2016年04月01日 19:12 リアルサウンド
3月17日、渋谷CLUB QUATTROにて『Awesome Talks Vol3』が開催された。『Awesome Talks』は、Awesome City Clubがホスト役を務める自主企画イベント。会場には、メンバーや関係者が持ち寄った物品をフリーマーケット形式で販売するスペースや、2ndアルバム『Awesome City Tracks 2』収録曲「Lullaby For TOKYO CITY」のMVを360度楽しめるVR機器の体感ブースなどが設けられ、ライブ以外にも楽しめる要素を詰め込んだ企画だった。
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1番手のシンリズムは、ギター、ベース、キーボード、ドラムを従えたバンド編成で登場。まずは「手のなる方へ」を披露し、達観した視点からの歌詞と18歳ながら円熟味を帯びたメロディで、観客を次第にリラックスさせていった。MCでは「この前卒業式があって、4月からは東京に来ようと思ってるんです」と神戸からの上京を報告し、ギターをテレキャスターに持ち替え「放人主義」を演奏。最後に、アコースティックギターを再び手に取り「心理の森」と「Music Life」を歌い上げ、ステージをあとにした。
2番手のAPOGEEは、フロアに緊張感を与えるほどクールな「OUT OF BLUE」から、サンプラー、シンセベースなどで不穏な雰囲気をつくり出す「Tonight」へ。3曲目「Twilight Arrow」と新曲「Higher Deeper」は、線の細いメロディアスなシンセサイザーと、リズムボックスのように正確な強さのドラムが特徴的な楽曲である。続けてバンドの人気曲「夜間飛行」を披露したAPOGEEは「最後にもう一曲新曲を」と前置きし、会場販売&配信リリース限定シングルから「RAINDROPS」を演奏。裏拍から入る歌メロとファンキーなリズムが絡み合う同曲で、観客を緩やかに踊らせた。
最後に登場したAwesome City Clubは、APOGEEが作ったムードを受け継ぐように、不穏なリズムの「Lesson」で幕を開けた。そこから「It’s So Fine」「4月のマーチ」と、ダンサブルな楽曲でフロアの空気は一変。MCを挟んでの「僕らはここでお別れさ」、「WAHAHA」や、後半を盛り上げた「アウトサイダー」、ラストを飾った「Lullaby For TOKYO CITY」と、『Awesome City Tracks』『Awesome City Tracks 2』収録曲から、幅広いジャンルの楽曲を見せつけてくれた。
そして、Awesome City Clubはこの日、2曲の新曲を披露。最初に演奏した新曲は、ストリングスを効果的に使ったアレンジが特徴的な、「アウトサイダー」の系譜上にある楽曲といえる。基本的にはatagi(Vo./Gt.)がギターを置き、マイクを手に取ってメインボーカルを務める同曲だが、PORINの歌うBメロ部分で効果的に使用されている転調に、90年代J-POP的なエッセンスを感じた。
もうひとつの新曲は、ライブ終了後に配信リリースした「Vampire」。PORINがメインボーカルを務める同曲は、シンセサイザーの使い方やサビのアイドルポップス感など、良い意味でこれまでの路線とは異なるアプローチが目立つ。同バンドの楽曲においては、ポップス方面に一番振り切れた曲と位置付けることもできるが、ライブではPORINのクールなキャラクターも相まってか、違和感なくセットリストに溶け込んでいた。
Awesome City Clubは音楽的教養の高いメンバーが集まっていることもあり、楽曲については元来振り幅の多いバンドだが、今回披露した2曲はその間口をさらに広げるようなものだった。彼らはこれらの楽曲を、今後どのようにブラッシュアップし、パッケージングしていくのだろうか。この日発表したワンマンツアーを含むバンドの次の展開に、期待の膨らむ一夜だった。
(文=中村拓海/写真=古渓一道)