2016年03月31日 15:41 リアルサウンド
FEMMが3月26日、神奈川・DMM VR THEATERにて行われた新イベント『VRDG+H』に出演した。
同イベントは、サカナクションやavengers in sci-fi、KANA-BOONらの所属事務所、またLITEやPredawnらのレーベルでもある<HIP LAND MUSIC>と、電子音楽イベント『BRDG』とのコラボレーションによるもの。「インタラクティブ」「インターナショナル」をテーマにクリエイターをプロデュースする新事業の一環として、映像と音楽による新たな表現の追求を目的とするイベントだ。
会場に詰めかけたオーディエンスは世代は様々、しかし男女ともにアートやカルチャーへの興味・関心が高い印象を受けた。アーティストの転換中にはステージを覗き込み、映像演出の仕組みに興味を示す様子もうかがえた。
会場となったDMM VR THEATERは、最新鋭の3DCGライブホログラフィック施設である。2015年オープン時のこけら落としでは、hideの姿を3Dでステージ上に甦らせ、ライブを開催したことも記憶に新しい。場内はシアター式で、椅子に座りながらゆったりと映像を鑑賞することができる環境が整っている。
この日はFEMMの他に、Keijiro Takahashi × DUB-Russell、Akihiko Taniguchi、DAIMAOU × wk[es]、HEXPIXELS × KEIZO machine!(HIFANA)らが出演。音楽・映像を生み出すアーティストたちがコラボレーションし、ホログラフィック映像を用いて、それぞれの特長を生かしたパフォーマンスを展開した。
ここで、FEMMについて簡単に紹介したい。FEMMとは、FAR EAST MENTION MANNEQUINSの通称で、“意思を持つマネキン”RiRiとLuLaからなるダンス&ラップ・デュオ。2016年2月にはメジャーデビューEP+AL『PoW! / L.C.S. +Femm-Isation』をリリースした。2014年にYouTubeで発表した「F××k Boyz Get Money」が欧米をはじめ海外で注目を集め、現在日本でも各イベントやファッション誌で活躍。カルチャーアイコンとしても、各所から大きな関心を集めているデュオなのである。
さて、FEMMのパフォーマンスの時間が近づくと、暗闇のままのステージに、複数の人間がメイド服の2体のマネキンを抱えて登場。それぞれをステージの左右に配置した。そう、このマネキンこそがFEMMである。大音量のSEが鳴り始めると、FEMMはまるでその音楽によって生を受けたように動き始める。
今回のステージはDaihei Shibataとのコラボレーションで、FEMMのパフォーマンスを盛り上げるホログラフィック映像が全編に渡って用いられた。Boys Noizeプロデュース曲「L.C.S.」ではモーションキャプチャーの撮影風景をモチーフとし、3DのキャラクターとFEMMの二人が一緒にダンスをしたり、「Kill The DJ」では「ダンスダンスレボリューション」を想起させるゲームの世界にFEMMが入り込んだような演出が取り入れられた。
新曲「circle」ではLil'Fang(FAKY)とYup'inがゲストシンガーとして登場。パーティーチューンが続くパフォーマンスの中に突如妖艶な雰囲気を漂わせた同曲は、サウンドや言葉の響きに和のテイストを感じる日本語詞による楽曲だ。ステージ上に、歌詞に登場する文字がホログラフィックにより有形物となって浮かび上がる。歌われた文字が次々と落ちてそのまま床にたまったり、また宙を舞ったりするのが趣深い。後半では、桜の花びらのように「桜」の文字がひらひらと舞い散る中、Lil'Fang、Yup'inとともにFEMMが歌唱する一幕も。楽曲における「言葉」(日本語・漢字)の存在が、FEMMの楽曲の新たな一面として印象づけられるものとなった。
最後は代表曲「F××k Boyz Get Money」を披露。特徴的な腰つきのダンスを全面に押し出した映像と振付で強烈なインパクトを残し、パフォーマンスを終えた。音楽が止み照明が消えると、FEMMは元のマネキンの姿に。スタッフに撤去されるようにしてステージを去っていった。
FEMMは洋服を着せ替えるためのマネキンではなく、さまざまなテクノロジーやクリエイターが生み出すアート・カルチャーを自在に着せ替えることができるマネキンと言えるだろう。今回のパフォーマンスを通して、FEMMには表現の可能性が無限に広がっていると感じた。“日本製マネキン・ダンス&ラップ・デュオ”の日本でのますますの活躍に注目していきたい。(取材・文=久蔵千恵)