2016年03月28日 12:02 弁護士ドットコム
自分の不倫や暴力などが原因で離婚する場合、配偶者から「精神的苦痛を受けた」として、慰謝料を請求される場合があります。弁護士ドットコムの法律相談コーナーに、不倫がバレて離婚を切り出されたという男性が、なんとも身勝手な相談を寄せました。
「同じ会社の女性との不倫がバレ、妻から離婚を切り出されました。慰謝料200万円を請求されていますが、経済的に余裕があるとは言えない状況で...。少しでも減額できませんか?」
自分の不倫で離婚を招いておきながら、「慰謝料を減らしてほしい」なんてワガママな要求が通るのでしょうか?吉田 雄大弁護士に詳細な解説をしていただきました。
Q. 「ここに気をつければ慰謝料の金額が減る」という単純な法則はない
不倫は、夫と不倫相手が共同で妻に損害を与える「共同不法行為」です。民法では「数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えたときは、各自が連帯してその損害を賠償する責任を負う」とされています。
この条文に当てはめれば、相談者の男性も不倫相手の女性も、それぞれが不倫という、奥様に対する不法行為の一端を担っているため、奥様に生じた「その損害」の全額について、「賠償する責任を負う」とされているのです。
ただし、仮に奥様が、不倫相手から慰謝料を受け取った場合には、その分、ご相談者が支払うべき慰謝料が減額される可能性があります。また、ご相談者が奥様に慰謝料を支払った場合には、その一部を負担するよう不倫相手に求める(求償)ことができる可能性が高いでしょう。
不倫と一口に言っても、様々な事情によって、配偶者から請求される慰謝料額は変わります。「相場」として一般化するのは難しいです。
過去の裁判例を見ると、慰謝料額を決める際に考慮される要素は、多岐にわたります。まず、結婚年数や子どもの有無・人数、不倫が始まるまでの夫婦仲の円満さや不倫発覚がどの程度夫婦仲に影響したか、といった夫婦間の事情。それに加えて、不倫の期間や内容、不倫相手との関係性、さらには不倫相手との間に子どもがいるかなども要素の一つです。さらに、不倫発覚後の当事者の行動などが考慮された判例もあります。
要するに、あらゆる事情、要素が問題になるため、「ここに気をつければ慰謝料の金額が減る(または増える)」というような単純な図式は成り立ちません。
ところで、ご相談者が奥様から提示された200万円の慰謝料ですが、弁護士の目から見ると、この額には奥様の「本気さ」を感じ、警戒します。というのも、日本の裁判所は総じて、慰謝料額を小さめに認定することが多いからです。
200万円という数字はこうした裁判所の傾向も知った上で、「絶対にこの額は勝ち取るべきで、そのための証拠は揃っているぞ」と言われているようにも感じます。いずれにせよ、できるだけ早く弁護士に相談することをお勧めします。
【取材協力弁護士】
吉田 雄大(よしだ・たけひろ)弁護士
2000年弁護士登録、京都弁護士会所属。同弁護士会子どもの権利委員会委員長等を経て、2012年度同会副会長。このほか、日弁連貧困問題対策本部事務局員など。
事務所名:あかね法律事務所
事務所URL:http://www.akanelawoffice.jp/