2016年03月29日 11:52 弁護士ドットコム
昨年1年間に全国の警察が把握したDV被害は、6万3141件にものぼることを今年3月、警察庁が公表しました。12年連続の増加で、2001年のDV防止法施行以降で初めて、6万件をこえる最多となっています。
DVは、命にかかわる重大な事件に発展する可能性もあります。もし結婚している女性がDV被害にあってしまったら、どんな対応ができるのか。また離婚する場合には、どのように手続きを進めていけばよいのでしょうか。
川見 未華弁護士に詳細な解説をしていただきました。
Q. 別居して安全を確保してから離婚手続きを進めましょう
DV(ドメスティック・バイオレンス)とは、婚姻関係、婚約関係や恋愛関係など、親密な関係のパートナー間における暴力です。殴る・蹴るといった身体的暴力に限らず、怒鳴る・無視をするといった精神的暴力や、性行為の強要・避妊に協力しないといった性的暴力、生活費を渡さないといった経済的暴力も含まれます。
DVに悩む方は、まず、配偶者暴力支援センターに相談して下さい。被害の相談対応のほか、緊急時には、被害者や同伴する家族の一時保護などの援助も受けられます。DVを受けた時は、迷わず警察に通報し、保護を求めて下さい。ただし通常、警察の援助を受けられるのは、身体的暴力の場合です。
DV夫であれば、離婚を切り出しただけで逆上することが予想されます。
別居した方が、離婚の話合い(手続)を進めやすいでしょう。別居後も、夫から生命又は身体に重大な危害を受けるおそれが大きい場合は、DV防止法に基づく保護命令(接近禁止命令等)を申し立てることもできます。
別居をする際には、ある程度の現金や妻子名義の預金通帳など、必要な物は持ち出した方がよいでしょう。また、DVがあったことを証明する資料(DVにより負った傷の診断書や写真、DVを受けた際の録音データ、日記、DVを他人に相談したメール記録など)があれば、持ち出して下さい。
身の安全と生活拠点が確保できたら、離婚手続を進めます。夫が離婚に応じない場合には、離婚調停、調停でも合意できなければ、離婚訴訟をすることになります。 離婚請求と共に、精神的損害を負ったことを原因として、慰謝料を請求することもできます。
裁判では、離婚原因や慰謝料について、DVの内容や被害の程度、原因などを総合的に判断して決められます。「夫から一度だけ平手打ちをされた」という内容では、DVの程度としては弱いと判断されるでしょう。裁判で立証するために、できる限りのDVの証拠を集めておくことも大切です。
DVを受けた場合、離婚に向けた準備や進め方については、注意すべき点があります。行動を起こす前に、一度、弁護士に相談されることをお勧めします。
【取材協力弁護士】
川見 未華(かわみ・みはる)弁護士
東京弁護士会所属。家事事件(離婚、DV案件、親子問題、相続等)及び医療過誤事件を業務の柱としながら、より広い分野の実務経験を重ねるとともに、夫婦同氏制度の問題点を問う別姓訴訟弁護団や福島原発問題に関わる浪江町支援弁護団等、社会問題に関する弁護団にも積極的に取り組んでいます。
事務所名:樫の木総合法律事務所
事務所URL:http://kashinoki-law.jp/