2016年03月30日 10:31 弁護士ドットコム
婚姻届を提出せず、一緒に暮らすカップルには、「なんとなく同棲している」「いずれ結婚するつもり」「このまま事実婚としてやっていく」など、様々な理由があります。しかし、こうしたカップルが別れる時には、普通の夫婦と同じようなトラブルに直面することもあるようです。
「事実婚状態の彼女に浮気がバレた」という男性から、弁護士ドットコムの法律相談コーナーに相談が寄せられました。6年前から彼女と同棲していたという男性。
「『そろそろ入籍したいね』という話が出ていた矢先、私の浮気がバレ、彼女が激怒してしまいました。関係を解消することになりましたが、彼女から慰謝料請求されています。拒否できませんか?」
事実婚の彼女から請求された慰謝料を、拒否できるのでしょうか。岩島のり子弁護士に、詳細な解説をしていただきました。
A. 「内縁関係」が成立していれば、慰謝料請求が認められる可能性が高い
同棲中の彼女と「事実婚状態」だったそうですが、浮気による関係解消にともなう慰謝料請求が認められるためには、ご相談者と彼女の間に、「内縁関係」が成立しているかどうかが重要です。 内縁とは、実際に夫婦同様の生活を営み、社会的にも夫婦として認知されているが、婚姻届を出していない男女の関係です。判例でも、内縁を「婚姻に準ずる関係」と認め、貞操義務や婚姻費用(生活費)の分担義務、関係の不当破棄への慰謝料などについて、法律婚とほぼ同様に認めてきました。
内縁関係成立のためには、二つの条件をクリアしなければなりません。「夫婦同様に暮らしていく意思があること」と、「夫婦生活の実態があること」です。
ご相談者は、六年にわたって同棲する中で事実上の夫婦関係を営み、入籍の話もあったそうですから、内縁関係が成立していたと言えるでしょう。浮気によって内縁関係が解消された場合は、彼女からの慰謝料請求が認められる可能性が高いと考えられます。
なお、「事実婚」という言葉は、内縁とは違う意味で用いられることもあります。例えば、主体的な意思で婚姻を回避した婚外関係を、「事実婚」と表現するケースです。
このような意味での「事実婚」についても、内縁に準じた取扱いをするのが一般的でした。しかし、平成十六年十一月十八日の最高裁判決は、別の判断を下しました。このケースでは、双方合意の上で「パートナーシップ」と呼ぶ関係を約十六年間続けてきた男性が、別の人と結婚するため、関係を解消。相手の女性は、一方的に関係を破棄され精神的苦痛を受けたとして、男性に慰謝料請求しました。
ところが、最高裁は男性への慰謝料請求を認めませんでした。これは、当事者が婚姻を回避するために、「パートナーシップ」という関係を結んだことが明確で、さらに住居も生計も別にしているといったことから、共同生活の実態がないと判断されたためです。
社会一般で「事実婚」と表現される関係も、その実態は多様です。内縁のように「婚姻に準ずる関係」とされ、どこまで法律の保護が及ぶのかは、ケースごとに大きく異なりますので、注意が必要です。
【取材協力弁護士】
岩島 のり子(いわしま・のりこ)弁護士
早稲田大学法学部卒業、平成4年弁護士登録。離婚問題を中心に多くのご相談を受けている。長年の経験を活かし、相続や債権回収、医療過誤など一般民事事件に幅広く対応。
事務所名:岩島のり子法律事務所
事務所URL:http://iwashima-rikon.com/