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【TAAF2016】「空の境界」や「Fate」シリーズと歩んだ15年 ufotable特別上映会レポート

2016年03月20日 12:32  アニメ!アニメ!

アニメ!アニメ!

【TAAF2016】「空の境界」や「Fate」シリーズと歩んだ15年 ufotable特別上映会レポート
3月18日より、東京・TOHOシネマズ日本橋にて、東京アニメアワードフェスティバル2016(TAAF2016)がスタートした。TAAF2016は4日間にわたって国内外のアニメーションを上映する国際映画祭で、今年3回目を迎える。
開幕初日には早速コンペティション部門のノミネート作品の上映や、国際交流フォーラムなどが行われた。なかでも招待作品として行われたufotable15周年記念特別上映会はアニメファンにうれしいプログラムだった。ufotable代表取締役の近藤光氏、『Fate/stay night[Unlimited Blade Works]』のキャラクターデザインなどを手掛けた須藤友徳氏、同作品の第1シリーズの監督を務めた三浦貴博氏が登壇、日本動画協会の北上浩司氏の司会のもとトークを繰り広げた。

イベントはアプリゲーム『Fate/grand order』と『空の境界』コラボ映像がスタートを切った。これらは3月23日に発売する『空の境界 俯瞰風景3D』に特典映像として収録されるもので、原画や動画、制作途中のバリエーションたっぷりのものになった。完成映像はCMやネットなどでも配信されているが、制作素材を大画面で観る貴重な機会となった。大きな画面でも見劣りしないクオリティの高さはufotableならではだろう。
また本編からは『空の境界 俯瞰風景 3D』と『Fate/stay night[Unlimited Blade Works]』24話、25話が上映された。

トークでは業界に入って20年以上の近藤氏が、ufotableの過去15年を振り返った。設立した当時は、地上波キー局での作品放送も映画館での上映も遠い存在だったと語った。須藤氏はufotableとの仕事は『住めば都のコスモス荘 すっとこ大戦ドッコイダー』(2003)からという。「これだけ長くいるのも不思議」と話す。
『フタコイ オルタナティブ』(2005)からという三浦氏はufotableのスタジオには「変な人が多い」いう印象を持っていたとのことだ。また今回上映された『Fate/grand oreder』の映像の参加スタッフは、徳島スタジオが半分を占めているとのこと。「徳島は才能の宝庫」と話した。

2007年に登場した『空の境界』は7章を劇場で上映するという当時では斬新試みだったが、その成功がufotableを印象付ける作品となった。近藤氏は本作でユーザーに寄り添っていくことを決めたと話す。
須藤氏は、『空の境界』では、画面のサイズや“劇場”という重圧に押しつぶされそうになったこともあったと。さらに第1章の美術監督の池信孝氏のクオリティ高い美術に「これにのる絵って何だろう」と悩んだことなども。しかしこだわりは多く、クライマックスである屋上の戦闘シーンで、革ジャンの色を変えていることや、式の持つナイフの光を1枚1枚ワンフレームずつ入れている手間などを明かした。

「Fate」シリーズは「チームで作る」ということを意識したという。劇場作品とテレビシリーズの違いもあったが、若いスタッフの成長の場となった。
またシリーズの重なるアニメ展開は、10周年記念のイベントTYPE-MOON Fes.で映像への歓声を聞いたことが理由であった。それがテレビシリーズ、そして制作決定している『Fate/stay night Heven’s Feel』へ続いている。

作品以外のufotableの取り組みについても語られた。地方のアニメ制作で話題になった徳島スタジオの設立について、「日本のアニメの90%以上新宿から西で作られている」という現状を「環境を変えればもっと良いものが作れるのでは?」と考えたからと説明する。最初は沖縄県を予定していたが、宅急便に時間がかかることもあり断念したという。
毎年恒例となった「マチ★アソビ」については、スタジオにいるスタッフがそこいることから、「町に対して何かしたい」という思いがあったそうだ。阿波踊りと『空の境界』のコラボポスターをきっかけに、プロジェクトは大きく発展していった。現在は「マチ★アソビ」だけでなく、常設のufotable cafeやufotable cinemaなどを展開し、「『マチ★アソビ』をいかに普段に落とし込むか」を考えているそうだ。
またスタジオ自ら運営するcafeやdiningについても話題に。いろいろな特典を付けてのコラボ展開は当初は苦手だったが、ファンの声を聞いていまのかたちになった。おしゃれカフェとの狭間でも悩んだようだが、そこは振り切ったそうだ。

そしてトークの最後は、今後のufotable、そしてアニメ業界全体についての話となった。須藤氏と三浦氏は、アニメ制作の現場について「デジタル作画がどれだけ進んでいくか」に注目していると。既に一部で採用されているが、制作の手法が変わってもufotableの姿勢は変わらないと語った。
近藤氏は「パッケージ(映像ソフト)を売るビジネスのあり方が終わりに近づいている」と、そして配信事業の現状や配信によるメリット、デメリットを話した。
さらに「カフェやダイニングは続けていく」とも。そして3月25日から27日まで開催されるAnimeJapan 2016などでもufotableの新情報が明かされるとのことだ。
最後は近藤氏が「応援しがいのあるスタジオでいたいと思います」と話し、来場者に対して感謝を述べて幕を閉じた。

今回、開催の場になった東京アニメアワードフェスティバルは、日本動画協会が運営をしている。一方でufotableは、実は日本動画協会に所属していない。
上映会開催には、ufotableの実績やアニメスタジオとしての取り組みの評価の高さが現れていた。途中近藤氏が、日本動画協会の北上氏に逆に質問するという場面もあるなど、スタジオやスタッフの人柄の現れた上映会となった。

東京アニメアワードフェスティバル2016
会期: 2016年3月18日(金)~21日(月・祝)
会場: TOHOシネマズ 日本橋