2016年04月02日 10:02 弁護士ドットコム
厚生労働省が公表している最新の調査によれば、日本で離婚するカップルは年間22万2000件。2分22秒に1組が離婚届を提出しているペースです(厚生労働省「人口動態統計の年間推計 平成26年版」)。 この内、約90%のカップルが、当事者間の話し合いで離婚に合意する「協議離婚」をしています。
でも、離婚理由に納得できない、離婚の条件で折り合いがつかないなど、話し合いでは合意できないこともあるでしょう。弁護士ドットコムの法律相談には、「妻と離婚したいのですが、同意してもらえず困っています」という男性から、相談が寄せられていました。
子どもは2人。妻の育児放棄などから離婚を考えていますが、妻は話し合いにも応じず、離婚話が進められないため、このまま「離婚はできないのでしょうか?」と質問をしています。
話し合いでの離婚に合意できなかった場合、離婚の手続きはどのように進んでいくのでしょうか? 離婚問題に詳しい山口政貴弁護士に聞きました。
解説のポイント
・「協議」が無理なら「調停」へ。「調停」も成立しなければ「裁判」という流れ
・「調停」は裁判所で第三者を交えた話し合いのこと。綿密な書類作る必要はない
・「協議」と「調停」では、双方の合意がなければ離婚は成立しない
・「裁判」では、一方が納得しなくても離婚が成立する
Q. 「いきなり裁判を起こすことはできません」
そもそも、いくら離婚したいからといっていきなり裁判をすることはできません。法律上必ず調停を経た上でないと離婚裁判をすることができないのです。
なので、協議離婚ができず、それでも離婚したい場合には、必ず離婚調停を経ることになります。
具体的な手続きですが、調停は調停委員と言う、裁判官ではない民間の人間が2名選ばれ、この人たちが夫と妻の双方の話を聞きます。法廷のように一般公開されることはなく、小さい会議室のような部屋で、夫と妻とかわるがわる部屋に入って話を聞きます。
ですので、相手と顔を合わせることはありません。 調停は話し合いですので、双方が合意しなければ離婚は成立しません。その場合に初めて離婚訴訟を提起することができるのです。 費用面ですが、裁判所に支払う手数料(収入印紙代)は調停の場合は1200円、訴訟となると1万3000円です(請求の内容によっては増加する可能性あります)。
弁護士に依頼する費用は事務所によって異なりますが、おおむね20~30万円程度であると思われます。 時間面ですが、あくまでも目安にすぎませんが、調停の場合は早ければ2~3か月程度ですが、長くなると1年以上かかるケースもあります。
裁判の場合、争点が複雑でなければ7~8か月程度でしょうか。 裁判は公開の法廷で行われるので、調停と異なり一般人が傍聴に来る可能性があります。 また、調停ではほとんど口頭で説明すれば足り、適宜調停委員がサポートしてくれますので、綿密な書面を作る必要はありません。
一方で、裁判となると、法律の規定に則って綿密な書面を作って裁判所に提出しなければなりません。 ただ、裁判の場合は合意に至らなかったとしても裁判所の方で白黒はっきり(=離婚を認める、認めない)つけてくれるので、何らかの結論は確実に出されます。
【取材協力弁護士】
山口 政貴(やまぐち・のりたか)弁護士
サラリーマンを経た後、2003年司法試験合格。都内事務所の勤務弁護士を経験し、2013年に神楽坂中央法律事務所を設立。離婚、婚約破棄等を専門に扱っており、男女トラブルのスペシャリストとしても知られる。
事務所名:神楽坂中央法律事務所
事務所URL:http://www.kclaw.jp/index.html