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SMAP・木村拓哉、V6・岡田准一、嵐・二宮和也……ジャニーズとテレビドラマの深い関係を解説

2016年04月05日 07:01  リアルサウンド

リアルサウンド

(C)タナカケンイチ

 いまや、ジャニーズが出演するドラマが途切れることはないと言ってもいいほどだ。連続ドラマだけでみても、この3月まではKAT-TUN・亀梨和也の『怪盗 山猫』(日本テレビ系)、SMAP・香取慎吾の『家族ノカタチ』(TBSテレビ系)、TOKIO・長瀬智也の『フラジャイル』(フジテレビ系)、SMAP・草彅剛の『スペシャリスト』(テレビ朝日系)、Kis-My-Ft2・藤ヶ谷太輔『MARS~ただ、君を愛してる~』(日本テレビ系)などがあった。そして4月からは代わって嵐・大野智の『世界一難しい恋』(日本テレビ系)、嵐・松本潤の『99.9-刑事専門弁護士-』(TBSテレビ系)、SMAP・稲垣吾郎の『不機嫌な果実』(テレビ朝日系)などが始まる。


 これだけを見ても、医療もの、刑事もの、法律ものからホームドラマ、恋愛もの、アクションものとジャンルも多様なら、演じる役柄も様々だ。それだけジャニーズが、いまのドラマ界に根を張った存在になっているということだろう。


 とは言え、ジャニーズのタレントで最初から俳優を目指して芸能界に入ってくるケースは少ないはずだ。その点、いまのような状況はちょっと不思議でもある。ではどのような流れでジャニーズはドラマと深く結びつくようになったのか? 今回は、そのあたりをざっとではあるが、たどり直してみたい。


 始まりは、学園ドラマだった。学園ドラマはすでに1960年代から人気ではあった。「青春」がテーマとなる学園ドラマはアイドルにとっておあつらえ向きのジャンルであり、実際男女問わずアイドルが生まれた。だが、1960年代から70年代前半にかけてジャニーズの学園ドラマ出演はそれほど目立っていない(その頃の学園ドラマの代表作で森田健作主演の『おれは男だ!』(日本テレビ系)に、フォーリーブスが本人役で登場して部費稼ぎのためにショーを開き、実際に歌うというレアものの場面などはあるが)。


 学園ドラマで最初に主役級の活躍をしたジャニーズと言えるのは、1970年代後半、『青春ド真中!』『ゆうひが丘の総理大臣』(いずれも日本テレビ系)といった中村雅俊の一連の熱血教師ものに出演した井上純一である。井上はすでに歌手としてレコードデビューもしていて、郷ひろみの後継者として期待された存在だった。だがむしろ、学園ドラマの少し哀愁を帯びた不良生徒役で俳優としての方が人気になった。現在で言えば生田斗真や風間俊介などに近いポジションと言えるだろう。


 井上純一は、川崎麻世とともにジャニーズの苦しい時期を支えた。とは言え、そんなジャニーズを復活させたのも学園ドラマであった。1979年開始の『3年B組金八先生』(TBSテレビ系)(以下では『金八先生』と表記する)である。このドラマに生徒役で出演した田原俊彦、近藤真彦、野村義男の人気が爆発し、3人は「たのきんトリオ」としてジャニーズを再び大きな上昇気流に乗せる救世主的存在になった。


 学園ドラマにも時代の変化があり、たのきんの3人はそれにうまくはまったと言える。


 それまで学園ドラマは、スーパーマン的な教師の活躍ですべてが解決するような現実離れしたストーリー展開が特徴だった。それに対して、『金八先生』は中学生の実情にあったリアリティを追求した。具体的には、生徒ひとり一人が抱える受験や恋愛、将来や人間関係の悩みを丁寧に描いた。したがって、生徒ひとり一人がクローズアップされ、それぞれの生徒が主役の回があった。


 その結果、この新しいスタイルによって生徒各自のキャラクターがよりくっきりと出てくるようになった。そして視聴者は、それを通じて生徒に感情移入しやすくなると同時にそれぞれの魅力に引き寄せられていった。その代表が「たのきん」の3人だった。


そこには、アイドルファンとアイドルの関係性にオーバーラップするものがある。『金八先生』は、いわば自分にとってのアイドルを発見する喜びを視聴者に与えてくれたのである。だからこそ、ファンの好みによって人気も一人に集中することはなかった。「たのきんトリオ」自体は厳密にはグループではないが、ジャニーズアイドルがソロではなくグループ主流になっていく原点も、ある意味ではここにあるように思える。


