FIAのF1レースディレクター、チャーリー・ホワイティングは、今季から導入された無線交信のルールが「ドライバーとのコミュニケーションを制約しすぎで、安全面でのリスクがある」との主張を受け入れない姿勢を示した。
2016年の開幕を前に、FIAは「ドライバーは援助を受けずに単独で車両をドライブすること」と定めたスポーティングレギュレーション第27.1項を厳格に適用することを決めていた。
開幕戦オーストラリアGPで、メルセデスはレースウィナーのニコ・ロズベルグがブレーキ温度とタイヤ摩耗の問題からリタイアの危機に瀕しながら、それをドライバーに伝えられないという困難な状況に直面した。これに関してチームボスのトト・ウォルフは、そうしたコミュニケーションの欠如が「危険な状況につながるのは間違いなく、それに対してエンジニアは何もできない」と不満を述べていた。
だが、ホワイティングは英AUTOSPORTに、「そうしたことはすべてダッシュに表示できる」と語っている。
「安全性の観点から重要な情報は、クルマのダッシュパネルに表示できるのだから、チームはつねに適切な情報が表示されるようにしておくべきだ。要するに、無線に頼らず、いろいろな設定を細々と指示しないでもレースができるように、チームとドライバーが対応していけばよいことであり、今後はそうなっていくだろう」
ホワイティングは、オーストラリアの決勝当日にも一部変更されたこの新しいルールが、赤旗中断という厄介な状況があったにもかかわらず、初戦からまずまずの効果を上げたと考えているようだ。
「私個人としては、バランスの良いルールになったと思っている。レースが中断されたときには、いくつか技術的なトラブルもあったがね。燃料流量の計算値の多くがリセットされなかったりして、そうした問題についてチームと協力しながら対処する必要があった」
「問題を解決するために、一部のチームは無線でドライバーにある操作をするよう指示した。これは本来ならルールに違反することだが、すべてFIAと相談しながら行われたことなので問題はない」
また、ロズベルグによれば、無線交信の制限はF1にとって正しい方向への一歩だという。
「このルールによって、レース中に僕らが自分で判断すべきことが増えたのは間違いない。ドライバーにとって楽ではないが、それは良い意味でのチャレンジだ」
「何よりも重要なのは、ファンもそれが正しい方向だと考えていることだろう。これが彼らの望んでいたことなのだと思う。ドライバーが無線であれこれ指示されるのは、見ている方も興ざめだと言われていたからね」