2016年03月22日 11:12 弁護士ドットコム
「礼拝所不敬罪」。墓地で十字架を引き抜いたとして、北海道函館市に住む男性(20)が、そんな聞き慣れない容疑で逮捕された。
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報道によると、男性は昨年8月12日、北斗市内の野崎墓地で、木製の十字架1体を引き抜いた疑いがもたれている。「若い男が十字架の墓標を持っている写真がフェイスブックに投稿されている」との通報があり、墓地の管理者が昨年12月に被害届を出していたという。男性は「友人と一緒に肝試しに行き、ふざけて抜いた」と容疑を認めているという。
礼拝所不敬罪とは、どんな犯罪なのか。刑事事件に詳しい伊藤諭弁護士に聞いた。
「礼拝所不敬罪とは、『神祠、仏堂、墓所その他の礼拝所に対し、公然と不敬な行為』をすることです。6月以下の懲役もしくは禁錮、または10万円以下の罰金とされています(刑法188条1項)」
伊藤弁護士はこのように述べる。具体的には、どんなことが罪にあたるのか。
「神祠(しんし)とは、神道により神を祭った場所をいいます。
また、『公然と不敬な行為』とは、不特定または多数の者が認識することができる状態で、神聖や尊厳を害する行為のことをいいます。
この罪は、『言語』や『動作』などでも成立します。『言語』というのは、たとえば侮辱的な言葉を浴びせるといったことです。
過去には、お墓に対して放尿するような格好をした行為や、墓石を転落させる行為などで、同罪の適用を認めています。
また、有名な写真家が墓地でヌード撮影をして、罰金30万円の略式命令を受けたという例がありました。
今回の男性の行為は、墓地で十字架の墓標を引き抜いて持っていたということですので、尊厳を害する行為と評価するのに十分ですから、礼拝所不敬罪にあたります」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
伊藤 諭(いとう・さとし)弁護士
1976年生。2002年、弁護士登録。横浜弁護士会所属(川崎支部)。中小企業に関する法律相談、交通事故、倒産事件、離婚・相続等の家事事件、高齢者の財産管理(成年後見など)、刑事事件などを手がける。趣味はマラソン。
事務所名:市役所通り法律事務所
事務所URL:http://www.s-dori-law.com/