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テレ朝「TVタックル」を精神科医らが批判、暴力的手法で「ひきこもり当事者」を連れ出す映像を放送

2016年04月04日 20:42  弁護士ドットコム

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テレビ朝日系の情報番組が、長年自室にひきこもって生活している40代の男性を、暴力的な手法で部屋の外に連れ出す映像を放送したことについて、ひきこもりの問題にくわしい精神科医やジャーナリスト、ひきこもりの当事者らが4月4日、東京都内で記者会見を開き、「支援という名の暴力」を好意的に報道するのは人権意識が欠けていると批判した。(ライター 加藤順子)


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●ドアを叩き割って「降りてこい!」と怒鳴るシーンを放送


問題となったのは、テレビ朝日系の情報番組「ビートたけしのTVタックル」で3月21日夜に放送された「すねかじられる親の悲痛な叫び! 高齢化する〝ひきこもり〟問題」と題した特集企画だ。30代、40代になっても、自室にひきこもっている当事者を、親元から離して入寮させる「引き出し業者」と呼ばれる千葉県内の団体の活動を紹介する映像が放送され、スタジオ内の出演者がコメントするという内容だった。



VTRの映像では、この団体の複数のスタッフが、ひきこもり当事者の自室ドアを素手で叩き割って「降りてこい!」と怒鳴るシーンや、逃げられない状態にある当事者に対して「現実逃避するなよ」などと長時間の説得を行ったりするシーンが流された。その後、スタジオの出演者が、当事者について「タチが悪いですね」「(ひきこもることは)全く理解できない」などと発言する様子が放送された。



このような番組の内容について、精神科医の斎藤環さんやジャーナリストの池上正樹さんら9人が記者会見を開いて、批判した。斎藤医師は、本人の同意を得ずに部屋から引き出す手法は、次のような4つの点で問題があると指摘した。



・当事者の合意なしに行われることによる住居侵入罪等の違法性


・文脈しだいで暴力が容認されるような支援活動における倫理性の欠如


・当事者の尊厳があるかどうか問われる適切な人権意識の欠如


・ひきこもる背景に精神症状がある可能性に配慮しない精神医学的な問題



一方、ひきこもりに関する取材を18年にわたり続けているジャーナリストの池上正樹さんは、「実際に『あれくらい強引にやらなければ』『あれがマニュアルなんだ』と信じ込んでしまっている人がいる」と、テレビ番組が与える影響に懸念を示した。ひきこもりの当事者が悪者で、親は被害者であるというストーリーに仕立てることにより、「テレビが一緒になって、視聴者を『加害的な傍観者』にしていると言わざるをえない」と批判した。



●ひきこもり経験者「自分の存在意義を奪われたと感じた」


徳島大の境泉洋准教授が2006年に53人の当事者を対象に行ったひきこもりの実態調査では、当事者が一番望んでいる支援は「居場所」である一方、最も望んでいないのは「家庭訪問」であることが示されたという。境准教授は「当事者が望んでいない訪問支援を行うには、慎重な検討が必要となる」というコメントを寄せた。



今回の記者会見には、ひきこもりの当事者や経験者も全国から駆けつけ、17人の個人と支援グループ4団体による共同声明が発表された。



呼びかけ人のひとりで、ひきこもり経験者の割田大悟さん(28)は「番組を通じて『ひきこもりは悪い存在である』『親のすねをかじっている厄介者』といった印象を突きつけられ、自分が社会の中で生きていく存在意義を奪われたように感じました」と声明文を読み上げた。



声明文では、放送各社に対して、「報道倫理に則り、偏った不公正な内容を放送しないこと」「精神的暴力を行わないこと」「事前のリサーチを行うこと」「ひきこもり当事者の声を取りあげること」「有識者の見解を取りあげること」を求めている。



また、斎藤医師は記者会見後、BPO(放送倫理・番組機構)の放送倫理検証委員会に対して、今回の番組の放送内容を審議することを要請した。


(弁護士ドットコムニュース)