参戦2年目でシリーズ初優勝を飾った平中克幸(GY RACING 86) 4月2日~3日、4シーズン目のTOYOTA GAZOO Racing 86/BRZ Raceがツインリンクもてぎで開幕した。プロフェッショナルシリーズのポールポジションは服部尚貴(OTG DL 86)が獲得したが、決勝ではトップを維持できず。激しいトップ争いが繰り広げられるなか、最後に笑ったのは平中克幸(GY RACING 86)で、嬉しいシリーズ初優勝を飾った。クラブマンシリーズでは松原怜史(assetテクノBS 86)が優勝している。
プロフェッショナルシリーズの開幕戦には36台がエントリー。スーパーGT500クラスからの引退を表明した脇阪寿一(ネッツ東京レーシング86)の参戦もあり、これまで以上に注目が集まっている。しかし、その寿一は初めてのナンバーつきワンメイクレースに合わせ込みが十分ではないようで、先に結果を言えば予選は32番手、決勝も26位に留まった。百戦錬磨のドライバーばかり集うレースだけに致し方ないとも言えるが、いずれ完璧にマスターして上位に食い込んでくるはずだ。
金曜日に行われた専有走行では、平中が2分18秒500を記録してレコードタイムをコンマ8秒も更新する。しかし、限界はさらに高いところにあった。予選を先頭で開始した服部が、ワンアタックで2分17秒667を記録してポールポジションを獲得する。これもすべてより激化したタイヤウォーズの影響なのだろう。「遅れてコースインしたクルマに裏のストレートで引っかかってしまいました。90度コーナーをインから行かざるを得なくって、それがなければタイムはもうちょっと出たと思います。ただ、僅差なんでレースは厳しいかも」と服部。1秒以内に10人が並び、2番手の阪口良平(AREA86倉敷)にいたっては実に1000分の7秒差。「ギヤの調子が悪かったので、少しもったいない」と阪口。
3番手には吉田広樹(OTG DL 86)がつけ、4番手は平中。以下、佐々木雅弘(assetテクノBS 86)、近藤翼(神奈川トヨタ☆DTEC86R)、元嶋佑弥(GY RACING 86)、蒲生尚弥(ASICS Blue 86)、山田英二(CUSCO BS 86)の順で、1秒差のしんがりには3連覇を目論む谷口信輝(KTMS 86)がつけることとなった。セッション後半からのアタックだった谷口ながら、「特にコンディションが悪くなっていたわけじゃなく……。厳しいね」とポツリ。
決勝レースは早朝まで降り続いていた雨の影響で、あいにくのセミウェットコンディションに。それでも先に行われたクラブマンシリーズよりは路面がだいぶ乾いていたが、そのことがレース展開にも影響を及ぼすこととなった。「あえてドライ寄りのセッティングにしていたから」と、服部はトップで1コーナーに進入したものの、ペースが思うように上がらず。一方、イン側グリッドからのスタートだったため、2番手スタートの阪口は、1コーナーでは吉田の先行を許したものの、3コーナーで再逆転。その勢いのまま90度コーナーで早くも服部に勝負を仕掛けてトップに立つ。阪口はウエット方向のセットを選んでおり、1周目を終えた段階では服部と佐々木、蒲生を背後に置いていたが、次の周には差を1秒6にまで拡大した。
しかし、阪口にとって誤算だったのは路面の乾きが予想以上に早かったこと。3周目からは差が徐々に詰まっていく。服部と佐々木による2番手争いの激化を期待していたはずだが、そのバトルは5周目のヘアピンで佐々木が決着をつけ、そのまま阪口に迫っていくことが予想されたものの、6周目の90度コーナーで服部に抜き返されたばかりか、7周目直後のホームストレートでトラブルが発生。マシンを止めることとなった。
安堵する暇もない阪口に、服部に加え、いったんは5番手まで退いていた平中も急接近。3台並んで飛び込んだ7周目のV字コーナーを、先頭で立ち上がっていったのは平中だった。続くヘアピンでは服部も、阪口パス。勢いに乗る平中が、そのまま逃げるかと思われたものの、最終ラップには服部が再接近。90度コーナーで勝負に出るが、平中がしっかりガードを固めていた。
平中は、そのままコンマ5秒差で逃げ切り86/BRZ Race初優勝。「タイヤの内圧を高めにしていったんですが、思った以上に路面の乾きが早かったので、最後、服部さんに追いつかれてしまいました。でも、初優勝がかかっていたので、ちょっと強気で行かせてもらって(笑)。前でバトルしてくれていたから追いついたんで、こういうチャンスが生まれました。もし、もっと早い段階であの中にいたら、どうなっていたか分かりませんが、まぁ良かった」と平中は嬉しそうに語った。2位表彰台を獲得した服部は「もう少し早く路面が乾いてくれたら良かったんだけど、でもいい。開幕戦で2位って今までなかったし、チャンピオン狙う上では十分」とコメントした。
3位は近藤が獲得し、表彰台に立ったドライバーはすべて異なるタイヤメーカー(平中:グッドイヤー、服部:ダンロップ、近藤:ヨコハマ)となった。阪口は元嶋、吉田に続く無念の6位に甘んじた。そして、シリーズ3連覇を目指す谷口は11位で入賞ならず、苦しいシーズンの始まりとなってしまった。
クラブマンシリーズには52台がエントリー。チャンピオンの遠藤浩二が卒業を果たしたため、「次の主役は自分」とばかりに、昨年の最終戦を制した松原怜史(asset・テクノ・BS・86)がポールポジションを奪い、昨シーズン、ランキング2位となった小野田貴俊(ネッツ東埼玉ワコーズED86)とフロントローを分け合うこととなった。決勝はウエット路面のなかで争われたこともあり、イン側グリッドに並んだ小野田は、3番手スタートの橋本洋平(カーウォッチ86ポテンザED)の先行を許す。1周目終了時点でのトップ3は、ほぼ1秒差で等間隔。小野田のコンマ5秒後ろには手塚祐弥(栃木スバルOTモチュールBRZ)がつけていたが、2周目以降は差を広げられてしまう。トップを行く松原は3周目には橋本との差を2秒まで広げている。
そして、7周目のS字コーナーで小野田が2番手に浮上。「前半はタイヤがまったく来なかったけど、ようやく」と語り、ペースも松原を上回るように。差はみるみるうちに縮まっていき、最終ラップはテール・トゥ・ノーズ状態。だが、松原も冷静に対処して逆転を許さず、年をまたいで2連勝を飾ることとなった。「後半なぜかつらかったのですが、前半の貯金が効きました。勝てて良かったです」と松原。なお、最終ラップの130Rで橋本がストップしたため、手塚が3位でゴールして表彰台に上がっている。