規制が強化された無線に関して、ドライバーやチーム関係者から不満の声が上がっている。レッドブル育成システムのアドバイザーを務めるヘルムート・マルコは、オーストラリアGPのレースでマックス・フェルスタッペンとトロロッソが意思の疎通を欠いた原因を「週末に3度も無線の規制内容が変更されたからだ」と怒りを隠さない。
いずれにしても、規制が緩和されたことによって、ドライバーはチームの組み立てた戦略に従うだけでなく、レース展開に応じてチームと話し合うことができるようになった。しかし、あるチームのエンジニアは「無線の規制が緩和されたからといって、単純にドライバーとピットがコミュニケーションをとりやすくなったと考えるのは安直だ」と語る。
というのも、FIAによる規制があろうとなかろうと、ドライビング中にエンジニアがドライバーと無線で交わすコミュニケーションには、そもそも限界があるからだ。そこで大切になってくるのが「走行時間以外に無線を介さないで行うフェイス・トゥ・フェイスのコミュニケーション」だという。
「ドライバーが無線で話してくるときは、だいたい何か不満があるときなんだ。不満にどのように対処するのが良いのかはドライバーによっても違うし、状況によっても変わる。どうすれば正しく対処できるかをを理解するには、ふだんから意思の疎通を図っておかなければならないんだ」
そう語ってくれたエンジニアは、オーストラリアGPでドライバーから「タイヤが厳しいからピットインさせてくれ」と無線が入ったとき、ピットインしないほうが得策だということを端的に伝えて、ステイアウトさせたという。
「ドライバーもバカじゃない。ピットインしないほうが良いという理由を論理的に説明さえすれば、納得してくれる。でも、その説明を限られた時間で行うには、ドライバーとの信頼関係を築いておくことが大切」
つまりトロロッソの内紛は無線規制だけが原因ではなく、エンジニアと若いドライバーとの信頼関係が、まだ発展途上にあるという証左だったのかもしれない。
どんなにルールが複雑になっても、最終的に大切なのは人間同士の信頼関係なのだ。