3月31日、今シーズン全日本スーパーフォーミュラ選手権にDOCOMO DANDELIONから出場するストフェル・バンドーンが、急遽フェルナンド・アロンソの代役としてマクラーレン・ホンダからF1バーレーングランプリに出場することが決定した。バンドーンの出場までの顛末と、岡山に残ったバンドーンを良く知る人物の期待の言葉をお届けしよう。
31日からスタートした岡山国際サーキットでのスーパーフォーミュラのテストに参加していたバンドーン。出場決定の報を受け岡山県美作市からバーレーンに向かったが、実は事前からある程度、F1への急な移動も視野にあったようだ。
「ひょっとしたらF1の現場に早めに行かなければならないという可能性もあったので、もともと初日で切り上げるパターンと、2日間走るパターンと両方考えて飛行機のチケットは準備していました」とDOCOMO DANDELIONの関係者が語る。
「結局初日のみでこちらのテストを終え、バーレーンに向かうことになったのですが、たまたま岡山にも来られていたホンダの新井康久さんも初日が終わったところでバーレーンに行くことになっていて、ストフェルとフライトも同じだったんです」
「なので、新井さんが運転するフィットの助手席にストフェルを同乗させてもらって岡山空港に行き、そこから羽田に飛びました。羽田でトランジットして、ドバイに飛び、さらにバーレーンに行きました」
●岡山に残ったストフェルの父
そんなドタバタの状況でバンドーンはバーレーンに旅立っていったが、公式テスト2日目を迎えた岡山では、DOCOMO DANDELIONのピットの中にひとり残されたバンドーンの父、パトリックさんが……。
てっきり息子のF1デビュー戦のために、一緒にバーレーンに行くのかと思いきや、コースサイドなどでスーパーフォーミュラの走りを真剣に眺めていた。そんなパトリックさんに、今回のストフェルのF1デビューについて話を聞いた。
「もちろんデビューのニュースを聞いた時はハッピーだったよ! だけど、昨夜は携帯の電源をオフにして寝たんだ。日本とヨーロッパは時差があるから、きっと日本の夜中にいっぱい連絡が来るだろうなと思ってね」とパトリックさん。
「起きて電源をオンにしたら、着信とかテキストメッセージとか、250件ぐらいあった。Facebookも大変なことになっていたよ(笑)。でもね、僕はちょうど帰りの飛行機に乗っているタイミングだから、予選は見られないんだ」
「なんでバーレーンに行かないのかって? だって、たった1日のためにバーレーンに行くのに払う飛行機のチケット代が高くてもったいないじゃないか。だから、最初の予定どおりにベルギーに帰って、日曜日のレースはテレビで観るよ」
「でもね、妻と娘は、いま休日でニューヨークの祖母の家に遊びに行ってしまっているんだ。ベルギーとニューヨークではやっぱり時差があるから、ちょっと電話で話すくらいしかできない。だから、決勝の時は近所の人たちと一緒に観る。ウチの町にはストフェルの応援団があって、きっとそこの人たちがウチに集まってくると思うんだ!」
●父は建築家。息子のF1デビューの夢かなう
ニコニコ笑いながら話してくれたパトリックさんは、あくまでも庶民派。ちなみに、今回来日するために乗った飛行機のシートもエコノミークラス。ストフェルがバーレーンに行ってしまった後に岡山に居残りをしたのも、もともと予約していたチケットを1日前のものに振り替えると、追加料金が発生してしまい、それが「もったいない」からなのだそうだ。
そんなパトリックさんの仕事は建築家。彼が20年ほど前、レーシングカートのコースと付帯設備を設計したことが、ストフェルのキャリアの始まりとなった。
「ストフェルが4歳か5歳のころ、僕がデザインしたそのカート場に連れていったんだ。そうしたら、コースのオーナーがストフェルに『カートに乗ってみるかい?』と言って乗せてくれたんだ。そこから夢中になったんだよ」とパトリックさん。
パトリックさん自身、もともとフォーミュラカーレースの大ファン(フォーミュラ以外は興味ないのだそう)だったということで、息子がF1ドライバーになることは大きな夢だったのだという。
ところで、今回初来日してスーパーフォーミュラの走りを見た、フォーミュラ好きのパトリックさんの感想はどんなものだったのだろうか!?
「すごくいい選手権だよね。まずクルマが素晴らしい。コーナリングスピードが高くて、GP2等と比べてダウンフォースがはるかに大きく、タイヤのグリップも高い。ストフェルも『コーナリングスピードが高くて、けっこう首に来る』って言っていたよ。『F1と比べてもコーナリングスピードは高いかも』ってね」。
だとすれば、昨日のスーパーフォーミュラテストが、F1デビューに向けてのいいトレーニングとなったのだろうか。日本の期待も受けて、バンドーンはF1デビュー戦に挑む。