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岩井俊二、会田誠、斎藤工らが園子温監督作『ひそひそ星』に絶賛コメント 岩井「美しく残酷な映画」

2016年03月11日 16:31  リアルサウンド

リアルサウンド

(c)SION PRODUCTION

 園子温最新作『ひそひそ星』の公開に先駆け、岩井俊二をはじめとする各界の著名人からのコメントとポスタービジュアルが到着した。


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 本作は、『地獄でなぜ悪い』『ラブ&ピース』の園子温監督が構想25年を経て完成させたモノクロームのSF作品。人類が絶滅種と認定を受けている世界で、宇宙宅配便の仕事をしている女性型アンドロイド・鈴木洋子が、大きな音を立てると人間が死ぬ可能性があるという「ひそひそ星」に荷物を届けに行くことに。


 主人公のアンドロイド・鈴木洋子“マシンナンバー722”役を、園監督の伴侶である女優・神楽坂恵が務め、福島県の富岡町・南相馬・浪江町で撮影が行われた。


 この度、会田誠(美術家)、岩井俊二(映画監督)、卯城竜太(Chim↑Pom)、栗原類(モデル)、篠原愛(画家)など、本作を鑑賞した各界の著名人たちのコメントが到着した。


【著名人 コメント】


■会田誠(美術家)


美しい、というのは普通には憚られる、福島の無人になった被災地を、馬鹿っぽいくらい大袈裟なSF的設定によるロケ地にした、この捩れを、重く受け止めました。


■岩井俊二(映画監督)


アンドロイドも宇宙船もサイエンスフィクションだが、そこに映っている福島の風景だけはノンフィクションである。五感に染み渡る美しく残酷な映画だ。


■卯城竜太(Chim↑Pom)


初めて観たとき鳥肌が立った。何気ない時間がゆっくりと進むのに、ひと時も目が離せなかった。もしかして全ての日本映画を代表するような作品を目の当たりにしてしまっているのではと興奮したが、今になってその推測は自分の中では確信になっている。本当に凄い。園さんの底なしの表現への誠意と欲望に感動したし、何よりも「SF」であるにも関わらず、些細な生活音から荒れた福島の風景、登場する人々の仕草にいたるまで、そのあまりの「リアル」に驚いたのだ。人間が生活を営むささやかさと、現実が孕んでしまったスペクタクルの恐るべき共存。それはこの世界ではごく当たり前のことだけど、人類はいつもそれを切り離して政治的な物語を歩もうとする。とにかく僕にとって今後この作品は、ポスト3.11、近年の自粛・検閲・監視社会、そして戦後日本の社会と美術を考える上での大きなひとつの指針になるだろう。今でもトラウマのように全編を思い出す。顔が見える人間たちの静けさに対し、機械と影絵だけが笑うことを覚えていた、あのモノトーンの未来を。


■エリイ(Chim↑Pom)


語るものではない。観て、感じるものだ! 一コマ一コマにそれぞれの「感覚」が付随していて、私たちが死んでからもずっと遠くの宇宙空間に共に漂うだろう。私は夫婦という単位を感じなかったが、フィルム全てに含有されていた。この映画の神楽坂恵さんは日本女性全ての象徴・憧れをもたらす。


■栗原類(モデル)


今作の最大のテーマ”福島”についての園さんの思いが伝わりました。物語は宇宙船に乗って様々な星に郵便物を届けると言う設定で全編モノクロと言うかなりSFっぽい部分があるのですが、福島で撮影したシーンになったら急にカラーに変わり、その瞬間に”これは映画ではなく現実だ"と感じさせられます。劇中に出てくる廃墟の中にいる人達は実際の福島の方々なので彼らが言う言葉の説得力はプロの人達の芝居では出せない力があります。深くは語らず、”どう感じる”かを自問自答させる、今までに無い園子温映画です。


■斎藤工(俳優)


ひそひそ声は
耳を傾けなくては聴こえない
ひそひそ星は
心を傾けなくては観えてこない
五感を捧げる事で
他のどの園作品よりも
園子温と言う作家の核に触れた気がした
同じ宇宙を描いた
大作映画もいいが
これも劇場で体感すべき凄まじい作品


■齋藤陽道(写真家)


「おはよう」と声をかけて「さよなら」と別れる。そのあいだで煌めくものは何もおこらない、劇的な日常だった。ぼくらには記憶がある。記憶は宇宙を越える。そのことを教えてくれる。


■篠原愛(画家)


「忘れないで。」「覚えているよ。」福島を撮り続ける監督の思いは時空をこえて、
ひそひそと語り綴られる。


■鈴木敏夫(スタジオジブリ プロデューサー)


クシャミをするのは男ではなくて女。この映画をみながらふと谷川俊太郎のことを思い出した。傑作です。


■谷川俊太郎(詩人)


二十億光年の孤独にアンドロイドもくしゃみをする


■田野邉尚人(映画秘宝)


『ひそひそ星』は科学ですらも永遠ではないという究極のSF映画だ。園子温は詩的創造力でこの映画の原型をイメージした。それから30年近い時間が経ち、文明が寂しく終わるビジョンがリアルになった。大声で世の終わりを叫ぶのではなく、ささやくようにアンドロイドがノーフューチャーの宇宙を旅する。とても静かなパンク。


■永井豪(マンガ家)


人類の終焉に思い出の品を届けるアンドロイド。美しいモノクロ映像が描く、時が止まったような世界。心に染み入る“名作”の誕生!!


■羽田圭介(作家)


10年前、「紀子の食卓」「気球クラブ、その後」を観た時の衝撃が蘇った。あの頃よりもっと自由に作られているというエネルギー感と、そして洗練された技巧。タルコフスキーっぽさは表層的なもので、本作は近年公開された中で最も進化し洗練された園子温作品だ。


■和多利浩(ワタリウム美術館代表)


正反対の要素が混在する映像
未来と懐かしい過去
身近と遥か彼方の星での出来事
そして娯楽とアートの共鳴
驚きの園子温映像でした。
(リアルサウンド編集部)