ルイス・ハミルトンは今シーズンから無線でのコミュニケーションがより厳しく制限される件を受けて、F1ドライバーにとっての状況は「かなり難しくなる」と語っている。
F1ドライバーは「自力で援助なしに」マシンを走らせなければならないというレギュレーションの適用範囲が拡大され、無線でのやりとりはこれまでよりも厳格化される。メルセデスのトト・ウォルフはこの規定がレース中にドライバーのミスを誘発したり、間違った戦略的判断に繋がると考えている。
ハミルトンはこの件について「これは大きな変更で、すべての影響に僕自身が賛成するか否かは別として、状況は間違いなく厳しくなると思う。マシンの中で把握すべき様々な手順や出来事はとても多く、よりたくさんのことを覚えている必要がある。それらを覚えていられるような方法を考えなくてはならない。マシンの中やステアリングに紙が貼ってあることがあるけれど、それは文字通りたくさんのことを覚えている必要があるからだ」と述べた。
さらにハミルトンは、新しいレギュレーションの中には直接パフォーマンスに影響しない項目もあり、賛成できない部分があると言う。
「ペースの改善という点では何のメリットもなく、新しい無線レギュレーションは、あまりにもテクニカルなマシンをただ走らせるためだけのものだ。いくつかの部分はマシンのペースとも観客とも無関係になるので、賛成できない。アイディアとしては良いし、レースをしながら進化していくだろう。初戦はみんなが何らかの形で苦労することになるだろうけれど、できる限り最高の準備をしてきた」
【2016年に許可される無線の内容】
FIAの無線に関する規制は、レース中のドライバーがピットウォールから受け取る情報を最小限に抑えることを目的としている。下記は2016年シーズンに無線での伝達が許可される項目の一覧。これ以外の通信は規則20.1条の違反と見なされる。
1.マシンの重大な問題の指摘(パンクの警告やダメージなど)※
2.他車の問題の指摘※
3.マシンの修復あるいはリタイアのため、ピットレーンに入るようにとの指示※
4.マーシャルにかかわる情報(レースコントロールからの、イエローフラッグ、レッドフラッグ、レーススタートやり直しあるいは類似した指示または情報)※
5.特定のコーナーでのウエット路面、オイルあるいはデブリの情報※
6.他のドライバーとのポジション入れ替えの指示※
7.ドライバーからのメッセージが聞こえたことの確認
8.ラップタイムあるいはセクタータイムの詳細
9.他車のラップタイムの詳細
10.プラクティスセッションあるいはレース中の他車とのギャップ
11.「プッシュしろ」「今プッシュしろ」「~と戦うことになる」など
12.プラクティスセッションあるいはレース中にトラフィックの警告を与えて助けること
13.予選中、クリアラップを走れるポジションを確保するため、マシン同士のギャップを知らせること
14.次のピットストップでのタイヤチョイス
15.レース中、他車がそのタイヤセットで走った周回数
16.他車のタイヤスペック
17.他車のレース戦略に関する情報
18.セーフティーカーの状況
19.チームのドライバーあるいは他車のドライビング上の違反(シケインカット、コース外走行、タイムペナルティの適用など)
20.DRSの使用が可能か不可能かの連絡
21.DRSシステムのトラブルへの対処
22.次のピットストップでのフロントウイングポジションの変更
23.オイルトランスファー
24.ピットに入るタイミング
25.ピットインあるいはピットアウト時の白線、ポール、重量測定のシグナルについての確認
26.トラックリミットの確認
27.レースコントロールからのメッセージの伝達
28.マシンのダメージに関する情報
29.残り周回数
30.プラクティスセッション中のテストシーケンス情報(エアロマッピングなど)
31.天候に関する情報
決勝日にピットレーンがオープンになった後で、マシンが最初にガレージを出てからレースがスタートするまでの間、ドライバーが搭乗中かつコース上にいるときには ※印の項目のみ伝達できる。