開幕戦オーストラリアGPの週末、世界チャンピオンのルイス・ハミルトンはF1の現状について忌憚のない意見を口にした。グランプリ・ドライバーズ・アソシエーション(GPDA)がドライバー全員を代表して公開書簡を出す前のことだ。
ハミルトンはGPDAに加入していないが、バーレーンの木曜日にメディアの取材に答え、GPDAを全面的に支持すると述べた。彼は強い思いを込めて熱弁を振るい、カート時代から今日に至るまで変わらないレースへの愛情ゆえに、いまの気持ちを言葉にして語る必要を感じたという。
現在のF1について彼がどう感じているか、ここでは彼自身の言葉を、そのままの形で伝える。以下のコメントは、いずれもバーレーンGPのグループインタビューでの発言から、一部を抜粋したものだ。
「僕はGPDAのメンバーではない。以前に何年間か加入していたが、脱退したんだ。だけど、みんなが集まって意見をまとめた会合には参加した。僕らはドライバーとして団結することを決めた。時には共同戦線が必要とされる問題もあり、今回もそうだった」
「僕らが目指すのは決定権を持つことではないし、決定権を持ちたいとも思っていない。ただ、レースを面白いものにするにはどんな工夫が必要か、みんなに知ってもらう手助けができる立場にあるのは、僕たちドライバーだけなんだ」
「僕たちドライバーがレースをするのは、クルマを愛し、レースを愛し、ホイール・トゥ・ホイールのバトルを愛しているからだ。ほぼ全員がカートからスタートして、過去の偉大なドライバーたちのようになることを目指してきた」
「現在のF1マシンのドライビングは、ドライバーにとって身体的にも精神的にも本来あるべき形でチャレンジングなものではなくなっている。なぜかと言えば、ルールを決めるにあたっての判断がクルマを間違った方向へ進化させてきたからだ。僕らは何とかして、それを変えたいと思っている」
「ファンの多くは、このスポーツへの愛情を失っている。その影響は、あなたたち(メディア関係者)や僕らにも及ぶだろう。僕らは、そうなることを望んでいない。F1は世界で最も偉大なスポーツになる可能性があり、そうなるべきだからだ」
「僕も、すべての問題に対する答えがわかっているわけではないが、改善できる部分はたくさんある。オーストラリアのレース後には、どうすればクルマが良くなるかについて話した。僕に言えるのはクルマに関すること、あるいは、どうすればファンと交流できるか、もっとファンと関わりあうにはどうすればよいかだ。僕はソーシャルメディアでファンとつながろうと試みている」
「カートの時代が懐かしいよ。今日その話題に触れたインタビューを受けて、すごく楽しかった。僕がカートに乗っていたのは2000年ごろのことだ。ニコ(ロズベルグ)や他のドライバーたちを相手に、いまだに、あれを超えるものは少ないと思えるような最高のレースができた。当時、僕を夢中にさせたのはホイール・トゥ・ホイールの激しい競り合いだったけど、いまでは、なかなか味わえない」
「オーストラリアのレースで、僕はどうしてもトロロッソ(マックス・フェルスタッペン)が抜けなかったわけではない。たとえて言えば、手元に100ドルあって、それを40周持たせることを考えながら、お金を使わなければならないような感じだね。目の前にいるクルマを抜くのに90ドル使ってしまったら、レースを完走できなくなる」
「でもファンには、そんなことは関係ない。彼らは僕が最後まで全力で戦うのを見たいんだ。彼らが見たがっているのは、僕が必死になって戦い、信じられないようなオーバーテイクを成功させるところだ」
「僕は個人的な信条からGPDAに加入していない。だけど、本当に重要なこと、たとえば安全性などに関わる問題があれば行動をともにする。オーストラリアで、GPDAがF1を愛するがゆえに団結しようとしたとき、僕は参加したいと思った」
「彼らには、こう言ったんだ。僕も加わる必要があれば、そう言ってほしい。いつでも会合に参加して、話によっては賛同するし、支持するってね」
「細かいことは徐々に変わりつつある。ただ、それで何かが大きく変わるかどうか、僕にはよくわからないし、まだ判断を下すのは早すぎると思う。早々と評価を決めてしまって、結局何も変わらずに終わることは望んでいない。最終的に僕らが言いたいのは、とにかくレースの内容を良くしたいということなんだから」
「レースを見ているファンは、たくさんのコントロールスイッチのことなど知らない。彼らが見たいのはホイール・トゥ・ホイールのレースであり、激しいバトルであり、クルマからスモークが上がるような場面だ。誰かがタイヤをロックさせて煙が上がれば、確実にエキサイティングだ」
「2014年のバーレーンGPは僕のベストレースのひとつだ。ただ、あの激しい競り合いは、タイヤによって1周2.5秒も差があったからこそ可能だった。それがなければ、彼(ロズベルグ)が僕に迫ってくることはできなかっただろう。それは何かが根本的に間違っている証拠だ。そんな状況を打破して、もっとあのようなレースが見られるようにするにはどうしたらいいんだろうね。あれはF1で経験したなかでも最高にエキサイティングなレースのひとつだった。僕は週末ごとに、あんなレースがしたいんだ」
「勝ち負けはともかく、少なくとも楽しいレースができたと言える週末をもっと増やしたい。最高の満足感を味わえるのは、後方のグリッドからスタートして、バトルを繰り返しながら順位を上げていったときだ。ポールからスタートして優勝するより、そのほうがずっと、いい気分になれる」