2016年03月19日 11:42 弁護士ドットコム
厚生労働省は3月16日、児童相談所に弁護士や経験豊富な児童福祉司を配置することなどを盛り込んだ児童福祉法や児童虐待防止法などの改正案の概要をまとめた。改正法案は今国会に提出される予定。
【関連記事:ビジネスホテルの「1人部屋」を「ラブホ」代わりに――カップルが使うのは違法?】
改正案は、児童虐待への対応を強化することが目的で、児童相談所の機能や体制の拡充を図る。法律の知識が必要な事案や手続きに迅速に対応できるよう、児童相談所に原則として弁護士の配置を義務づけたり、強制的に家庭に立ち入る「臨検」の手続きを簡略化したりする。
今回の改正案について、児童虐待の問題に取り組む弁護士はどう考えているのか。相川裕弁護士に聞いた。
「児童相談所の活動に弁護士がコミットすることはきわめて有益です」
相川弁護士はこのように述べる。具体的には、どんな場面で有益なのか。
「たとえば、虐待事例で、要保護児童を里親に委託し、あるいは乳児院・児童養護施設等に入所させることについて、親権者が反対しているような場合です。このようなケースは、えてして、緊急に介入する必要性が高いのですが、都道府県は家庭裁判所の承認をえなければなりません(児童福祉法28条)。
しかし、多くのケースを抱え、多忙を極めている児童福祉司が、不慣れな「家事審判手続」を他の業務と並行して行うのは困難です。審判まで至らない事例でも、個別のケースに内在する法的な問題について、弁護士から適切な助言を得ることは、子どもの最善の利益を実現するために不可欠です」
法改正がなければ、そうした体制は確保できないのか。
「多くの方々の努力により、大阪、愛知、東京、神奈川などいくつもの地域で、それぞれのやり方で、児童相談所と子ども問題に詳しい弁護士らとの連携が進んでいますが、地域によって連携のあり方に温度差があることも事実です。
児童相談所に弁護士の配置が義務付けられることで、これまで先進的に取り組んできた地域のやり方に、法律的な根拠と財政的な裏付けが与えられるとしたら、そして弁護士の関与が一層手厚いものになるとしたら、朗報です。
また、まだ連携が不十分な地域にとっては、児童相談所と子ども問題に詳しい弁護士が、連携を進める大きなきっかけとなることが強く期待されます。
この他にも、以前から問題となっていた、未成年者でありながら『児童』にあたらないために児童相談所等による支援がなされない、18歳から20歳までの子どもへの支援が、一部拡大されたことにも注目すべきでしょう。
この他にも、様々な立法的取り組みがなされているところですが、さらに立法や改正が必要な部分も多く、今後の法改正への取り組みが引き続き、期待されます」
相川弁護士はこのように述べていた。
(弁護士ドットコムニュース)