2006年、スーパーアグリからF1に参戦したばかりの井出有治がスーパーライセンスを剥奪される事件が起きた。その結果、思わぬF1デビューを果たしたのが、同チームの控えドライバーだったフランク・モンタニーである。理由こそ違えど、今回のストフェル・バンドーンと同様のF1デビューだった。
現在はフランスのケーブルテレビ、カナル・プリュスのF1中継でピットリポーターを務めるモンタニーが、そのときの喜びを語った。
「たとえ、それまでテストでF1マシンを走らせていても、正ドライバーとしてレースに出るのは、まったく別のことだ。僕にとって間違いなく人生最高の出来事だったし、一生忘れられないこととして、いまも胸に深く刻み込まれているね。それはストフェルも、間違いなくそうだと思う」
F1に参入したばかりのスーパーアグリのマシンは戦闘力も信頼性も低く、モンタニーのデビュー戦は予選最下位、レースも油圧トラブルでリタイアという、ほろ苦いものだった。
「いいところを見せられなかったのは残念だったけど、結果じゃないんだ。とてつもなく運転しにくいクルマだったけど、最高に楽しかった。ストフェルのデビューが昨年のマクラーレン・ホンダじゃなくて、よかったよ。その意味でも彼は“もってる”んじゃないかな(笑)」
「ストフェルが緊張しているようは見えないなあ。こういうときドライバーは興奮こそすれ、F1を運転すること自体は緊張することじゃないんだ。物心つくころから、ずっとやってきたことだし、コクピットで最善を尽くすことは、そう難しいことじゃない。密閉された空間で、自分の一番得意なことをするだけだからね。問題はコクピットの外にいるときだよ。見たこともないほど、たくさんの報道陣に囲まれ、次から次へと質問が飛ぶ。とんでもないヘマをしでかさないか。チームやスポンサーに不利益になるようなコメントを思わず口走ってしまわないかってね」
「初日の様子を見た限りでは、ストフェルは、そのへんもうまくこなしてた。ぶっつけ本番にもかかわらず、走りも、すごく落ち着いていたね。彼なら、きっとデビュー戦をうまくやってのけると思うよ」