 その後、学園ドラマからジャニーズの若手が世間に発見され、人気が出るというパターンは、松本潤、亀梨和也、赤西仁(元KAT-TUN)、高木雄也(Hey! Say! JUMP)、中間淳太(ジャニーズWEST)、桐山照史(ジャニーズWEST)らが生徒役で出演した2000年代の『ごくせん』シリーズ(日本テレビ系)くらいまで続く。


 一方1980年代後半には、学園ドラマをベースにしながら恋愛ものの要素が入ったドラマも出始めていた。田原俊彦が小学校の教師役に扮し大ヒットした1988年の『教師びんびん物語』にもその雰囲気はあるが、続く1989年の『愛しあってるかい!』で恋愛要素はよりはっきりと前面に出てきた。両番組とも、フジテレビ月9枠のドラマである。こうして振り返ってみると、学園ドラマから恋愛ドラマへとシフトしていった月9の歴史の一面が見えてくる。


 俳優・木村拓哉は、そのシフトのなかで登場した。彼のブレイクのきっかけにもなった1993年の『あすなろ白書』は、大学を舞台にした学園ドラマであり恋愛ドラマである。そこで木村拓哉が演じた取手治は主役ではなかったことも、先ほど書いた学園ドラマの視聴者によるアイドル発見パターンに当てはまる。その後人気を決定づけた『ロングバケーション』(1996年放送)では芸大卒業直後、同じく『ラブジェネレーション』では社会人3年目と、役の設定もステップを踏みながら、学園から離れていった。こうして見ると、恋愛ドラマの時代を象徴するアイコンになった木村拓哉は、学園ドラマ出身ジャニーズ俳優の進化形だったという見方も可能だろう。その後彼が、そこからさらに役柄や出演作品の幅を広げていったことはご存知の通りだ。


 学園ドラマできっかけをつかみながら、俳優としての幅を広げていったジャニーズは他にもいる。『ツインズ教師』(テレビ朝日系)でドラマデビュー、『白線流し』(フジテレビ系)に主演した長瀬智也もそのひとりだ。特筆すべきは、クドカンこと宮藤官九郎との相性の良さだろう。『池袋ウエストゲートパーク』『タイガー&ドラゴン』『うぬぼれ刑事』(いずれもTBSテレビ系)など数多くのクドカン作品に主演した長瀬は、クドカン脚本の根底に流れるテーマである「青春の永遠性」を最もよく体現する俳優だと言える。


 クドカン作品に出演経験のあるジャニーズは他にも多く、そのなかでV6・岡田准一、嵐・二宮和也、関ジャニ∞・錦戸亮などは、コンスタントにドラマで主役を務めるポジションになっている。映画の世界の話ではあるが、岡田准一と二宮和也がそれぞれ一昨年、昨年とジャニーズ勢として続けて日本アカデミー賞最優秀主演男優賞(岡田は最優秀助演男優賞とのダブル受賞)に輝いたことは、まだ記憶に新しい。


 岡田准一に関しては、2014年のNHK大河ドラマ『軍師官兵衛』の主役にもふれなければならないだろう。1972年に歌手デビュー前の郷ひろみが『新・平家物語』に出演するなどジャニーズと大河ドラマの縁は意外に古いが、主演となると1993年『琉球の風』の東山紀之が最初ということになる。その後2004年『新撰組!』の香取慎吾、2005年『義経』の滝沢秀明も主役を務めた。大河ドラマと言うと歴史を題材にした重厚なドラマのイメージが強いが、必ずしもそれだけではない。特に主人公については、幼少期からの成長物語、青春ストーリーの側面もあるため、アイドルとの親和性が高いとも言える。


 こうして、学園ドラマから始まったジャニーズとドラマの関わりは、大河ドラマを筆頭にあらゆるタイプのドラマに及ぶようになった。となると、ジャニーズにとって演技とはどのようなものなのか? というのも気になる点だ。


 ひとつ思い出すのは、かつて中居正広がジャニーズの演技の秘密について語った言葉だ。その時「なんでジャニーズの子は演技がうまいの? 」と聞かれた中居正広は、「たぶん踊りがあると思いますね、リズムが」と答えた。リズム感の良さは当然セリフの間や共演者との呼吸の良さに通じるだろう。今回はジャニーズ的演技論にこれ以上立ち入ることはしないが、そのあたりに注目してこれからジャニーズの出演ドラマを見てみるのもありかもしれない。(太田省一)