2016年03月28日 12:42 弁護士ドットコム
離婚にあたって大きな問題となるのが、子どもをめぐる取り決めです。夫と妻のどちらが親権を取るのかということに加え、養育費の金額などについて決める必要があります。 弁護士ドットコムの法律相談コーナーには、「元妻に、養育費を追加で支払えと要求された」という男性が相談を寄せました。
「子どもが大学に入るにあたって、入学金20万円を半額負担しろと請求されました。毎月、養育費として4万円を支払っているのですが、養育費以外の請求にも応じる義務はあるのでしょうか?」
養育費を決めた時から年数が経てば、子どもの進学や親権をもつ親の経済状況などが変わる場合もあるでしょう。養育費の追加請求に応じる義務はあるのでしょうか。加藤寛崇弁護士に、詳細な解説をしていただきました。
A. 入学金などの教育費は、「養育費」に含まれていることが一般的
結論から言うと、入学金や塾通いの費用は、当初取り決められた「養育費」に含まれていることが一般的です。追加や増額の請求が認められる可能性は低く、ご相談者は元妻の請求に応じる義務はないと考えてよいでしょう。
養育費は、離婚にあたって、子を引き取らなかった親(非監護親)が、親権者となった親に支払うお金です。当事者同士の話し合いだけでは決着がつかない場合、裁判所に、金額や支払い期間を決定してもらいます。その際に多く用いられるのが裁判所で用いられる算定表で、これは標準的な教育費も含めて生活に必要な諸費用の負担を考慮して定められたものです。
ですので、一般的には、裁判所で養育費として定められるお金には、子どもの教育費など生活に必要な費用は全て含まれています。 裁判所を通さず、当事者同士で取り決めをした場合も、教育費は別だという合意をしていたというようなことがない限り、同様に考えられることが多いでしょう。
非監護親は原則として、養育費として取り決めた額さえ支払えばよく、それ以外の請求に応じる必要はない、ということになります。
もっとも、子どもの監護に必要な費用は様々な事情で変化します。
そこで家庭裁判所は「必要があると認めるときは」当初取り決めた養育費の額を変更(増減)できるとしています。ただし、養育費の変更が認められるためには、二つの条件を満たす必要があります。
まず一つめの条件は、「養育費を取り決めた時から事情が変わって、従来の額が不相当になったこと」です。具体的には、親権者もしくは非監護親の収入の増加や減少、非監護親の再婚などです。
ただ、事情の変更は従来の養育費を取り決めた時には、「前提とされていなかった」ものである必要があります。これが二つめの条件です。たとえば、近い将来、非監護親の収入が減少する可能性を考慮して養育費を取り決めた場合には、減額は認められないでしょう。
また、二つめの条件は、「予測できなかった事情変更である」という要素が必要だと判断されたケースも少なくありません。非監護親の再婚を理由とした減額について、養育費を取り決めた時点で再婚予定があるとわかっていた場合には、認められない可能性があります。いっぽう、子どもが重い病気になり、多額の医療費が必要になったという事情なら、追加請求が認められることは十分あり得ます。
養育費の増減は個別のケースによって異なりますので、弁護士にご相談されるのが良いでしょう。
【取材協力弁護士】
加藤 寛崇(かとう・ひろたか)弁護士
東京大学法学部卒。2008年弁護士登録(三重弁護士会)。労働者側で労働事件を扱うほか、離婚事件など家事事件も多数扱う。日本労働弁護団、東海労働弁護団に所属。
事務所名:三重合同法律事務所
事務所URL:http://miegodo.com/