2016年03月15日 18:52 弁護士ドットコム
コンピューターグラフィックス(CG)で裸の女児をリアルに描いて販売したとして、児童買春・児童ポルノ禁止法違反の罪に問われていたグラフィックデザイナーの男性被告人(55)に対し、東京地裁(三上孝浩裁判長)は3月15日、懲役1年、罰金30万円、執行猶予3年の判決を言い渡した。弁護側は「不当判決だ」として、控訴する意思を示した。
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裁判で争われていたのは、少女の裸体をテーマにした「聖少女伝説」「聖少女伝説2」という2つのCG画像集。「聖少女伝説」のCG18点、「聖少女伝説2」のCG16点の計34点が「児童ポルノにあたる」として起訴された。裁判所は、34点のうち31点のCGについて児童ポルノ性を否定し、3点のCGについて児童ポルノ性を認めた。
検察側は、「CG画像は、児童ポルノである少女のヌード写真をもとにしてつくったもので、児童ポルノにあたる」などとして、懲役2年、罰金100万円を求刑していた。一方、弁護側は「少女のヌード写真は参考にしただけで、実在の児童を描写したものではなく、児童ポルノにはあたらない」などとして無罪を主張していた。
三上裁判長は、3点のCGについて、「少女のヌード写真をもとに作成したもので、同一性が認められる。CG画像でも、写真と比べて悪質性が低いとはいえない」などとして、児童ポルノにあたると認定した。
判決後の会見で、弁護団の壇俊光弁護士は、「そもそも、児童ポルノ禁止法が、何を処罰するのか、何を保護するための法律なのか、という点で、裁判所と弁護側の意見が大きく食い違った。あくまでも実在する児童に対する性的虐待を防ぐというのが法律本来の趣旨だ。『一般人がどう思うか』といった社会的法益の観点を取り入れた法解釈は誤っている」と裁判所の判断を批判した。
そのうえで、「被告人は芸術活動を行っていた。今回の判決は、何が処罰されるのか、されないのかという点について全く触れていない。創作活動に対する萎縮的効果は大きい。高裁では、こうした点についても明らかにしていきたい」と、控訴審への意気込みを述べた。
男性被告人は「私は創作活動だと考えていた。その価値が理解されなかったようで残念だ」とコメントした。その一方で、「創作意図があっても、児童ポルノにあたるとされることがわかった。(そうした意図があるかは)見る側にはわからないし、誤解を与えてしまう可能性が高い。今後、こういったもの(聖少女伝説)を創作することはないと思う」と述べていた。
(弁護士ドットコムニュース)