トップへ

「暴力団の資金獲得に大打撃の可能性」みかじめ料で暴力団トップを訴える意義

2016年03月25日 11:31  弁護士ドットコム

弁護士ドットコム

記事画像

暴力団から「みかじめ料」を脅し取られたとして、広島市内の風俗店経営者らが3月上旬、指定暴力団「共政会」の会長ら4人を相手取って、訴訟を起こした。渡したみかじめ料や恐怖心への慰謝料などとして、計約2200万円を求めている。


【関連記事:47歳男性。妻と「10年間セックスレス」で気が狂いそう――望めば「離婚」できる?】



報道によると、原告らは共政会傘下の有木組、正木組の関係者3人からみかじめ料を要求されたという。要求を拒むと店の車を壊されるなどの被害があり、中には60万円を渡した原告もいるようだ。



今回のケースで珍しいのは、みかじめ料を要求した3人だけでなく、彼らの組を束ねる共政会の会長も訴えられている点だ。今回の訴訟にどのような意義があるのか、暴力団問題に詳しい中井克洋弁護士に聞いた。



●損害を証明できれば、トップの責任を問える


「今回のケースは、暴力団等による民事介入暴力対策を専門とする弁護士(いわゆる『ミンボー弁護士』)の間では、『組長訴訟』といわれているものです。組長訴訟とは、暴力団傘下組員の不法行為について、民法715条に基づく使用者責任と暴対法31条の2の指定暴力団代表者責任に基づき、その暴力団のトップに損害賠償等を請求する訴訟です」



組長訴訟をするためには、何がポイントになるのか。



「2004年(平成16年)11月12日、最高裁はいわゆる『藤武事件』で、はじめて山口組のトップの使用者責任を認めました。その後、住吉会や稲川会のトップに対する使用者責任も認められました。



しかし、暴力団のトップに対して民法715条による使用者責任を追及するためには、その暴力団のトップと直接の加害者である傘下暴力団組員が使用者・被用者の関係にあり、その加害行為が暴力団の事業の一環として行われたことを立証することが必要です。



そのためには、暴力団内部の内情を被害者側が詳しく調査しなければなりませんが、当然ながら、暴力団の内部を外部の者が知ることは容易ではありません。



そこで2008年(平成20年)5月に暴対法が改正されて、指定暴力団について、被害者が暴力団の内情を詳しく証明しなくても、暴力団員が暴力団の威力を利用した資金獲得行為を行ったことに関連して、被害者に損害が生じたことを証明できれば、その賠償責任を指定暴力団のトップに負担させることができるようになりました」



みかじめ料をめぐって「組長訴訟」が起きるのは珍しいようだが、今回の裁判にはどのような意義があるのだろうか。



「確かに暴対法改正後、全国各地で山口組ほか指定暴力団のトップに対して多くの組長訴訟が提起されてきましたが、みかじめ料(上納金)を脅し取ろうとした行為に対して組長訴訟が提起されたのは、あまり例がありません。


しかし、下部団体の組員がみかじめ料を脅し取ろうとすれば、暴力団のトップに多額の慰謝料支払が命じられるという先例ができれば、暴力団の資金獲得にとって大きな打撃となるものと考えられます」


(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
中井 克洋(なかい・かつひろ)弁護士
弁護士法人広島メープル法律事務所 代表弁護士
司法研修所第46期。平成6年4月 弁護士登録。広島弁護士会民事介入暴力問題対策委員会委員長。日本弁護士連合会民事介入暴力対策委員会 副委員長。
事務所名:弁護士法人広島メープル法律事務所
事務所URL:http://www.maple-law.jp/