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Mardelasが示したヘヴィメタルとバンドの未来 キネマ倶楽部ワンマンをレポート

2016年03月29日 18:51  リアルサウンド

リアルサウンド

写真=TAPPEI

 Mardelasが、2ndアルバム『Mardelas Ⅱ』を6月15日にリリースすることを発表した。同作の制作状況とリリース決定については、2月11日に行われたワンマンライブ『Mardelas Premium One-man Show 会場限定シングル発売記念 -Snake to Revive-』でいち早くアナウンスされており、今回リアルサウンドではそのライブレポートを掲載。音楽ライターの早川洋介氏が、ライブにみるバンドの音楽性、その活動スタンスなど、新作『Mardelas Ⅱ』に向かうMardelasの現在地を探った。(編集部)


 女性シンガーを擁する正統派/技巧ヘヴィ・メタル・バンドのMardelasが、会場限定シングル『Snake to Revive』発売記念として、2月11日に東京キネマ倶楽部でライブを行なった。同シングルをはじめ、これまでリリースした作品(アルバム『MardelasⅠ』とシングル『千羽鶴 -Thousand Cranes-』)を網羅したセットリストで構成され、バンド内の良好なテンションも終始感じられるステージだったといえるだろう。


 ドラマティックなイントロを導入にして激走する「Eclipse」でライブはスタートし、そのハードなサウンドに煽られるように、巻き髪姿も麗しいビジュアルの蛇石マリナ(Vo)はエクストリーム・メタル・バンドを彷彿とさせる扇風機ヘドバンを披露。さらに、武器である強烈なビブラートを効かせたシャウトも冒頭から轟かせてオーディエンスを圧倒した。


 続く「4 Dice」もオーセンティックなメタル・リフから始まるナンバーで、黄×黒のド派手な虎柄Vシェイプ・ギターを操る及川樹京(G)は、ワウを使い情感溢れるソロをキメる。若きギター・ヒーローといった風情の彼はテクニカルでありつつも、フロアを見やり、笑顔を交えて表情豊かに“顔で弾く”タイプのギタリストでもある。メタルを愛する一方で、PENICILLINのギタリスト=千聖をフェイバリットの一人に挙げており、“魅せる”ことの重要性も心得ているのがいい。


「Yumiさん(弓田“Yumi”秀明/Ds)が加入して1周年。今日はプレミアム・ライブということで、Mardelas史上最長の濃い中身になります」


 と、2016年一発目のステージが熱い中身になることを最初のMCで伝えたマリナ。次いでプレイされた「千羽鶴 -Thousand Cranes-」でも躍動感あふれる演奏が光るが、涼しい顔をして指弾きで5弦をさばくhibiki(B)のプレイがまた巧みで、その若さとは裏腹に彼はLIGHT BRINGERやALHAMBRAといった凄腕揃いのバンドでキャリアを重ね、近年は札幌の重鎮=SABER TIGERのサポート・メンバーに抜擢されるほどシーンでの評価は高い。そして彼とリズム・セクションのタッグを組むYumiも、SABER TIGERなどを経てhibikiと共にLIGHT BRINGERで活動してきただけのことはある、力強く安定したドラミングをキープ。樹京含めて、実に魅力的なインスト・チームが出来上がっているのである。


 また序盤に登場した「DEEP-G」や、Mardelasのなかで最もポップ・サイドに位置する「Waves」は歌謡性も感じさせ、マリナは突き抜けるキャッチーなメロディをナチュラルに歌い上げる。喰らいつくようなメタリックな唱法がなくても充分な存在感を放つ、普遍的なシンガーとしての魅力を見せつけた瞬間だった。


 曲の合間には2016年の目標をメンバーが話す場面があり、Yumiが自身のオリジナルグッズ制作の野望を語れば、hibikiは“何も考えず、のほほんと過ごす”とマイペースぶりを披露。続いて樹京が“今年は周囲の顔色を伺わず、自分の殻を破る”と言うと、マリナが“私のこと言ってる?”と即座に反応する(笑)。続けて、“私は万人に好かれようと思って生きてないもん”と飾らないキャラを全開に。


 しかし、その一方で彼女は“(各メンバーがこれまで活動してきたバンドがあることを受けて)きっと、それぞれのバンドのファンだった人たちがいるのに、こうして集まって一緒にMardelasを応援してくれている。こういう雰囲気を大事にしながら、今年はさらにこの輪を大きくしていきたい。「Waves」の歌詞にあるように、〈キミが笑うなら〉2016年は走り抜けたいと思います”と、真摯な想いをファンに届けていた。


 後半戦は、DESTROSE(過去にマリナが在籍)時代の曲をリメイクした会場限定シングル収録曲が連打され、その後、今年6月に2ndアルバム『MardelasⅡ』をリリースすることを発表。タイトル未定の新曲もいち早く披露し、そのドラマティック・スピード・メタル的要素を含むナンバーはオーディエンスの期待を高めたはず。


 ギター・ソロやドラム・ソロ、Yumiによる怪談風味(?)の漫談、メンバーの私物プレゼント・コーナー、メンバーから樹京への誕生祝いなどもある盛りだくさんな内容となったこの日。そして、最後の曲であるアンコールの「Sword of Avenger Ⅱ」でマリナは舞台下手の高い位置にあるバルコニーに上がり、hibikiはフロアに降りてオーディエンスの間を歩きながらプレイする熱演を見せる。とにかく全編通してメンバー自身が楽しんでおり、それは観る者にも伝播するのだ。
 少女の無邪気さと大人の妖艶さを併せ持ち、独自のボーカリゼイションを誇るマリナをあくまで中心に据えつつ、同時にそれぞれのポジションで自己主張は欠かさない楽器隊…という絶妙なバランスでMardelasが形づくられていることが分かるライブだった。


 もちろん、このバンドの大きな魅力として、“正統的なメタルの旨味やカッコ良さを分かりやすく伝えてくれる”ということがある。ギター・リフひとつとってもそう感じるのだが、終演後にそれを樹京に言うと、“この文化は絶やしちゃいけないと思ってるんです”と熱っぽく話してくれた。それぞれが過去に様々な経験をして学んできたからこそ、メンバーは自分たちがやるべきことを把握し、強い志のもとMardelasを動かしている。1stアルバムのリリースから約1年の間で得た糧が今後にどう生かされていくのか、ここからが勝負であり、その未来を見守りたい。(文=早川洋介)