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「シュヴァルツェスマーケン」吉宗鋼紀×内田弘樹対談(後編)ー今までのロボットアニメとは全く違うものに

2016年04月02日 13:44  アニメ!アニメ!

アニメ!アニメ!

「シュヴァルツェスマーケン」吉宗鋼紀×内田弘樹対談(後編)ー今までのロボットアニメとは全く違うものに
『シュヴァルツェスマーケン』は、地球外起源種・BETAの侵攻により絶滅の危機に立たされている人類があらゆる兵器を駆使し戦っている東ドイツを舞台にする。テレビアニメ化もされ、2016年1月より好評放送中である。
作中で鍵となるのは、東ドイツ軍最強の部隊 “黒の宣告(シュヴァルツェスマーケン)”とあだ名される第666戦術機中隊である。彼らは強力なレーザー照射を行う光線級BETAに対抗すべく、戦術「光線級吶喊(レーザーヤークト)」を駆使し、これに対抗していた。

『マブラヴ』の生みの親でもある吉宗氏と小説『シュヴァルツェスマーケン』の著者・内田氏の対談が実現。前編に引き続き、本作へかける思いやキャストについてなどを聞いた。
[取材・構成=細川洋平]

アニメ『シュヴァルツェスマーケン』オフィシャルサイト 
http://schwarzesmarken-anime.jp/
「シュヴァルツェスマーケン 1 (初回生産限定盤) [Blu-ray]」 2016年3月25日発売

■ 「光線級吶喊(レーザーヤークト)」という戦術の名前は内田先生が考えた

ー本作は「光線級吶喊(レーザーヤークト)」という戦術を第一目標とする東ドイツ軍第666戦術機中隊の生き様を描いています。

吉宗鋼紀(以下、吉宗)
「光線級吶喊(レーザーヤークト)」という戦術名は内田先生がつけてくれたんですよ。それまでのタイトルでも光線級吶喊戦術自体は描かれていましたが名称はなかったので、内田先生に敬意を表し、“東ドイツで初めて戦術として成功し体系化したため、世界中で「レーザーヤークト(光線級吶喊)」というドイツ語が正式な戦術名として採用された”という設定とし、当時放映中だったTVアニメ『TE』で、早速「レーザーヤークト」と呼称させました。これこそが多くのクリエイターの手を経ることで強度が増す実例ですね。

ー本作のアニメでも第1話から、「光線級吶喊」はスピード感溢れる戦術機の戦闘シーンとして描かれていました。

内田弘樹(以下、内田)  
「光線級吶喊」の描写に関して僕は、渡邊監督にそれほど詳しく説明していないんです。実際どんな絵になるんだろうと放送を見たら想像以上の仕上がりになっていて、唖然としました。「ここまで理解してもらってるんだ、すごい……!」って。

吉宗 
戦術機演出の大河広行さんは『TE』から引き続き担当していただいています。演出や技術の積み上げだけではなく、『TE』では時間的な都合出やりたくてもやれなかった細かい演出が再現されているんです。毎回オンエアで見ながら「ここまでやってくれるんだ!」って泣きそうになってます(笑)。


内田 
あれは僕もすごいと思いました! 減速する時の、跳躍ユニットをエアブレーキに使う第一世代機独特の動きなんかは本当に感動しました。

吉宗 
跳躍ユニットのエンジンはジェットとロケットモーターのハイブリッドですが、細かい使い分けを噴射炎の色で描き分けているんです!

内田 あのアイデアはさすがです。

ー細部まで行き届いた演出というのは監督はじめ、各セクションのスタッフたちの作品理解が深くないと難しいですよね。

吉宗 
渡邊監督は『君が望む永遠』のアニメ化でもお世話になったのですが、昔からこちらの要望を「そんなの無理だよ~」って言いながら、結局全部やってくれちゃうツンデレなんです(笑)。今回も時間も尺も余裕なんて一切無いはずなのに、いろんなシーンが制作中より格段にカッコよくなってます。小説本編7巻を収めるには1クールは非常に厳しい。それを我々の思いを汲みつつ、再構成してくださった樋口さんと渡邊監督、現場スタッフの皆さんのプロとして矜持には感謝しかありません。毎週、いち視聴者としてたのしませていただきながら、色々と学ばせていただいています。

内田 
アニメにしかないおもしろさがありますよね。いろんな描写を観る度に僕は「そうくるのか!」と驚かされていますよ。



■ 「マブラヴ」のヒロインには基準がある

ーメインキャストの印象もうかがわせてください。

吉宗 
テオドール・エーベルバッハ役の鈴村健一さんの声は和音(ダブルボイス)的で非常に印象的なうえ、少年から大人まで、純粋から性悪まで幅広い演技ができる方ですので、テオドールを引き受けて頂いてとても嬉しかったです。

