2016年03月24日 12:02 弁護士ドットコム
多数の不動産の物件情報が載っているネットの賃貸情報サイト。この中に「おとり物件」と呼ばれる、うその募集情報が少なからず存在しているのが現実だ。
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おとり物件とは、不動産業者が、実際には入居できないことを知りながら、意図的に「募集中」としている物件のことだ。架空の場合もあれば、入居者が決まっているのに掲載している場合もある。
このような「おとり物件」は、家賃が他よりも安いなど好条件であることが多い。悪質な業者は、その物件を希望して来店した客に対して「さきほど埋まってしまいました」などと言って、別の物件を紹介するのだ。
客にしてみると、結果として、満足のいく物件に出会うかもしれないが、業者がだましていることには変わりない。「おとり物件」は法的に問題ないのだろうか。高砂健太郎弁護士に聞いた。
「『おとり物件』の表示は、法律で禁止されている行為です。公正取引委員会が出した、景品表示法4条1項3号の規定に基づく『不動産のおとり広告に関する表示』という告示があります。これでは、以下のような不動産を表示することを『おとり広告』とし、禁止しています。
・実際に存在しない不動産(表示写真と全然違う物件など)
・実際には取引の対象となり得ない不動産(売約済み物件など)
・実際には取引する意思がない不動産(おとり物件への案内を拒んで他の物件ばかり勧めることなど)
これらは実害の有無に関わらず禁止されている行為ですから、最終的に良い物件にめぐり合えたとしても、違法であることに変わりはありません」
では、おとり広告に出くわした場合、どう対処すればよいのか。
「『おとり広告」については、(1)不動産の表示に関する公正競争規約21条に違反することになります。違反した場合、厳重警告や違約金課徴の制裁を受ける可能性があります。そこで、被害に遭われた方は、各地域の『不動産公正取引協議会』にご相談いただくのもよいかと思います。
また、(2)さきほどお話した、景品表示法4条1項3号にも違反することになります。違反した場合、消費者庁が事業者に対して、今後同様の違反行為等を行わないことを命ずる措置命令を行う場合があります。この命令に従わない場合、懲役や罰金等の罰則を受けることがあります。これらの措置を求めて、『消費者庁』に相談するのもよいでしょう。
さらに、(3)宅地建物取引業法32条にも違反します。不動産仲介業者などの宅地建物取引業者が違反した場合、国土交通大臣または都道府県知事が宅建業者に対して是正の指示をします。特に重大で悪質なケースなら、業務停止処分や免許取消処分、懲役、罰金まであり得ます」
選ぶ側としては、どこに気をつけるべきなのか。
「過度に好条件の物件や、現地での待ち合わせを必要以上に拒まれる場合には、より慎重になることが大切です。また、インターネット広告において、既に成約済みである物件をそのまま掲載しつづけている場合もありえますので、好条件の物件が長期間広告されているケースも慎重に見極めてください」
高砂弁護士はこのように話していた。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
高砂 健太郎(たかさご・けんたろう)弁護士
不動産仲介会社勤務を経て、旧司法試験合格。勤務弁護士を経験後、平成22年中崎町法律事務所を開設。不動産、企業、相続部門を重点的に扱い、物件オーナーや不動産管理会社等と多くの顧問契約を締結している。
事務所名:中崎町法律事務所
事務所URL:http://www.nakazakicho-law.jp/