トップへ

『ラヴソング』『ゆとりですがなにか』『OUR HOUSE』……必見の春ドラマを一挙紹介【前編】

2016年04月02日 06:01  リアルサウンド

リアルサウンド

期待の春ドラマまとめ前編

 桜の頃が過ぎ去れば、そろそろ春の新ドラマのスタートです。さて、今クールは、どのドラマを見ましょうか? ということで、今季もまた、これから続々と始まる新ドラマを、チェックしていきたいと思います。ちなみに今回は、「21~22時台」から始まるドラマをチェックする「前編」と、各局が続々と参入し、今や活況を呈し始めている「深夜ドラマ」をチェックする「後編」の2本立てでお届けします。それでは、「21~22時台」の連続ドラマから、ひと通り見ていくことにしましょう。


参考:『あさが来た』では玉木宏のお母さんに なぜ風吹ジュンは“母親役”で重宝される?


 まずは、連続ドラマの「花形」である、オリジナル脚本のドラマから。今クールでいちばんの注目作と言えば、やはりフジテレビの月9ドラマ『ラヴソング』(4月11日(月)21時~)になるのでしょうか。福山雅治にとっては、『ガリレオ』以来実に3年ぶりの連続ドラマ主演となる本作。そこで彼が演じるのは、元プロミュージシャンの男性です。一度は音楽の道をあきらめた彼が、才能溢れる若き女性ミュージシャンとの出会うことによって、再び音楽に向き合って行くという物語。そのヒロイン役に大抜擢されたのは、昨年デビューしたばかりの新鋭シンガーソングライター、ただし演技は未経験の20歳、藤原さくら(参考:月9『ラヴソング』に大抜擢、藤原さくらは“歌う女優”として大ブレイクなるか?)です。ドラマ『ガリレオ』シリーズや映画『容疑者Xの献身』(2008年)、『真夏の方程式』(2013年)などでも福山とタッグを組んできた演出家・西谷弘は、歳の離れたふたりの関係を、どんなふうに描き出してゆくのでしょうか。もちろん、ふたりとも実際にミュージシャンであるだけに、その演奏シーンにも期待が高まります。


 続いて紹介するのは、宮藤官九郎が脚本を書き下ろしたオリジナル作『ゆとりですがなにか』(4月17日(日)22時30分~/日テレ)。岡田将生、松坂桃李、柳楽優弥という、クドカン・ドラマ初主演となる3人が織りなすアンサンブルと、ヒロイン役に起用された安藤サクラ(!)の存在。さらには、彼ら1987年生まれ(という設定)の「ゆとり第一世代」を悩ます「ゆとり第二世代」として、吉岡里帆(のぶちゃん!)、島崎遥香(ぱるる!)、大賀(桐島の風助!)なども登場するようなので、こちらも注目です。それにしても、何気にクドカン初の「社会派ドラマ」と銘打っている本作。その「社会派」のニュアンスとは、果たしてどんなものになるのでしょうか。


 そして、同じく人気脚本家のひとりである野島伸司が久しぶりに書き下ろすオリジナル作品『OUR HOUSE』(4月17日(日)21時~/フジテレビ)。見慣れぬセーラー服姿に思わず胸がざわつく天才子役・芦田愛菜(この春から小学6年生)と、NHK連続テレビ小説『マッサン』でブレイクしたシャーロット・ケイト・フォックスという、予想もしなかったふたりが競演する本作。母が亡くなった後、12歳で一家を切り盛りする中学生・桜子(芦田愛菜)と、ある日父親(山本耕史)が交際ゼロ日で(ん?)再婚を決めた外国人女性・アリス(シャーロット)。そのふたりが罵詈雑言を浴びせ合う、壮絶なバトルが見どころでありつつも、基本的にはハートフルなホームドラマ。って、一体どんな話になるのでしょう。しかし、野島伸司の代表作と言えば、『ひとつ屋根の下』(1993年)。それと同じく、ひとつ屋根の下で暮らすふたりは、互いに衝突しつつ、どんな関係性を築き上げていくのでしょう。


 さらに、『ストロベリーナイト』(2012年)や『サムライせんせい』(2015年)などを手掛けてきた脚本家・黒岩勉のオリジナル作となる『僕のヤバイ妻』(4月19日(火)22時~/フジテレビ)も非常に気になります。伊藤英明演じるカフェ経営の夫が、木村佳乃演じる妻の誘拐事件に巻き込まれながら、やがて妻の本性を知るに至る……って、これ、半ば確信犯だと思うので言いますけど、デヴィッド・フィンチャーの映画『ゴーン・ガール』ですよね? いずれにせよ、今回のオリジナル作品は、いろいろな意味で「目が離せない」作品が揃っている印象です。


 そして、もはや連続ドラマの定番となった「漫画原作もの」。こちらで注目なのは、やはり『重版出来!』(4月12日(火)22時~/TBS)でしょう。現在公開中の映画『リップヴァンウィンクルの花嫁』をはじめ、若手演技派女優として映画界では引っ張りだこの黒木華が、満を持してドラマ初主演を果たすことも話題を呼んでいる本作。その舞台となるのは、とある漫画雑誌の編集部です。そこに新入社員として入って来た黒木演じる主人公が、松重豊、安田顕、オダギリジョー、荒川良々、坂口健太郎といった仲間たちと「重版」目指して奮闘する物語。昨年ヒットした映画『バクマン。』同様、編集者と漫画家の関係性など、漫画制作の知られざる裏側と、彼らの熱意が描き出されそうです。ちなみに、「出来」は「しゅったい」と読むので、そのへんお間違えのないよう。


