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zoppがももクロ新作で試みた“作詞家の作曲術”「ライバルだった人たちと一緒に仕事ができる」

2016年03月22日 15:21  リアルサウンド

リアルサウンド

zopp。

 修二と彰「青春アミーゴ」や、山下智久「抱いてセニョリータ」など、数々のヒット曲を手掛ける作詞家・zopp。彼は作詞家やコトバライター、小説家として活躍しながら、自ら『作詞クラブ』を主宰し、未来のヒットメイカーを育成している。これまではヒット曲を生み出した名作詞家が紡いだ歌詞や、“比喩表現”、英詞と日本詞、歌詞の“物語性”、“ワードアドバイザー”などについて、同氏の作品や著名アーティストの代表曲をピックアップし、存分に語ってもらった。今回は、作詞家が作曲を手掛けることや、コライト(共作)の重要性についてじっくりと話を訊いてみた。


zoppのプロフィールなどが分かるインタビューはこちら


・「作曲を始めたことで、コライトの重要性が理解できた」


――今回、ももいろクローバーZの『AMARANTHUS』収録曲「Guns N' Diamond」に、zoppさんは作詞作曲で参加していますね。今回、作詞家のzoppさんが作曲を手がけた経緯は?

zopp:もともとはコライトが日本でも浸透し始めてきているから、やってみようということで。あと、今所属している事務所が作詞面で強いということもあって、「作曲も盛り上げたい」ということを話していたんです。それにあたって、作曲を始めたのですが、コライトに小林史知さんと岡村夏彦さんも参加してもらいました。ちなみに僕、作詞をやる前はピアノを15年ほど弾いていたんですよ。

――あ、経験はすでにあったのですね。小林さんと岡村さんの2人とはどういった縁なのでしょう。

zopp:2人とも、寄せ集めでもなんでもなく、3年前に知人やスタッフを経由して知り合った方です。小林さんはメロディが、岡村さんはアレンジがそれぞれ得意だったので、最初は分業制にしようかと思ったのですが、それだと面白くないと感じたので、変則的ですが今のようなやり方になりました。


――作曲をしたことで、作詞家として得るものもありましたか。


zopp:普段は作曲家の方が作ったものに歌詞を乗せるのですが、自分が詞先で進めることもあって。そんなときは自分が先に詞をつけつつ、なんとなく頭にメロディを浮かべているんです。テーマや詞を考えつつ、同時にメロディも出来上がったほうが、楽曲として自分のイメージしたものにより近いのかもと思い、そこから始めました。


――作り方に変化は?


zopp:楽曲のメインとなるテーマは、クライアントが決めるものですが、僕は作詞にあたって、基本的に自分の中で“裏テーマ”を作るようにしていて。作詞と作曲を同時に始めるにあたって、コライトする作家さんにも、裏テーマを共有して、アレンジなども詰めるようになりました。あとは、とくに案件が無くても、作家同士が集まるだけ集まって、その場で考えたテーマをもとに楽曲を作ったり。


――後者の方法で作った楽曲は、どのようにして世に出るのでしょうか。


zopp:良いものができたと思ったら、色んな人に渡して反応を確認するとともに、使ってもらう機会を狙います。基本的にコンペばかりをやっているのが好きな方ではないので。


――コライトについて、若い音楽作家には「印税がたとえ折半になっても、どんどん曲を作りたい」という理由で肯定する方が多い印象を受けます。コライトについて、zoppさんは最初から肯定的でしたか?


zopp:「作詞でコライト」という概念は、聞いたことも経験したこともありませんでした。なので、「コライトなんてする必要あるのかな?」と思っていたのですが、作曲を始めたことで、その重要性が理解できました。言葉に合わせて相談しながら自由にメロディを変えたりできるし、制作における選択肢がより広がったように感じます。


