昨年4月に行われた統一地方選挙で、ネット上の注目を集めた「ニート候補者」の上野竜太郎氏(26)。千葉市議会議員に出馬して落選したものの、1399票を獲得し、供託金没収を免れるという快挙を果たした。
選挙ポスターを自作するなど、税金の支援を受けない徹底したDIY作戦でも話題になり、選挙後の去就にも注目が集まっていたが、しばらくしてツイッターの更新が停止。しかし、1年の沈黙期間を経て2016年4月3日、久しぶりに近況を報告した。
各方面からの誘いを断り初志貫徹、約束通り介護の道へ
「皆さまお久し振りです。私のことを覚えている方が一体どれだけいるでしょうか。覚えている方の中で、現在の私の事を気にする方が一体どれだけいるでしょうか」
更新に至った理由は、以前の投稿で「社会復帰する」と宣言していたこと。「音沙汰無しでは少し勝手かなと思い報告の義務はなくとも、せめて義理はあるだろうと思った」のだという。「今、認知症の方専門の介護施設で働いています」と現在の状況を語った。
実は、上野氏は、昨年4月14日の投稿で、「選挙が終わったらハローワークに行き、介護職の求人に応募しようと思っていた人間です」と明かしている。投開票直前の「4月12日の深夜25:00」も、「布団の中で初心者用の介護講座サイト」を見ていたのだという。
選挙後には、ジャーナリストや出版社からも連絡があったが、ほとんどは断った。その上で介護の道に進んだということは、まさに初志貫徹といえるだろう。
「高齢者も若年者も安心して認知症になれる社会」を
上野氏は介護施設で働き、認知症の人と触れ合った印象を「『普通』でした」という。
「確かに皆さん個性的な方々で、しかし個性的なのは世の中の人間全員だと思うのです。全く同じ人間など恐らくいないでしょう」
「出来ない事があって、出来る事があってそれはどんな人間でも皆同じなのではないでしょうか。私なんか出来ない事だらけです」
世間一般では「認知症と言うものが無くなって欲しい、完治して欲しい」考えている人が多いが、上野氏は「本末転倒で非進歩的」かもしれないと前置きしつつ、
「私はこの国が『高齢者も若年者も安心して認知症になれる社会』になって欲しいと思うのです」
と自身の考え方を語った。認知症と診断された人に恥ずかしいと思って欲しくない、生活の手伝いをして貰って「申し訳な」いと思って欲しくないことがその理由だそうだ。
「出来ない事があるのは当たり前の事で、人が助け合うのは当たり前の事だとふんぞり返っていて欲しいのです。我ながら自分勝手な意見だと思います」
今回のツイートには、フォロワーから、「おかえりなさーい」「待ってましたよ!」「就職おめでとうございます」と温かい反応が寄せられていた。中には「議員の不甲斐なさ」を見るに度に上野氏を思い出していたという人もおり、人気は健在のようだ。
上野氏はこうした反応を受け、「以上、私のその後を気にして下さった方々への これがせめてものご報告でした。 それでは明日も超高齢社会で汗流して来ます。 お休みなさい!」とツイートしていた。
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