内田 
スレた感じのテオドールをうまく演じていただいています。

吉宗
アイリスディーナはもっと低く大人系の声を想像された方も多かったようですが、『マブラヴ』シリーズのメインヒロインは繊細でクリアな声質にするよう心掛けています。18歳以下の普通の少女が「使命を負って無理している感じ」が欲しいので。山本希望さんは、アイリス役が決まった時、「本当に自分で良いの」って思ったそうです(笑)。さすがなのは、ゲームの音声収録やアニメのアフレコの回を重ねるたび、演技だけでなく、面倒見の良いお人柄も重なって、完全にアイリス=山本さんになったことですね。

内田 
僕はキャラクターに声があること自体が大感動なので(笑)。ただ、想像以上です。

吉宗 
カティアは最初イライラさせられるキャラクターなんですが(笑)、田中美海さんの声と演技、ラジオの収録現場で垣間見えるご本人の演技に対する真摯な姿勢やドジなところも相まって、いつの間にか「あれ? カティアかわいくね?」となってしまいましたね(笑)。


ーテオドールと血の繋がらない妹であるリィズ・ホーエンシュタインは南條愛乃さんが演じています。

吉宗 
南條愛乃さんには、アニメ、ゲーム共に主題歌でもお世話になっていますが、実はキャストでのオファーが先でした。繊細で危うげだけど芯がある声と深みのある演技が、ネガ・ポジ併せ持つリィズに生命を吹き込んでくれました。

ー政治将校、グレーテル・イェッケルン役は安野希世乃さんです。

吉宗 
声と演技の安定感に加えて、ゲームではかなりエキセントリックな演技もきっちり演じていただいています。その振り幅には良い意味で驚きました(笑)。

内田 
グレーテルは小説のスタッフにも人気が高いんですよ。僕の思い入れもすごく強いです。

吉宗 
アニメスタッフも相当ですよ(笑)。しょっちゅう髪型を変えるわ、メガネ外すわ、ポニテで変装するわ、ニヒルないい笑顔だわ(笑)。とにかく表情もよく変わるし、あの中で一番普通というか、中間管理職の悲哀が共感できる(笑)。

内田 
吉宗さんから見るとそうなるんですね(笑)。グレーテルは当初、場をかき乱す無能に描こうと考えていたんです。そうしたら吉宗さんたちに「『マブラヴ』はみんなが真剣に生きている物語だから」と言われて、じゃあ真剣に社会主義を愛しているキャラクターにしようと。


ーアネット・ホーゼンフェルト、安済知佳さんはどうですか。

内田 
小説ではアネットが一般読者の意志を反映するキャラクターだったんです。ごく普通の人間がああいう凄惨な場面に直面したらどうなるのか。一度は重圧に押しつぶされそうになったキャラクターが物語を通して変化していく人間のドラマを作りたかった。

吉宗 
感情的であり即物的でもある、とても人間的なキャラクターですが、安済さんの演技にはそれをキッチリカバーする器があります。特に1話のラリッた演技にはトリハダが立つほど感動しました。

■ 現場の熱量と気概、膨大な知識の集積とエンターテインメント

ーアニメ、ゲームの劇伴を担当しているEvan Callさんの音楽はいかがでしょうか。

吉宗 
Evanさんには最初に「ゲームをメインに、サウンドトラック形式のものにしてほしい」とお伝えしました。ゲームとアニメでは劇伴の文法が違うのですが、アニメ用に編集したEvanさんのスコアが作中で効果的に鳴ってますよね。Evanさんも、Evanさんを引き合わせてくれたエイベックスの田中さんにも感謝しかないです。

ーありがとうございます。それではクライマックスへ向けて、見どころをうかがってもよいでしょうか。

内田 
10話のリィズの最期。原作とは違うのですが、同じ意味合いを表現しています。また終盤はベルリン市街で戦術機の機動戦をやりますが、僕が「これがやりたかった!」ところですので、たのしみにして欲しいと思います。

吉宗 
ベルリン市街の戦術機の接近戦は、今までのロボットアニメとは趣の全く違うものになるんじゃないかなあという期待感があります。すごくたのしみです。

ーお二人はアニメへの深い愛がうかがえますね。

内田 
いや、本当に満足ですね。「対艦ミサイル過飽和攻撃」や「モスキート(P-270・対艦ミサイル)」「Tu-95(ソ連・戦略爆撃機)」がアニメにしっかり出たり、塹壕がちゃんとジグザグになってクロスファイア(十字砲火)ができるようになっていたり。すごく丁寧に作られています。エンターテインメントとしても成立しているので、僕はとてもうれしいです。

吉宗 
普通のアニメにはないものを出す、という気概ですよね。現場の熱量もそうですし、人の生き様を、目を逸らさずにやっている希有な作品だと思います。こういったものを届けると決め、一緒に戦ってくれたスタッフのみなさん、そして支えて下さったファンのみなさんにも感謝しています。これからもよろしくお願いします。





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2016年3月25日発売

【初回特典】
シュヴァルツェスマーケンスペシャルトーク&ライブイベント イベント優先申し込み券
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