――「集まってコライトをする」ということでしたが、具体的にはどのような工程で行なっているのでしょう。


zopp:事務所の4階がスタジオなので、そこに集まり、あらかじめ決まっていたテーマに沿ってそれぞれが作ったトラックを聴いて、コードやメロディを考えるのがほとんどです。でも、思いついたメロディからトラックを作ったりすることもあるので、ある程度自由にはしていますね。テーマを決めずに集まって、セッションの中で曲を見つけていくというのが大半の作家さんが取っている方法だと思うので、僕らのやり方は、そこと少し違うかもしれません。大きなプロットはある程度決めてから動かすので。


――ちなみに作詞に関しては「なるべく癖はつかないようにする」というのがご自身の方針と伺いましたが、、作曲においてはどうでしょう?


zopp:これは作詞にも言えることですが、繰り返しが多いですね。例えば「抱いてセニョリータ」の<抱いて 抱いて 抱いて>みたいな。あまり旋律を難しくするのが好きじゃなくて、言葉を乗せやすいメロディを考えた結果、同じフレーズが乗りやすいんです。その分、後でアレンジにはこだわるようにしていますが。あと、イントロはどれもキャッチ―で、印象に残るものにしたいと思っていて、必ず変わった楽器を使うようにしています。J-POP的なメロディや進行でも、二胡やタブラ、スパニッシュギターなどを使うことで、記名性を高めるというか。


――「Guns N' Diamond」もそのように記名性を重視した一曲といえますね。


zopp:ももクロの場合は、どこまで冒険しても許される感じがしますからね(笑)。今回はジャズとロックを混ぜながら、変わった音と音を組み合わせる面白さがありましたね。


――ただ、作曲も始めたとなると、作詞だけを手掛けていたころより、完成までの時間は相当増えたのでは?


zopp:はい。でも、「楽しいことをやろう」という思いで集まった人たちでもあるので、たとえ時間が掛かったとしても、そこまで苦ではありません。いまは全体の仕事のうち、作詞が3割、コライトでの作曲が7割くらいになっています。


――面白いですね。キャリアを重ねていかれたタイミングで、ミュージシャン的な目覚めがあったと。


zopp:そうですね。でも、ピアノをやっていた経歴があったりと、最初から職業作家っぽいキャリアを歩んでいたわけではないです。作詞に関しても、商業音楽的なものよりも、海外バンドの楽曲を訳詞するところからスタートしたので。ただ、バンドものをやりたいのかと言われればそうでもなくて。自分の好きなアーティストだと、コールドプレイがまさに理想なのですが、彼らもバンドとしてのキャリアを確立しつつ、ビヨンセやアリシア・キーズとコラボレーションするなど、様々なジャンルのミュージシャンと絡んでいますよね。僕のルーツはU2にあるのですが、コールドプレイとU2はプロデューサーが同じ(ブライアン・イーノ)です。イーノが手掛けた作品は情景描写が豊かで、実験的な音色を多く入れているにも関わらず、ポップミュージックとして世界に通用するものを作っている。僕自身もその表現技法には強い影響を受けていて、歌詞を書くときには、なるべくその向こう側にある環境を楽しんでもらえるようなものにしたいと思っています。


――今後、作詞家をメインにしつつ、コライトでの制作を手掛けるにあたり、目指していることはありますか。


zopp:自分に限らず、作詞家もコンペを待っているだけだと自分の可能性を試せないので、どんどん他のクリエイターと絡んでいけばいいと思います。例えば、作曲家が書く曲に仮詞を付けて提出し、そのまま採用されれば自分の手柄ですよね。個人的には、自分が作曲に携わることで、同じクレジットに並ぶことのない作詞家の方と一緒に仕事できたら嬉しいです。だって、作詞家として秋元康さんとコラボすることなんてないわけですから(笑)。今までライバルだった人たちと、一緒に仕事ができるというのは、自分の作詞家としてのキャリアにおいても、良い経験になると思います。


(取材・文=中村拓海)