バーレーンGPがトワイライト・イベントに変わったのは2014年から、砂漠に陽が沈む午後6時ごろも熱気が、そこかしこに残る。ところが今年は初日の昼から曇り空、午後2時からのフリー走行1回目は気温22度、路面32度。これは昨年の36度、53度(!)と、えらい違いだ。暗くなったフリー走行2回目(FP2)は気温20度、路面24度に下がる“超低温コンディション”、なんと昨年より10度も低い。
これが初日の走行に大きく影響した。とくにフェラーリはタイヤが発熱せず、4本あるストレートで(合計3075m・全長の57%)どんどん冷えていき、セバスチャン・ベッテルもキミ・ライコネンもFP2のスーパーソフト練習でグリップが確保できていなかった。何度も走りが散らかって、セクタータイムはバラバラ。それがFP2で5位&6位と低迷した最大の原因。他にもライコネンはセクター2でフェリペ・マッサに追いついてロス、ベッテルもセクター3でトラフィックに阻まれた。
このマイナス要因を省き、フェラーリふたりのクリアなセクタータイムを合算すると「1分32秒008」。FP2最速のニコ・ロズベルグとは1.007秒の差はあるが、絶望的な大差ではない。タイヤ作動領域に達しないまま、開幕戦と違うカーバランスに陥り、クリアラップを阻まれてスーパーソフトを使いこめなかっただけだ。土曜からは平年並みの気温27度に上がり、陽射しによって路面温度は35度以上になるだろう。気落ちすることはないと考えていい。
「熱くなる第2戦では、もっとメルセデスに接近できる」とフェラーリ陣営は読み、それを警戒していたメルセデスは“低温バーレーン”に一変したコンディションで好タイム。ロズベルグがルイス・ハミルトンよりブレーキングをうまく合わせこみ、セクター2と3が、とてもスムーズ。そこで大敵に明確なタイム差をつけた。バーレーンで勝っていないロズベルグだが、先手は打てた。あとはメンタルの勝負。
フェルナンド・アロンソ欠場で一大事のマクラーレン、ジェンソン・バトン3位は朗報だ。セクター1がフェラーリ以上(!)、低温条件でタイヤ発熱が一気に上がり、1周グリップをキープできていた。彼独特のきれいなラインに見てとれる。
アロンソ欠場について私見を。「外傷性気胸症」は肋骨の損傷しだいで完治までに時間を要すると知人の医師に聞いた。痛みを自覚しなくても、たえずGフォースを受けるだけに、また小さなクラッシュを犯したらリスクが一層高まる。だからドクターストップ判断になったのだろう。アロンソの肋骨の状態が復帰への鍵を握る、とだけしか、いまは言えない。
岡山でのスーパーフォーミュラテストを1日で切り上げて移動するのは想定済み。ストフェル・バンドーンに驚いたのは、セクター2でバトンを上回ったこと。1月末にポールリカールで約700kmのウエット・テストをしていても、今季ニューマシンは初めてで、スーパーソフトタイヤも初めて。3月12日、鈴鹿で彼のスーパーフォーミュラ走行を現場で取材して、きっちり着実に落ち着いてアプローチする態度を感じた。いいとこ見せようとか、やってやろうとかいう性格ではなさそうだ。“アロンソ監督”のアドバイスによって、ピンチにあるチームの結束力を、彼が高められるのではないか。
拮抗するサードパーティー、ここも初日から見どころたくさん。ひとつだけ挙げると、トロロッソのマックス・フェルスタッペンがFP2で4位、タイヤ発熱特性が非常に良いSTR11も冷え冷えで苦心しながらの好タイム。戦力的にダークホースのチームに推したい。ウイリアムズは「土曜に到着するニューノーズ待ち(マッサに優先権?)」。フォース・インディアはタイヤを「考えすぎ」? レッドブルは「ダウンフォースつけすぎ」で、その合間を縫って、またハースが行くのか。
金曜を見て感じることが、いろいろいっぱいある今シーズンは面白い。最後に言えば、19位マノーのパスカル・ウェーレインのタイムは、昨年Q1最速ハミルトンと、たった0.025秒差。速いぞ、今年のF1。わかっていないのは、ひと握りの権力者たちだけだ──。