作ってくれる、と。


要:最近のカメラは高性能なので、役者の立ち位置が一歩でもずれるとそのカットが成立しなくなることが多々あります。それが役者にとってのプレッシャーやストレスに繋がるのですが、水田監督はそこを上手くフォローしてくれました。動くシーンと動かないシーンの指示を明確に出してくれるなど、余計な心配をする必要がない分だけ演技に集中することができましたね。


ーー監督の姿勢から学ぶことも多そうです。


要:隅々まで細かく目を行き届けているところは見習わなければと思いました。お客さんは芝居を観にきているという考えから、その芝居さえ良ければそれ以外の要素に少しくらいの不備があってもOK、という現場も少なくありません。しかし、水田監督の場合は、全部の要素が完璧じゃないとOKにならない。例えば、テーブルの上に置いてある飲み物ひとつに対しても、置かれている位置や水の量にまで細心の注意を払います。画角に入っているものすべてを演出しようとする監督は珍しいと感じました。そんな監督の姿勢を見ていると、現場にも良い緊張感が生まれますし、演じる側もワンカットに対する想いが強くなります。本作のどこを観てもらっても、製作側の想いが伝わる作りになっていると思います。(泉夏音)