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NEWSが新作『QUARTETTO』で見せた音楽的可能性 従来ポップスをフロア対応型に?

2016年03月19日 14:01  リアルサウンド

リアルサウンド

大谷能生、速水健朗、矢野利裕『ジャニ研!』(原書房)

 NEWSの新作『QUARTETTO』が発売された。先行シングル曲「チュムチュム」の衝撃については以前本連載で詳しく書いたが、本作には、それ以外にも印象的な曲が並んでいる。


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 1曲目「Theme of “QUARTETTO”」は、ヴォコーダーで加工された声やヴォイス・サンプルがふんだんに使用され、エレクトロニックかつポップに本作のオープニングを飾る。前曲を引き継ぐようにヴォコーダーの声で始まる「QUARTETTO」は、シンフォニックなシンセサイザー音とハードなダンスビートが、LMFAO「Party Rock Anthem」のようなイケイケのEDMを想起させる。しかし、サビではメンバーの歌が強調されるので、全体としては、ハードなダンスミュージックというよりもポップスとして聴くことができる。同じようなバランス感覚は、続く「ANTHEM」でも維持されている。FIFAクラブワールドカップ2015のテーマソングでもあったこの曲は、基本的に歌モノなのだが、その一方でEDM要素も強く、とくに後半のブレイク部分は、それこそやはり「Party Rock Anthem」のようなシンセ・フレーズが鳴らされる。また、サビ後にはサッカーの応援を意識して「ウォーウォー」と叫ばれる。大型スタジアムで「ウォーウォー」と合唱できる「ANTHEM」という曲は、結果的にフロアライクなポップスになっている。次の「シリウス」は、薄くアコースティックな音色も入っていて、先の2曲に比べると若干ポップス色が濃い。しかし、やはりビートは太く、クラップ音やシンセサイザー音も効果的に使われていて、ダンスミュージック要素が強い。


 このように本作は基本的に、ダンスミュージックをポップスとして聴かせるアルバムである。もちろんこのこと自体は、現在のポップスであれば当然の性格なのだろうが、本作はそのなかでもEDMへの意識が強く、と同時に、歌への意識も強い。「シリウス」に続く「Touch」も、EDM的なダンスミュージックには違いないのだが、パーカッションやホーンのようなサウンドも入り混じって、やわらかい印象である。オープニングから「Touch」は、ダンスミュージックからだんだんとポップスになっていくようで、そのグラデーションが気持ち良い。バキバキなEDMとポップなメロディが見事に共存する「Touch」は、アルバムのひとつのハイライトである。強いビートのなかでも気負いなくさらりと歌えてしまうのは、もしかしたらNEWSの素敵な特徴なのかもしれない。


 アルバム後半からは、少しモードがチェンジする。「NEWSKOOL」は、ラップも含めたウワモノのノリが少しオールドスクール・ヒップホップのような印象である。櫻井翔の「Hip Pop Boogie」でも引用されていた、シュガーヒル・ギャング「Rapper’s Delight」のおなじみのフレーズを歌うのも、オールドスクール的である。しかし、ビートはむしろ露骨にいまっぽい。曲中には「OLD SKOOL We Don’t DIS IT」という一節があるが、逆説的に「OLDSKOOL」を想起させる「NEWSKOOL」という曲は、その曲名も含めけっこう凝っている。先行のDVDシングル曲「四銃士」は、全面的にラフマニノフを引用したユニークな曲である。ヒップホップ的なサンプリングとも異なり、ヘンテコで面白い。シングル『四銃士』のカップリングは先の「ANTHEM」だが、シンフォニックな雰囲気のダンスミュージックという意味で、結果的に両者は呼応している。だとすれば、怪作「チュムチュム」も収録されているものの、本作の特徴は最初の「Theme of “QUARTETTO”」の時点ですでに示されていたのかもしれない。先述のように、エレクトロニックかつポップな、この短いオープニングは、ダンスミュージックをポップスに聴かせる本作の予告編のようである。もちろん、そのような試みを可能にするメンバーの歌唱力も無視できない。通常盤に収録されたソロ曲はどれも聴きどころがある。とくに、加藤シゲアキがラップと歌を披露するR&B曲「星の王子様」などは、素晴らしくグルーヴィーなヴォーカルを聴くことができる。NEWSの新作は、従来的なポップスでありながら、同時にフロア対応が可能な音楽という可能性を追求している。(矢野利裕)