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「出生率の低い国」に共通する7つの要素 教育熱心すぎて「産む資格がない」と悲観する親も

2016年03月16日 10:41  キャリコネニュース

キャリコネニュース

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「少子化」が、今の日本の抱える最大の問題の一つであることは間違いがないところだ。日本の特殊出生率(女性が生涯に産む子どもの数の平均)は1.4で、人口維持に必要とされる2.1より遙かに低い。

どうすれば日本の出生率を上げられるのか。このことについて、世界各国と比較しながら考えてみた。まずは「世界特殊出生率ランキング」(世界銀行の2014年の統計による)を見てみよう。(文:小田切尚登)

圧倒的に大きな影響を及ぼす「経済力」

出生率の1位は西アフリカのニジェールで7.6。以下、東アフリカのソマリア(6.6)、西アフリカのマリ(6.3)、アフリカ中央部のチャド(6.3)など、出生率3を超える国の大半は、アフリカを中心とする貧しい国々である。

逆に先進国では例外なく低めだ。日本は1.4で185位だが、まだ下がいる。194位のボスニア・ヘルツェゴビナ(1.3)、195位のマカオ(中国)(1.2)、196位のシンガポール(1.2)、197位の韓国(1.2)、198位の香港(中国)(1.1)が続く。ワースト20に入るのは、東アジアか東欧・南欧の国ばかりである。

ここで出生率の低い国に共通する要素を考えてみた。

1.経済的に豊かである
2.将来への不安感が強い
3.宗教心が薄い
4.都市型で個人主義的生活スタイル
5.保守的で伝統的な価値観
6.高学歴で教育熱心
7.女性の社会進出が遅れている

これらに当てはまるポイントが多いと、子どもが少なくなる傾向にあるとみられる。中でも圧倒的に重要だと思われるのが、経済力である。豊かになると子どもが減るというのは世界で普遍的にみられる傾向で、日本の少子化もこの動きに沿ったものといえる。

「自分で勝手に育つ」と考えれば、子どもは増えるが

世界の平均出生率は1960年に5.0だったが、2012年には2.5へと半減。日本でも第二次大戦後の1947年には4.5という高さだったが、それから着実に減り、1960年代は2前後になった。韓国も同様に下がってきて、今や日本を下回る1.2にまでなったが、一方で北朝鮮は2.0という高さにある。これらは第一義的には経済力で説明できるであろう。

そして日本、韓国などの東アジアの国に共通するのは、自分を不幸に感じ、宗教心が薄く、教育熱心という点だ。「将来が不安で子どもなど産めない」「子どもを世話する余裕がない」「ちゃんとした教育を受けさせられなければ子どもを産む資格がない」……このような見方である。

逆に「子どもは自分で勝手に育つ」「(根拠はなくても)将来は何とかなる」「子どもを生み育てるのは自然の摂理である」という風に考えられると子どもは増える。

例えば、米国(出生率1.9)やサウジアラビア(2.8)では、その高い経済力にもかかわらず子どもが多いが、その理由は、宗教心の強さでかなり説明がつく。日本も貧しくも明るく前向きの日々(?)に戻れば子どもの数が増えるかもしれないが、そんなことを考えてもせんない事だろう。

「働く女性が子どもを持つこと」支える文化があるか

むしろ重要なのは女性の地位ではないか。世界経済フォーラムの世界男女格差指数2013を見ると、先進国の中で100位以下にランキングされているのは、日本105位、韓国111位のみである。また、同様に東欧・南欧の国々もイタリア(1.4)やハンガリー(1.3)がそれぞれ69位、93位になるなど男女格差が大きい。

女性が社会進出をすることは出生率に悪影響を与えると考えがちだが、今の先進国のライフスタイルではむしろ女性の社会的・経済的立場の確立が出産を後押しするようだ。

日本にとって良いモデルになるのはフランスだろう。フランスではこのところ出生率が着実に上昇してきている。同国の出生率は1990年代前半には1.7前後であったが、今は2.0にまで回復してきた。

私はフランスに何か秘密があるのではないかと思い、この件についてフランス人と随分議論をした。しかし、得られた答えは以下のような当たり前のものだった。

1.「出生率を上げること」を国の最重要課題として掲げる。出生率向上に資する政策には十分な予算を継続的に配分する。保育施設を充実させる
2.「働く女性が子どもを持つこと」を全面的に支援する。シングルマザーや婚外子に対する偏見や差別をなくす
3.国民が状況を十分に認識し、国の政策を後押しする

日本でもそれなりの努力が重ねられているが、フランスに比べるとまだまだ、という気がする。特に国民のコンセンサスが必ずしも形成されていないという問題があるのではないか。例えば「働く女性が子どもを持つこと」を全面的に支援する文化があるかどうか。国民が真剣に向き合うことで、初めて問題の解決が近づくであろう。

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