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夫の死後、公正証書遺言を持った愛人が「原則愛人のもの」

2016年03月13日 18:20  週刊女性PRIME

週刊女性PRIME

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昨年の相続税法改正により、納税義務がある人が約2万人も増えたという。「親がまだ元気だから……」「うちは財産がないから」なんて他人事のように考えていると、相続貧乏になるだけ。 そこで年100件以上の相続相談を受ける徳原聖雨弁護士(弁護士法人・響)に、実際にあったケースに役立つアドバイスを教えてもらった。 【相談1】 私には子どもが2人います。つい先日、夫が亡くなり葬式も終えました。ところが、夫がのこしたという公正証書遺言を手に、夫の愛人という女性が現れたのです! 遺言の内容を確認してみると“すべての遺産を愛人である女性に譲り渡す”というものでした。遺産には、私が今、子どもと住んでいる自宅も入っていたため、この女性は“早く家から出ていって!”と言うのです……。 急に出ていけと言われても無理ですし、そもそも愛人に遺産を渡すなんて考えられません! どのように対処すればいいでしょうか? 【アドバイス】 遺言書があると、遺言書の記載どおりの相続がされます。つまり、遺産はすべて愛人の女性のものとなるのが原則となります。 しかも、本件で愛人の女性が持ってきたのは公正証書遺言という公証人役場で作成された、いわゆるプロが作ったものです。その内容は確実なものとみなされてもしかたがない面があります。 しかし、相続人には『遺留分』というものが認められています。遺留分とは、相続人、本件でいうなら夫の配偶者や子どもなどに留保されている相続財産のことです。つまり本件では、遺留分を主張することぐらいしかできないのが現実です。 さらに注意しておくべきことは、遺留分の主張の時期です。遺言の存在が判明して自分の相続する分が遺留分を超えて侵害されているとわかってから1年で、主張ができなくなってしまいます。 のんびりなんてしていられないのです! 1年以内に主張したことを証明するために、配達証明付内容証明郵便などの方法で行うことが考えられますが、弁護士などの専門家に任せるほうが安心かと思われます。 【相談2】 私には娘がいます。夫とは5年前に離婚しました。離婚後、夫は亡くなり、つい先日、夫の父が亡くなりました。ちなみに夫の母は何十年も前に亡くなっています。 この場合って、私の娘に遺産を相続する権利は発生するのでしょうか。夫の父名義の土地や建物の不動産があったのですが、どうやら夫の兄弟が夫の父の死後に勝手に処分してしまったようです。権利があるなら、請求したいです。 【アドバイス】 まず、娘さんは夫の父である祖父の遺産の相続人です。これは夫の分を代わりに相続できるというもので、娘さんは「代襲相続人」という立場になります。 つまり、娘さんは夫が相続するものと同じ分だけの遺産をもらえることが認められているのです。すると、夫の兄弟は娘さんの相続分があるにもかかわらず勝手に遺産を処分したということになります。 そこで、夫の兄弟に対して、売却して得た金額の中から娘さんの持ち分を請求することが可能になります。 イラスト/坂木浩子