「東京アニメアワードフェスティバル2016」(TAAF)の国際コンペディション部門には長編24作品、短編522作品の応募が寄せられた。開催二日目の3月19日には、長編アニメーション部門ノミネート作品『TOUT EN HAUT DU MONDE』(英題 LONG WAY NORTH)が上映され、メインスタッフによる質疑応答が行われた。
『TOUT EN HAUT DU MONDE』はRemi Chaye監督が手がけたフランスとデンマークの合作映画である。19世紀後半のロシアを舞台に、北極探検船の艦長である祖父を追って、サンクトペテルブルクから極北を目指す少女・サーシャの冒険を描いている。
海外での手描きのアニメーションや、輪郭線を持たない独特なキャラクター表現、北極の寒さが伝わってくるほどの雪と氷の世界が観客を魅了した。本編が終わってスタッフロールが流れ出すと、会場は大きな拍手に包まれた。
本作は選考委員の中でもアニメーターの井上俊之による強い推薦でノミネートされた。井上は「長編には多くのアニメーターが携わるので、バラバラの画力を統一することに全精力を使わざるを得なくなる。だが『TOUT EN HAUT DU MONDE』は非常に高いレベルで絵の統一が図れている。そのことに深い感激を覚えました」と第一線で活躍し続けている彼らしいコメントを寄せた。
モデレーターの叶精二は、物語の後半で音楽をほぼ使わずに北極の臨場感を描いた点を絶賛。「実際にそこにいるようなギリギリとした緊張感を、劇伴で喜怒哀楽を付けるのではなく、効果音を際立たせたりロングショットを交えたりすることで表現している。本当に素晴らしい作品です」と語った。
最後はDYENS RONプロデューサーが「『TOUT EN HAUT DU MONDE』を日本でもできるだけ多く取り上げて頂ければ幸いです。この作品の芸術性を皆さんと分かち合いたいです」とメッセージを伝えた。
Liane-Cho Hanは「アニメーションのパターン化に抗うためにも」と力強い言葉を付け加え、イベントは大盛況の内に幕を閉じた。
[高橋克則]