3月中旬から4月の菜の花が咲く頃に降る長雨を、「菜種梅雨(なたねづゆ)」ということを知っていた? この雨は「催花雨(さいかう)」とも呼ばれ、桜などの春の花が花開くのに一役買うとも考えられているとか。
「この時期には、菜の花をはじめとする旬の野菜を味わうことで、すぐそこまで来ている春を楽しみましょう」と、歳時記に関する著書を出版している柳本あかねさんは提案する。
とはいえ、菜の花を一束買っても、ひとりではなかなか食べきれないもの。そんなときには、半分を食べて、残り半分はグラスに入れて飾るのがおすすめとか。
「食用の菜の花は、つぼみで売られているため、緑が色鮮やかなのが魅力です。花が咲いて落ちるまで、2週間ぐらいは鑑賞できますよ」(同)
菜の花のほかには、甘みいっぱいの春キャベツや、生でも食べやすい新タマネギ、やわらかい新タケノコがこのころに旬を迎える。そこで、それぞれの素材の味を引き出すレシピを教えてもらった。
◆菜の花のからし和え
1 根元を5㎜ほど切り落とした食用の菜の花(半束)を、熱湯に加えて1分ほどゆでる(もしくは電子レンジで1分)
2 水をはったボウルに入れて冷まし、手で絞って水気をとる
3 菜の花を長さ5cmに切り、からし(小さじ1)、醤油(小さじ2)、だし(大さじ1)を混ぜて和える
◆春キャベツの塩昆布あえ
1 春キャベツ(1/8個)をひと口大に手でちぎる
2 1に塩昆布(大さじ1)とゴマ油(小さじ1)を和える
◆新タマネギのカツオ節まぶし しらすのせ
1 新タマネギ(1/2個)を2㎜幅にスライスして、10分ほど水にさらす
2 1の水気をきって、あらかじめボウルに入れておいたカツオ節(一握り)にまぶし、皿に盛る
3 釜揚げしらす(小さじ1)をのせる
4 好みで醤油(小さじ1)をかける
◆焼き新タケノコと木の芽味噌
1 白味噌(大さじ1)と刻んだ木の芽(3枚分)を混ぜて、木の芽味噌を作る
2 タケノコの水煮(100g)をひと口大に切る
3 焼きあみで軽く焼いて、焼き目をつける
4 3に1で作った木の芽味噌を和える
「ほんのり感じる苦みは、春の食材ならではの味です。日本酒や白ワインとの相性も抜群なので、ちょっとしたおもてなしで振る舞うのにもおすすめです」(同)
春の夜、旬の食材を食卓に並べて晩酌するのも粋な過ごし方。週末に彼や女友達とゆっくりと季節の味を満喫して。
柳本あかね
日本茶カフェ「茜や」、お茶とお酒「茜夜」店主。日本茶インストラクター。きき酒師。グラフィックデザイナー。二級建築士。著書は『いちばんおいしい日本茶のいれかた』(朝日新聞出版社)、『神楽坂「茜や」の小さな暮らし』(河出書房新社)、『「茜夜」のシンプルに暮らす、小さなキッチン』(河出書房新社)がある。最新著書に『「茜や」の小さく楽しむ おうち歳時記』(河出書房新社)。