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桂文枝さん全裸画像を「20年不倫」告白の歌手が流出ーーこれは「リベンジポルノ」?

2016年03月23日 10:32  弁護士ドットコム

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落語家・桂文枝さんとの「20年不倫」を告白した演歌歌手・紫艶さんのフェイスブックに、文枝さんと見られる男性の全裸画像が掲載された。画像はすでに削除されているが、ソファに座る文枝さんらしき全裸の男性が、左手で局部を隠したポーズで写っていた。ネットでは、この画像が「リベンジポルノ」に当たるのではないかと物議を醸している。


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2人の不倫疑惑は、2月に週刊誌「FRIDAY」が報じた。文枝さんは事実かどうかについて、はっきりと答えていないが、紫艶さんは「18歳のわがまま娘の頃から、お世話になり、ありがとうございました。世間では『師匠』でも、私にとっては愛しい『ぱぱりん』で…」などと、関係を認めている。



報道によると、文枝さんのものと見られる全裸画像は2度、紫艶さんのフェイスブックに掲載された。1回目の掲載は3月上旬。紫艶さんは「操作ミス」と釈明し、同時にフェイスブックのアカウントも削除した。しかし、紫艶さんは中旬になってアカウントを再取得。3月18日、同じ画像が再掲載された。2回目の掲載についても、紫艶さんはフェイスブック上で「私の不注意で、消去したはずの写真がアップされてしまいました」と、故意ではないことを強調している。



一連の画像アップは「リベンジポルノ」と言えるのだろうか。インターネット上のトラブルに詳しい清水陽平弁護士に聞いた。



●男性の裸でも「リベンジポルノ」になる


「リベンジポルノ防止法は、正式名称『私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律』といいます。



この法律で規制されているのは、男女の別は特に定められていないため、男性の裸体画像であっても同法による処罰を受ける可能性があります」



今回の画像はどう判断できるだろうか。



「同法により規制されるのは、以下のような画像です。



(1)性交又は性交類似行為に係る人の姿態


(2)他人が人の性器等(性器、肛門又は乳首をいう。以下この号及び次号において同じ)を触る行為又は人が他人の性器等を触る行為に係る人の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの


(3)衣服の全部又は一部を着けない人の姿態であって、殊更に人の性的な部位(性器等若しくはその周辺部、臀部又は胸部をいう)が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するもの



本件は、全裸の男性が左手で局部を隠したポーズで写っているということなので、『衣服の全部又は一部を着けない人の姿態』に当たります。



また、ネット上に掲載された画像を見る限り、局部の一部が写り、かつ、手で隠しているポーズですので、『殊更に人の性的な部位が…強調されている』とも言えます。性的な状況にあることを窺わせるものと思われるため、『性欲を興奮させ又は刺激するもの』と言える余地があります。



したがって、リベンジポルノにあたる可能性があります」



●「操作ミス」は通じない可能性も


流出したとされる画像には、局部の一部が写っていたようだ。「わいせつ物公然陳列罪」の可能性はあるのか。



「『わいせつ』とは、いたずらに性欲を興奮又は刺激せしめ、かつ、普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反するものをいうとされ、具体的に何があれば『わいせつ』なのかということは、社会通念によって変わってきます。



どのような判断がされるかという問題はあるものの、性器の一部が写っている場合、わいせつ物にあたると解釈される可能性はあります。今回は、フェイスブックで公開された画像であるため、わいせつ物公然陳列罪にあたる可能性があるといえます」



紫艶さんは「操作ミス」と主張しているが・・・



「刑法上問題とされる行為は、原則としては『故意』があることが必要で、『過失』の場合には過失犯を処罰する旨の規定が必要です。



操作ミスは『意図的ではない(=過失)』と解釈されます。本当に過失であるなら、リベンジポルノ防止法やわいせつ物公然陳列罪には該当しない、ということになります。



ただ、これは本人の話だけではなく、その状況なども考慮して判断することになります。消去したはずの写真がアップされるということは、基本的に考えられず、しかも二度目の掲載ということも考えると、意図的なものであると解釈される余地が十分あると思います」



●文枝さんが告訴しないと「リベンジポルノ」の罪にならない


実際に紫艶さんが訴えられる可能性はどれくらいあるのか。



「リベンジポルノ防止法は親告罪とされており、起訴するためには告訴が必要です。したがって、文枝さんが『写真の男性は自分だ』と認めて告訴しない限り、リベンジポルノ防止法による処罰はできないということになります。



そのほか、名誉毀損にあたるとも考えられ、刑事上・民事上の責任追及が可能だろうと思います。ただし、いずれについても、本人が『この写真にうつっているのは自分だ』と認めることが前提になると思います」



文枝さんにとっては、訴えることは不倫を認めることとイコールになりかねない、ということのようだ。



「もっとも、わいせつ物公然陳列罪については、あくまで性的風俗、性道徳ないし性秩序の維持が保護法益であり、親告罪とはなっていません。したがって、わいせつ物公然陳列罪であれば、適用は可能でしょう」




清水弁護士はこう述べていた。


(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
清水 陽平(しみず・ようへい)弁護士
インターネット上で行われる誹謗中傷の削除、投稿者の特定について注力しており、Twitterに対する開示請求、Facebookに対する開示請求について、ともに日本第1号事案を担当。2015年6月10日「サイト別ネット中傷・炎上対応マニュアル(弘文堂)」を出版。
事務所名:法律事務所アルシエン
事務所URL:http://www.alcien.jp