ルノーのマネージング・ディレクターを務めるシリル・アビテブールは、現在F1で採用されている燃料搭載量に上限を設けるルールが、パワーユニット技術の肯定的な部分を「台無し」にしていると考えており、規定の撤廃を求めている。
1.6リッターV6ターボ、ハイブリッドシステムのパワーユニットは、レース中の燃料流量が1時間あたり100kg、使用できる最大量は100kgまでと規定されている。この上限を撤廃するか否かの議論は進行中であるが、メルセデスが反対派であるのに対し、ルノーは賛成派と意見が分かれている。
アビテブールはルノーの立場を以下のように説明している。
「F1がF1であることを強く望んでいる。耐久レースのようになっていくべきではない。F1と耐久レースを組み合わせようとする動きが、F1を危機に陥れたり、脅威になっていたりする。耐久レースは効率や持久力といった、長い距離を問題なく走るレースだ。F1は短い距離を走り、コンスタントにアタックするレースだ」
「率直に言うと、V8の時代にも燃料のマネジメントはあった。それは戦術のひとつであり、レース中にチームの戦略を利用してラップタイムを最大限に短縮させるためのものだった。燃料の使用量に関する規定が何もなかったころ、これはF1の戦い方としては普通のことだった。だから私は燃料搭載量の規定を完全に撤廃することを望む」
燃料搭載量の上限撤廃によってドライバーはより頻繁に、長い時間に渡って攻めた走りをすることができ、批判の多い燃料を節約した走りを避けられるとアビテブールは考えている。
「(規定の廃止は、パワーユニットの)新しい技術への、否定的な意見を取り払ってくれると思う。我々は素晴らしい仕事をしている。メルセデスなどは特にそうだが、エンジンの使い方に関して言えば燃費を30~40%向上させたことで、全メーカーが高く評価されるべきだ。驚くべき技術だが、燃料の上限規定のせいで、この素晴らしさも燃料マネジメントの一環だとみなされてしまう」
アビテブールは開発競争を避けるうえで燃料流量の規制は重要であり、残すべきだと述べている。
「燃料を燃やして電気モーターを動かすような、不自然な仕組みを作り出さないことも確認する必要がある。それは我々が提唱するものとは真逆のものになる。燃料流量(規制)は十分に効果的だが、燃料搭載量の上限は不要だ」
意見の一致を見るかどうかは不明だが、アビテブールは考え方に相違がある状態は健全だと話す。
「これは(エンジンメーカーである)我々が、エンジンに関するレギュレーションを通して競技全体を支配していないことの、好例だ。少々の反対意見はつきものだ。私は私自身の意見を主張するし、トト(ウォルフ/メルセデス・モータースポーツのトップ)もまた彼の意見を主張する。簡単なことだし、投票はこれからだ」