1990年代初頭までは20%台だった日本の大学進学率は、2009年に50%を超え、いまや「大学全入時代」とまで言われています。子どもを大学に行かせることが当たり前になり、「進学にお金が掛かりすぎる」という理由で結婚や出産を諦める人もいるほどです。
しかし低レベルの大学は教育研究機関というより、ほとんど学位ビジネスになっているという手厳しい指摘もあります。理系学部など専門性の高いコースを別とすれば、本当に「大卒」の学位は必要なのでしょうか。(文:夢野響子)
「カネや時間をかけなくても、よいコネは作れる」と起業家
2月25日付のEntrepreneur 誌では起業家のプラティック・ドラキヤ氏が、キャリアを築くために「学位は本当に必要か」という疑問を投げかけています。もしもあなたの思い描くキャリアが、学位を絶対的には必要としない場合、みんなが行くからといって、あなたも大学へ行く必要はないのではないかというのが彼の主張です。
もちろん経験不問の求人などでは、学位があると有利です。たとえば新しい劇場のアシスタントディレクターの求人に100人の候補者が応募した場合、学士号を持つ30人がまず上位に食い込むでしょう。そこから先へ進むのは、もっと上の学位をもった数人に絞られるかもしれません。
しかしドラキヤ氏は「それは学位を必要とする理由にはならない」と言います。成功に本当に必要なのは、純粋にキャリアを築くためのもっと創造的な方法、そして誰にも負けない野心だからです。
2014年の米国経済政策研究所のデータによれば、大卒者はそうでない者より時給で98%以上多くを稼いでいるそうです。トータルでいえば、明らかに大卒者の収入は高めです。大学生活に時間とお金を費やしてきているのですから、当然かもしれません。運よく築いた人間関係をコネに、就職にこぎつけられる場合もあるでしょう。
しかし「成功したい」という野心を持った人は、多額の費用を大学教育にかけず、興味の持てない授業に時間を割かなくても、よいコネを自分で作り出すものだということを、このような統計は見落としていると彼は言います。キーワードは「育てる」こと。情熱は人々の心に宿っているもの。要はそれを育成する準備ができているかどうかです。
成功に必要なのは「自分の好きなことを見極めること」
とはいえ18歳の段階で、人生の正確な軌道をつかめる人はいないでしょう。そのために親や学校の勧める無難な道へ慣習通りに進むのですが、「それが唯一の考え方ではない」とドラキヤ氏は言います。一般的な学生にとって、大学生活は自分を見つけ出す時間。しかし大学へ行く行かないにかかわらず、自分探しはこの年齢では誰もができることなのです。
ドラキヤ氏の意見では「成功に必要なのは、自分の好きなことを見極めること」。好きなことはふつう、得意なことでもあります。そしてそれを達成可能な、理にかなった方法で磨けばいいのです。
テニスが大好きでもウィンブルドンで勝つ実力がない場合は、最高のテニスインストラクターを目指すのです。そこには仕事としての需要があり、十分な生活費を得られ、達成可能なゴールといえます。
自分の心に素直に従った時の理想的なキャリアに、学位が本当に必要かどうか。もし不要なら、大学へ行く代わりの4年間でキャリアのヘッドスタートを切れば、成功への手がかりは得られるはずだと彼は結んでいます。
ホリエモンも「そこまで価値のある大学?」と疑い投げるが
日本でも、ホリエモンこと堀江貴文さんが、借金してまで大学に進学することに対して疑問を呈し、「そこまで価値のある大学なのか?」と疑いを投げかけています。
これに対する反論としては「自分には好きなことも得意なこともない」「とりあえず就職するためには大学に行った方が有利」というものです。いずれもドラキヤ氏やホリエモン氏が対象にする「野心のある人」ではなく、それもひとつの生き方なのかもしれません。
そういえば、大学を中退してマイクロソフトを創ったビル・ゲイツも、明確な目標のない限り、大学は卒業しておく方がいいと言っていました。
(参照)Do You Really Need a College Degree These Days? (Entreprenur)
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