  漫画原作と言えば、もうひとつ意外な漫画も今回ドラマ化されます。福士蒼汰と土屋太鳳がダブル主演を果たす『お迎えデス。』(4月16日(土)21時~/日テレ)。今から15年近く前に出版された田中メカの人気少女漫画『お迎えです。』を原作としつつも、それを今の世の中に合わせてヴァージョンアップしたという本作。この世に未練を残す幽霊たちを成仏させるという、謎のバイトを始めることになった大学生の男女……という基本設定は同じであるものの、そのエピソードは、かなり大人向きにアレンジされているようです。その翻案の手腕の程や如何。さらに、漫画原作ものとしては、立木早子の4コマエッセー漫画を原作とした、松下奈緒主演の婚活コメディ『早子先生、結婚するって本当ですか?』(4月14日(木)22時~/フジテレビ)というのもありますね。


 さて、恋愛に無頓着な独身教師が婚活に励むという『早子先生~』もそうですが、前クールで深田恭子とディーン・フジオカが共演した『ダメな私に恋してください』が当初の予想を越える人気を獲得するなど、「モテないアラサー/アラフォー男女の恋愛コメディ」は、今クールも依然として複数ラインナップされています。まずは、嵐の大野智が初めてラブコメ作品の主演に挑む『世界一難しい恋』(4月13日(水)22:00~/日テレ)。性格に難ありの若社長を演じる大野智はもちろん、その相手役をNHK連続テレビ小説『あさが来た』で一気にブレイクした波留が務めるなど、異色のキャスティングが話題の一本です。そして、もうひとつは、前クールの『わたしを離さないで』とは打って変わって明るい路線を打ち出した、TBSの「金10」枠、中谷美紀主演の『私 結婚できないんじゃなくて、しないんです』(4月15日(金)22:00~)です。アラフォー独身女医が、結婚目指して悪戦苦闘するというこの話。一見すると、こちらも意外なキャスティングですが、映画『嫌われ松子の一生』(2006年)で、身体を張ったコメディエンヌぶりを披露したこともある彼女だけに、ひょっとすると思わぬ注目作になるかもしれません。


  同じ「恋愛もの」でも、NHK総合「ドラマ10」枠でスタートする『コントレール~罪と恋~』(4月15日(金)22時~)は、やはり一味違います。詳しくは「後編」で書きますが、今クール、「ラブコメ」ではない「大人の恋愛もの」は、なぜか深夜帯に集中している印象があるなか、唯一この時間帯に登場する本作。同枠で放送され好評を博した『セカンドバージン』をはじめ、女性を描くことに定評のあるベテラン脚本家・大石静のオリジナル作であるこのドラマに主演するのは、石田ゆり子。そして、その相手役に井浦新を起用。夫を失った妻と、彼女の夫を死なせた男の禁断の愛……ということで、個人的にはこのドラマに、密かな期待を寄せていたりもします。


 そして、安心してください。テレビドラマの「王道」とも言える「警察もの」は、今クールも手堅く揃っています。今回で11シーズン目となる渡瀬恒彦主演の刑事ドラマ『警視庁捜査一課9係』(4月6日(水)21時~/テレ朝)。渡瀬の「バディ役」を務めるV6の井ノ原快人をはじめ、お馴染み「9係」の面々も勢ぞろいです。『相棒』に次ぐ長寿シリーズである本作と、4月14日(木)20時よりスタートする、内藤剛志主演の『警視庁・捜査一課長』で、「刑事ドラマのテレビ朝日」の面目躍如を目指します。一方、同じく「王道」のひとつである「医療もの」は、谷原章介が主演する『ドクター調査班~医療事故の闇を暴け~』(4月22日(金)20時~/テレ東)や、深夜枠に剛力彩芽主演の『ドクターカー』(4月7日(水)23時59分~/日テレ)があるものの、「21~22時台」には見当たりません。


  その代わりと言っては何ですが、今クールは「弁護士もの」が2本あります。嵐の松本潤が主演する『99.9 刑事専門弁護士』(4月17日(日)21時~/TBS)と、竹野内豊が主演する『グッドパートナー 無敵の弁護士』(4月21日(木)21時~/テレ朝)のふたつです。上司に香川照之、同僚弁護士に榮倉奈々を揃えるなど、手堅い布陣で臨む『99.9』。一方、「企業法務弁護士」を扱ったドラマとしては、今回が初となるという『グッドパートナー』。同じ「弁護士もの」とはいえ、かなり毛色の違う作品となりそうな2本だけに、それらを観比べてみるのも面白いかもしれません。


 ということで、ざっと駆け足で見渡した限り、今クールの「21~22時台」は、「サスペンスもの」よりも、「ホームドラマ」や「ラブコメ」など、比較的明るいイメージの作品が並んでいるように思われます。しかし、その反動なのか、「深夜の実験場」から、もはや「各局の主戦場」となりつつある「深夜帯」のドラマのラインナップは、それとはまったく異なるテイストのものとなっており……そちらは続く「後編」で、一気にチェックしたいと思います。(麦倉正樹)