2016年04月01日 11:22 弁護士ドットコム
自分名義の土地の上に「毒母」名義の家が建っていて、売却できない。Yomiuri Onlineの「発言小町」に、ある女性(トピ主)が相談を寄せました。
トピ主によると、売却したいのは、祖父が自分名義の土地をトピ主名義に変更した土地。そこには祖父名義の家が建っていましたが、今回、祖父が亡くなり、「一人娘である私の毒母が(家屋を)相続しました」といいます。
トピ主は「固定資産税を支払うことになるので、都内で近い将来マンション購入したい」と語り、値のつくうちに早く土地を売却したいそうです。しかし、土地の上には母親が相続した家が建っており、トピ主の意思だけでは売却できないといいます。
そこで、母親に「3か月以内に建物を壊して更地にすること」、それがいやなら「毎月20万円の地代を払え」と言うことができるのか、と質問しています。
レスには、「毒親であろうと、建物を相続した人に『更地にしろ!』は横暴過ぎます」と、トピ主に批判的な意見が相次ぎました。「一番いいのは、トピ主さんがその家を買うこと」という指摘も見られました。
トピ主は、「そのまま放置すると、誰も住まないゴミ屋敷化するのは目に見えており、結局、毒母の死後に相続人である毒父、妹、私で処分しなければならなくなります」といい、売却を強く希望しています。
トピ主の言うように、母親に対して「更地にしろ」もしくは「20万円の地代を払え」と要求することははたして可能なのでしょうか。関戸 淳平弁護士に話をききました。
(この質問は、発言小町に寄せられた投稿をもとに、大手小町編集部と弁護士ドットコムライフ編集部が再構成したものです。トピ「自分名義の土地の上に建つ他人名義の建物」はこちらhttp://komachi.yomiuri.co.jp/t/2016/0223/752376.htm?g=15)
Q. 土地の明け渡しを求められる可能性がある
トピ主さんは、母親に対して、「土地の明渡し」や「地代相当額の支払い」を請求できる可能性があります。 まず、トピ主さんと祖父との間では、土地の「使用貸借契約」(タダで土地を借りる契約)が存在したと考えられます。
しかし、民法では「使用貸借契約」は借主の死亡により終了するとされています。
したがって、祖父が亡くなった時点で、トピ主さんと祖父との、タダで土地を借りる契約は終了したと考えられます。 つまり、母親は建物を相続したからといって、当然にそのまま土地をタダで使用する権利はないのです。
なお、状況次第では、トピ主さんと母親の間にも「使用貸借契約」が認められることがありえます。
しかし、この場合も、母親が建物を使用せず放置しているようなときは、契約終了を主張し、母親に対して土地の明渡しを求めることができると考えられます。 また、母親との関係が険悪であるならば、それを理由に契約を解約できる可能性もあります。
最近の裁判例でも、親が子にタダで自宅の敷地を提供した後に親子関係が悪化したというケースで、「無償性を前提とする円満な親子関係や相互の信頼関係は破綻しており、本件契約の前提となる事情が失われている」として、解約を認めたものがあります。 なお、母親が不当に明渡しに応じない場合には、地代(相場)相当額の損害賠償を請求できると考えられます。
【取材協力弁護士】
関戸 淳平(せきど・じゅんぺい)弁護士
中央大学法学部卒。2004年弁護士登録(横浜弁護士会)。2009年より横浜ユーリス法律事務所パートナー。不動産売買、賃貸、マンション問題、相隣問題等、不動産に関連する事件を数多く手がけている。
事務所名:横浜ユーリス法律事務所
事務所URL:http://www.jurislaw.jp/