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被災者「喪失による悲嘆から抜け出せない人は意外にいる」

2016年03月12日 10:20  週刊女性PRIME

週刊女性PRIME

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東日本大震災から5年の節目を迎える被災地では、風化がとめどなく進む一方、いまだ多くの人が避難生活を強いられているのが現状だ。「3・11その後」を懸命に生き抜く人々の姿を追った。 宮城県石巻市北上町十三浜の運動施設『にっこりサンパーク』内に作られた仮設住宅団地がある。当初は159世帯、約500人が住んでいた。「半分はいなくなっちゃったなあ」と、ある住民が教えてくれた。 2月某日、団地にある集会所で、移動傾聴喫茶『カフェ・デ・モンク』が開かれた。通大寺(栗原市)の金田諦応住職が'11年5月から、がれきの中で始めた活動だ。これまでに石巻市を中心に200回超。にっこりサンパークだけでも20回ほどになる。 “モンク”は、英語でお坊さんを意味するが、日常の愚痴である“文句”をお坊さんが聴く、という掛け言葉にもなっている。この日も住民たちが続々と集会所にやって来た。 金田さんは徐々に被災した人たちの間に生じてきた差を感じている。 「会話の内容が復興に向けて変わってきた人もいるけど、いまだに変わらない人もいる。ちょっとずつ差が出てきています」 ある女性(85)は、仲のよい友人たちが仮設住宅から復興公営住宅に引っ越していったため、「寂しくなった」と話す。 仮設に残る人、復興住宅へ引っ越す人、新たに家を建て直す人……。同じ地域に住んでいるからこそ、差を感じることが目に見えてきた。復興の心理的なスピードに開きが出始めている。 「誰にも悩みが言えなくなってきている人がいる。大切な誰かを亡くした人が、悩みを抱えていたりする。喪失による悲嘆から抜け出せないでいる人は、意外に周りにいるんだよね」 取材・文/渋井哲也(ジャーナリスト)